第3話 夜襲からの撤退 1
異世界召喚 26日
ギュラー砦、正門城壁から見える正面の…街道が続いている森も、その上の空も、白々と明るくなりつつあった。
…もう、半時程で山の稜線から、朝日が昇り始めるだろう…
静寂な空気の中…いつもの朝と異なるのは、そろそろ活発に動き出す、鳥や鳥の声が森の方からは聞こえないことだ。
逆に、ギュラー砦は全員が起きており、夜襲隊の帰りを…朗報を待ちわび、受け入れの準備をしていた。
すると…約1キロ先の森の街道入り口から3騎の騎兵が駆けてくる。暫くすると、その後に数騎づつまとまって駆けてきた。
まるで、間を繋がない、点のように…ポツポツと、駆けてくる騎兵が続く。
正門城壁の上で待っている博影とベレッタは、夜襲の失敗を悟った。
ギュラー砦に近付くにつれ…騎士が馬が、満身創痍である事がわかる。
先頭の3騎が、砦正門に駆け込んで来た。待ち受けるイング公爵に報告する。
「夜襲失敗、敵の待ち伏せを受け部隊は、大混乱に陥りました。夜襲隊撤退中、敵の追撃を受けています。援軍をお願いします」
そういうと、騎兵は馬から落ちる。すぐに、治療所に運ばれていく。
「負傷兵、受け入れ準備。治癒師は、治療所で待機せよ」
イング公爵が、伝令兵に指示を出し、退却してくる騎兵を確認する為、正門城壁へ上がった。
イング公爵の眼前には、森へ続く街道の中を、まばらに騎兵が駆けていた。
全てで、50騎程だろう…敵の姿は見えない。
その、最後尾の騎兵から、離れる事200m…森の街道から、50騎程の密集体型で、駆けてくる隊があった。
そして、その後方100mに、追撃部隊と思われる約200程の騎兵が現れた。
「200くらいか! 蹴散らしてくれるわ」
伝令に、正規騎兵200、傭騎兵100、歩兵500を正門外へ集合させる。城壁の上より剣を抜き、檄を飛ばす。
「全軍突撃! 調子にのった追撃部隊など、一兵も返すな!」
騎兵隊300が、全速で駆け出し…歩兵部隊が、みるみる離されながらも続く。
その時…
右側の森より雄叫びがあがり、約2千のモスコーフ帝国軍の増援部隊が、街道を退却する騎兵隊を襲い掛からんと、飛び出して来た。
「くっ、罠か! しかし、増援は騎兵300、他は歩兵、まだ距離もある。一撃し離脱すれば、味方を引き入れ城門を閉める時はある」
城壁上から旗を振り…
…味方歩兵の帰還と、味方騎兵へ一撃離脱し帰還せよ…
と、指示を出す。又、城壁の兵に、敵がなだれ込んで来た事を想定し、残りの場内の兵全てに正門内側の広場で迎撃態勢を取るように指示する。
正門城壁の上では、博影とベレッタが、遠く森へ続く街道を見つめたままだった。
「…いない…」
まばらに退却してくる騎兵隊の中に…最後の50騎程の騎兵隊の中に…カローイ、ダペス家の騎兵は見当たらなかった。
「カローイ…」
ベレッタは、断崖から落ちるが如く、深い絶望に沈んだ。両手を胸にあて、奇跡を祈った。




