第3話 異世界召喚 3
レナトス暦 7017年
異世界召喚 3日目
【登場人物】
博影:義理の娘と共に異世界召喚された主人公。理由は不明だが、召喚された際に15歳に若返り、そして、治癒の力を持つ魔法陣を扱えるようになった。
沙耶:義理の父と共に異世界召喚された元気な高校2年生。
体が重い…手足も重く感じる…
うっすらと、まぶたが開く。
何か、夢を見ていた様な気がするが、思い出せない。
歳を取ると、いつもこんなものだ。
…今日は仕事だったっけ…病院に行かないと…
「お父さん、お父さん…お父さん」
沙耶の呼ぶ声が聞こえるが、ちょっと、言葉が聞き辛い。泣いているのだろうか?
ぼゃっとした起き抜けの思考で、うっすらとした状態から、両目を無理やり大きく開ける。
家ではいつも布団で寝ているが、これはベッド……ベッドで寝ているようだ。
右傍に、大泣きの沙耶の顔があった。
「良かった、生きてた、目を覚ました」
泣き笑いの顔ではあるが、いつもの可愛い沙耶の顔だ。
「おはよう、沙耶。今日はお父さん仕事だったっけ? 腹減ったな。何でもいいから朝飯お願いできる?」
ゆっくり、上半身を起こし、左手で沙耶の頭を撫でる。朝から泣いている? 体は大きくなっても子供だな。
「お父さん、そんなに元気ならしっかり目を覚まして! ご飯どころじゃないから!」
沙耶が両手で、私の両肩を掴み強く揺さぶってくる。
泣いていたかと思ったら、今度は怒っている。この年頃は、むずかしい…若干ため息まじりに…
「沙耶、今日も可愛いね。お父さん起きたよ」
「しっかり、起きろー周りを見なさいぃー!」
目の前で叫ばれ、一瞬にして目がさめる。すると、目に見慣れない風景が飛び込んでくる。
…ここは…うちの家ではない…
部屋の壁が石?レンガか? 漆喰の壁で固めているのか、なんだか乱雑な壁だ。
明るい光が差し込んでくる左側の窓は、ガラスはなく木の雨戸?を窓枠上に跳ね上げているだけのようだ。
部屋の中にはベッド横の小さいテーブルに、飲み水が入ってそうな壺と木のコップと果物らしき物が置いてある。
そうだ、光の輪に沈みこみ、異世界のような場所に来たのだった。
「沙耶、あれから、どれくらいたった? ここはどこだ?」
思い出した。あれは夢ではなかったのか…
沙耶は、父の両肩から両手を離しゆっくりと話し出した。
「あれから、2日たったわ。現状報告の前に、お父さん、この鏡みて」
沙耶が取り出した、沙耶の手鏡をのぞくと…
「あぁっ?」
顔が違っている。これは、少し違うが、中学生くらいの時の俺か…
両手を見る、腕が細くなっている。中年太りしていたお腹も、すっきりしている。
「お父さん、若返った感想は?」
悪戯っぽく、沙耶が私の顔を覗き込む。
「いやいや…沙耶から見ても、お父さん、顔かわったのか?」
自分でも変な質問をしていると思うが、動揺は隠せない…
「うん、変わった。若返ったね、私より年下っぽくない? 中学生みたい」
動揺している自分に比べ、落ち着いている沙耶を見ると、苦笑いがこみ上げてきた。