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第2話 夜明け前の襲撃

異世界召喚 25日 夜半


イング公爵の援軍が、ギュラー砦に着いた一時後、軍議が開かれていた。


「なんと、夜襲ですか? 先程着いた援軍騎兵隊は、皆疲れています。夜襲など無謀です」


王都守備隊所属の騎士が、反対の意見を述べた。


「いやいや、相手はこちらの騎兵が少ないと知り気が抜けている。又、もし援軍の騎兵隊が砦に入った事をしっていても、疲れている騎兵隊が、よもや夜襲をしてくるなどと思うまい」


ルデン辺境伯は、自信に溢れた顔で強く提案した。


ルデン辺境伯は、一年前にギュラー砦に赴任した。しかし、砦は守っているものの、小競り合いで兵をいたずらに消耗させ、又、第三次ギュラー戦役では、多大な損失を出し名誉挽回に焦っていた。


「私も、気乗りしないな」


イング公爵も乗り気でない。疲れている兵をいたずらに消耗させたくないと考えている。


「イング公爵、お力添え、なにとぞお願いします。私、自ら出陣し指揮する所存です。必ずや、成功させます。

それに、今夜は月がない…敵に気付かれずに近づけるでしょう」


「うむ………たしかに、夜襲には適した闇。又、ルデン辺境伯自ら、出陣すると言われるなら…わかった、協力しよう」


イング公爵も、ルデン辺境伯の押しに負け、同意した。たしかに、成功する確率は高いだろう。

しかし、相手はモスコーフ帝国…一抹の不安が頭をよぎりながら、続く夜襲の打ち合わせに入った。



物音で、目がさめる。周りをみると、ざこ寝していた王都守備隊の騎士達が身支度をしている。


「博影、目が覚めたか?」


カローイが、術袋から鎧を出し装備していた。


「夜襲をするのか?」


博影も、身支度をしようとする。


「ああ、夜明け前に夜襲をかける。敵も油断しているだろう。成功すれば、敵はアラドへ敗走することになる」


「そうか、決まれば一気にカタがつきそうだな」


博影も騎士の疲労が気になったが、悪い作戦ではないと考えた。


「数は?」


「重装騎兵200、軽装騎兵500…で行く」


なんと、700の騎兵部隊…


今、ギュラー砦の騎士戦力は

ギュラー砦守備隊…100

王都守備隊…500

各貴族…300

ギルド傭騎兵…100

騎士見習い…100

約、1100名だ。


ギルド傭騎兵や騎士見習いを外せば、残り900人中、700の騎士が出陣…かなりの戦力だ。


カローイが、出陣の準備が整った。立ち上がろうとする博影に対し…


「治癒師の仕事は、夜があけてからだ。それも、博影の出番はないかもな…では、行ってくる」


と、カローイが宿舎から出て行った。


簡単に身支度をして、見送りの為カローイの後を追う。


ギュラー砦の正門側には、騎兵が集まりつつあった。


…何か、油の匂いがする…周りのかがり火からか?…


「臭うわよね」


いつのまにか、布で鼻と口を塞いでいるベレッタが横に来ていた。


「慣れれば、なんてことないですよ」


正門守備兵が笑う。どうやら、ランプに使う植物油ではなく、ギュラー砦のかがり火は、油を燃やしているようだ。

近くで、臭い水、燃える水が湧き出ていると聞いた。どうりで、かがり火の燃料代を気にせずに、明々と砦をともせるはずだ、


扉が開きダペス家のカローイ以下、10人の重装騎士隊は、博影とベレッタに手を振り静かに出撃していった。



ルデン辺境伯率いる700の夜襲騎兵隊部隊は、3人隊で斥候を数組出し、慎重に森の中に続く街道を進んで行った。

町と町を結ぶ街道とはいえ、他国に続く街道は、所々まるで獣道のようだった。

三時間程かけて進むと、森と草原の境に来た。200mほど先に、モスコーフ帝国の野営地の明かりが見える。まだ、夜明けには一時ほどあるだろう…


静かに、100mまで近づき、全騎兵が弓矢の準備をする。矢先に火を灯す…


「いくぞ、突撃」


騎兵隊は、雄叫びをあげずに馬を走らせ、50m程に近付くと火矢を天幕に放った。

そして、走りながら横並び三列になった騎兵隊が、野営地に飛び込んでいく。


しかし…


天幕が燃え盛る野営地は、もぬけの殻だった。


「しまった、図られた…」


…ワアァァァ…


歓声があがる。野営地外、両側の森からモスコーフ帝国軍が、燃え盛る、野営地に向け突撃してきた。




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