第1話 出発の朝
出発の朝
珍しくチェルに起こされなかった…と、思ったらチェルはもう起きて、前足で毛づくろいをしていた。
隣で眠る沙耶の寝顔が可愛いが、目元には…涙の跡があった。
…沙耶、ごめん…必ず生きて帰る
沙耶の涙の跡を、そっと指で…なぞり消した。
そして、沙耶を起こし身支度を始める。
ダベス邸前で、出発の挨拶をカローイが行った。
見送りの者も含め、市民街と貴族・騎士エリアを結ぶ門前に集合した。
王都への旅路で、いかに体力がないか、馬に乗れた方が良いかわかったので、博影と沙耶は、馬の乗り方をルーナに習っていた。
博影は、剣の使い方も習ったが、まぁ体力をつける為くらいのレベルだった。
整列する前に、馬の手綱をルーナに任せ、沙耶を抱きしめる。
「沙耶、必ず帰ってくる。父さんを信じてまってて」
沙耶の髪を撫でる。沙耶はぐっと我慢しているが、目からは涙が溢れそうになっている。
沙耶は、博影を力いっぱい抱きしめた。
「絶対、絶対帰って来て。帰って来ないと、一生許さないから」
そういうと、沙耶は博影に強くキスした。博影も…しばらく強く抱きしめた。
唇を離し…
「沙耶、行ってくる」
博影は馬に乗り、手綱はルーナに任せた。
「沙耶からは、一時も離れずつきます。安心して下さい。それと、必ず帰ってきて下さい」
ルーナは、胸の奥が苦しくなる。
…出来れば、私が側について博影殿を守りたい…
だが、博影殿が望む、沙耶の護衛を命をかけて行おう。
ティアナも、沙耶に寄り添いながら、博影が怪我をしないように、帰ってくるようにと祈りを捧げた。
出発式が始まる。
ルーナに、手綱を引いてもらいながらカローイの横へ並んだ。
イング公爵が、国王に誓いの言葉を述べ、国王も、イング公爵に騎士達に武運を祈った。
門が開かれ部隊がそれぞれ動き出した。援軍第一陣は、騎兵だけなので、予定では2日でつく。
沙耶にティアナにルーナに手を振り、国王夫妻に頭を下げ門をくぐった。
2つ目、王都の正面の門をくぐった。チェルは、馬が驚かないように、離れた城壁の上から博影を見送った。
そして…
騎兵隊は、馬が疲れて動けなくならないように、スピードを変えながら、都市センデスへ向かった。センデスへは、夕刻についた。
博影は、僅か2週間の乗馬の練習では、部隊のスピードについていけない時もあり、ベレッタや、ダベス騎士隊に手綱を引いてもらったりした。
又、センデスにつく頃には、背中が…足、腰が立たなくなった。
夜、ベレッタの治療を受け早めに休んだ。
翌朝…
ギュラー砦には、目立たないように夜入城する為に、昼過ぎに都市センデスを出発した。
途中から、川沿いに渓谷の間を通って行く。
日が落ち、いつもなら、寝付く時間にギュラー砦の明かりが見えてきた。
ギュラー砦は、渓谷の間にあった。
渓谷の真ん中を、アゼッド川が流れており、まるで、その上に被さるように建てられていた。
中に町はなく、市民がいるわけでもないのに、砦としてはかなり大きいと思う。
どちらが、正門か裏門か…わからない…いや区別のないつくりで、どちらから、攻められても高い防御力がありそうだ。
しかし、砦内に入ると…砦の大きさの割には、兵士が少なく感じた。
…疲れた…
すぐに、ざこ寝の宿舎で横になった。
しかし、カローイ達は今から軍議だという。
…こんな夜中に軍議? まさか、夜襲でもするつもりか…
いやな感じがするが、すぐに眠りについた。




