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第5話 夜襲からの撤退 3

異世界召喚 26日


「あれは…カローイ…」


涙ぐんでいたベレッタが、歓喜の呟きをあげる。


森を飛び出してきた血まみれの20騎程の騎兵は、ルデン辺境伯と、ルデン家重装騎兵隊、カローイと、ダペス家重装騎兵隊だった。

そのすぐ後を、モスコーフ帝国ギュラー砦侵攻司令、クィントス・マクシス伯爵率いる重装騎兵隊300が追撃してきた。


「前も敵、後ろも敵…カローイ、中央突破するぞ!」


ルデン辺境伯が叫ぶ。カローイは、ランスを上げて応え…


「縦列突撃!」


と、叫ぶと

右側にルデン辺境伯と、ルデン家騎士隊…

左側にカローイと、カローイ家騎兵隊が走りながら並び、左手にランスを持ち替え突撃体制をとった。


ダペス家騎士隊は、ランス突撃体制時、防御の薄い左手側に、左手でもランス突撃体制を取れるように、訓練されていた。

しかし、縦列突撃は、相手が混乱している時に特に有効…しかし、この状況では一点突破に賭けるしかない。


城壁から見る、今から始まろうとしている戦は、絶望的な戦だった。


20騎で、前方2千の部隊を突破できるはずがなく…

満身創痍の騎兵が、後方の騎兵から逃れるすべなどない。


城壁上から、イング公爵が、兵が、ベレッタが、博影が…その絶望的な突撃を、何も出来ず見ていた。


ルデン辺境伯、カローイが前に立ちはだかる歩兵部隊に突撃していった。

すると、すっと両側に敵兵が引き…まるで道が出来た。


カローイ達は、訝しがる余裕などない。ただ全力で馳けるだけだ。


敵部隊にの中央まで、きた時…周りから、一斉に縄が投げられ、20騎は、馬から引き倒され、投げ出された。

しかし、20騎は立ち上がり、すぐに縄を切ると、術袋から大楯を出し円形陣を築いた。


「くっ、皆、体に染み付いた動きは忘れないな…」


カローイは、頭で動くより早く体が動き、円形陣を築いた自分に、呆れ気味に苦笑する、

今更、円形陣など築いても、数分命が永らえるだけだ。

だが、落馬してもとっさに体が動き、円形陣を組める…この騎士達は、一流だろう。


すると、円形陣を取り囲むように、敵兵は、剣を槍を構えたまま後ろに下がり出した。

まるで、闘技場のように円形の広場が作り出された。


「くっ、見世物にする気か」


イング公爵は、唇を噛む。


「見世物…?」


博影は、分からず呟いた。


「今から、一騎討ちが始まるの。死ぬ…まで、永遠に…敵は私達に、仲間が一人一人刻まれて死んでいく所をみせ、城門から誘い出そうとしているのよ」


ベレッタは、そう博影に言いながら、円形陣のカローイを見つづける。


涙をあふれさせたまま…


傭騎兵部隊の指揮官が、マクシス伯爵に尋ねた。


「伯爵、いくらでしょうか?」


エゲツない笑いをする…マクシス伯爵は、傭騎兵の指揮官に侮蔑の目を向けながら…


「1人倒せば、金貨5枚だ」


「おっしゃー、野郎ども。1人金貨5枚だ、20人で金貨100枚だ!」


すぐに、大勢の傭兵が立ち上がり、円の中央に向かおうとする。周りから、ヤジが飛ぶ。


…おいおい、上位ランク者からだろう…


上位ランク者とは、ギルドに登録し、その仕事の実績で分けられたランク上位者のことだ。


立ち上がった者同士、お互いを値踏みし、数人を残して引いていく。


ルデン辺境伯、カローイ達は、ここまでと覚悟を決めた。もともと、死兵となっていたからこそ、殿を務め、傷を負いながらもここまで来たのだ。



…死ぬ事に、恐れはない。騎士として、堂々と戦うだけだ…



「では、私から行かせて貰います」


カローイは、ベレッタがいるギュラー砦を見て…軽く手を挙げ進み出た。




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