第12話 出発の決意
異世界召喚 23日目
元老院会議も、昼前に終わり、出席者は、皆それぞれ準備に取り掛かった。
明日の援軍出発の時間には、間に合わないが…地方の辺境伯数人にも、援軍要請をかける為、急使が急ぎ城を出た。
ダペス邸の執務室では、会議が始まっていた。
「そんな、博影は国王様の治療の為に召喚されました。その大役を終えた直後に、次は最前線にと…」
ベレッタが、悔しそうに唇を噛む。
「しかし、最前線に治療所ですか? 我々騎士にとっては、大変ありがたいですが、相手からすれば剣を使えない治癒師は、ただの的ですよ」
ダペス邸に常駐している騎士が、信じられないと首を振る。
沙耶は…今にも泣きそうだ。何か言えば、決まる事が…ただ、早くなるだけ…
「カローイ、了解した。ギュラー砦へ行こう」
仕方がないなと、博影は笑う。
カローイは、ダペス家を、自分達の立場を思いやり…行くと、言ってくれた博影に頭を下げた…ずっと…頭を上げられなかった。
沙耶が、博影に抱きつき声を押し殺した。頭を撫でながら…
「カローイ、頭を上げてくれ。ダペス家には、よくしてもらってるからな、ここで、少しでも義理を返しておこう」
頭を下げたまま…感極まるカローイに、誰が行く事になるのか訪ねた。
カローイは、頭を上げ、少し上向きで口を開く。博影の目を見ると、泣いてしまいそうだった。
「自分とダペス邸から騎士10名、治癒師として博影。この12名だ」
「私も行く」
ベレッタが、すかさず話に割り込んだ。
「いや、博影の力は治癒師10人分はある。俺と博影、2人でもよいくらいだ。
それに、ベレッタ、君は助祭であり、聖術師だ。最前線に行くなんて、イシューレ教会が許さないよ」
カローイが、ベレッタを諭す。
「聖術師の名がなくなっても構わない。私は助祭にも聖術師にも未練はない。
それより、治療所で、ギュラー砦で、道道で、博影の護衛が必要です。
私はもともと、ドゥオナイト(中級騎士)。うってつけでしょう」
ベレッタは、引かない。
「私も行きます」
ルーナと、ティアナも行くという。
「ルーナと、ティアナは残って欲しい。でないと、安心して前線にいけないよ」
沙耶の頭を撫で続けながら、2人にお願いする。でないと、沙耶は一人ぼっちになる。いくら王都、ダペス邸とはいえ…それは、了承できない。
「ベレッタの言う事は、もっともだ。甘えさせてもらう。ベレッタ、博影の護衛を頼む」
カローイは、ベレッタを連れて行きたくはなかった。
だが、確かに自分やダペス騎士隊が戦をしている時は、博影の護衛が出来ない。
ベレッタの強さは理解している。博影が、傷を負ったとしても、治療も出来る。
「チェル、沙耶を頼んだぞ」
足元に寄り添っているチェルに声をかけた。珍しくチェルは、博影の目を見ずに小さく唸り返事をした。
チェルは、心配していた。
…戦えない博影が、戦に行く。何も起こらなければ良いが…




