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第9話 イシュ国王の治療1

異世界召喚 9日目


貴族、騎士の住むこのエリアは、町のエリアと異なり、朝から動いている者はまばらだった。


カローイ達は、イシュ城へ行き、すんなりと衛士に通され城内に入った。

城の中では、女騎士に案内され、四階の王の執務室に入った。


執務室に入ると、奥の長机にテレジア王妃が腰掛けていた。立ち上がり、カローイに近づいて来た。


「王妃様、お久しぶりでございます」


カローイは、片膝をつき、深々と頭を下げた。3人も、カローイに倣う。


「カローイ、頭を上げてください。あなたに来ていただけるなんて…よくぞ、きてくれました」


テレジア王妃は、カローイに近づき、カローイの右手を握ると立たせ、椅子へ座るよう促した。


「異世界から、召喚された治癒師はその者ですか? かなり、若く見えますが…」


カローイが来た事で、王妃は信じ急遽、今日の公務の予定をすべてキャンセルしてまで、時間を作ったのだが、あまりに若い治癒師に、戸惑いの色を目に浮かべていた、


「はい、見た目は若いですが…」


と、カローイが召喚後の経緯を簡単に説明した。


「そうですか、前の世界でも治癒師のような事をされていたのですね」


「はい、王妃様。私は治癒師としては未熟者かもしれません、しかし前世界の知識を使って、少しでも国王様のお役に立てればと、思っています」


博影は、王妃の目を真っ直ぐ見つめた。


「わかりました、国王は日に日に痩せていかれ、司祭、司教…あまつさえ、教皇にも聖術をお願い申し上げ

先日、来ていただいたのですが、状態は一向に…国王の部屋に案内しましょう」


女騎士は廊下にとどめおき、王妃は4人を国王の部屋に案内した。


国王の部屋には、女中が2人付き添っていた。ベッドに横たわる国王は、顔・手足が痩せていた。

顔に活気はなく、王妃が声をかけても薄目をあけ、王妃を確認すると目を閉じた。

王妃は、女中2人を部屋から下がらせ、国王の状態を語り始めた。


「このようなご様子です。3ヶ月前より、吐き気がするとおっしゃって、食欲が落ち、腹部の痛みを言われるようになりました、

最近では、便が黒色で…もう、どうしてよいか…」


王妃は、はらはらと涙をこぼし始めた。国王の代わりに、遜色なく公務を代行していると聞いていた。

かなり気丈な方だと考えていたが、日々、悪くなっていく夫を思う気持ち…いたたまれないものが、あるだろう。


「王妃様、私に治癒術を行わせて下さい。後ろに下がって頂けますか?」


王妃、カローイ達が博影の後方に下がる。


博影は、国王のベッドの傍まで近づき…自分の腹部の奥に感覚を集中し、足元に魔法陣を呼び出した。

その足元に現れた魔法陣をベッドの高さまであげ、次に、国王の頭の上に魔法陣を移動する。

まるで、国王の頭の上に魔法陣が立っているような状態にした。


さらに、魔法陣に感覚を集中させると、魔法陣の輝きが増し、ゆっくり時計回りに回り出した。


ゆっくり回る魔法陣を、国王の頭の方から足元の方まで通すように、ゆっくり移動させる。

博影は、魔法陣の力で国王の体をスキャンしていた。足元までスキャンし、再度腹部の位置まで戻る。


「胃か…」


…つぶやく…


おそらく胃癌ではないかと博影は推測した。

博影の目には、魔法陣の力で国王の体の中が、まるで透けて見えるようなイメージで捉える事が出来た。胃の粘膜に腫瘍があるようだ。


息を整え、その腫瘍と思われる部分を中心に、その周りまで、切り取るイメージをつくる。

切り取った箇所を繋ぎ、繋いだ箇所の細胞を活性化させ、まるで後まで残らない状態にする。

再度魔法陣を、頭部から足元まで動かし、リンパ節への転移や他の臓器への転移を確かめる。

どうやら、転移はないようだが、体の隅々までスキャンし小さな腫瘍などは、焼くイメージをつくる。


最後に、まるで活力を戻すイメージで全身の細胞を活性化させ終わる。


ここまで、約一時費やした。



「終わりました。暫く様子を見ましょう」


王妃に治療が終わったことを告げた。腹部奥にある…博影が感じている力の10%にもみたないくらいの消耗だったが、精神的にはかなり疲れた。


王妃にお許しを得て、椅子に座り休んだ。


王妃は、国王の傍で手を握っている。カローイ、ベレッタは王妃のやや後ろに控え、ティアナは、博影の側に付き添った。


約10分後……国王の両目が開いた。


「テレジア、今日は気分が良い。そこの者が、私の治療をしてくれたのか?」


国王は、頭を動かせ椅子に座る博影を見た。気力が落ち、意識も薄れている中…側に来た者は、確認していたようだ。


「はい、そうです」


王妃は、国王の目が久しぶりにしっかり開かれた事は喜んでいたが、見た目が変わっていなかったので

まだ、喜ぶ事は出来なかった。


椅子から立ち上がった博影が、国王に近づいた。


「フェランツ国王様、博影と申します。ご気分は如何ですか?」


「うむ、何やら体を重くしていたものがなくなり、随分と気分が良い。腹部の痛みも、なくなっている」


国王は、ゆっくり上体を起こしながら博影に答えた。


「あなた、無理をなさらないで」


国王が、みずから体を起こした事に王妃は慌てた。


「いや、大丈夫だ。まだ、力は入りにくいが体の調子が良い。腹が減った、なにか持ってきてくれ」


王妃は、博影の治療が成功したのだと信じた。国王が、食事を欲したのだから…

いそぎ、廊下の女中に食事を命じようと歩き出す王妃へ…


「王妃様、食事は消化しやすい柔らかいもので、お腹に強い刺激を与えたくないので、塩などは控えめにお願いします。

それと、ビールやワインはダメです。国王様、7日間は我慢して下さい」


「わかりました」


王妃は、女中にそのように命じた。


「やれやれ、久しぶりに肉を食べれると思ったのだが」


国王は、弱々しい笑いであったが、笑った。思わず、王妃を含め皆、クスクスと笑ってしまう。


国王、王妃に、国王の腹部の治癒をした事…


暫くは食べ物に気をつけ、出来れば今後、強い味付けの料理はやめる。

酒は嗜む程度。タバコも控える。

そして、精神的負担を軽くする事を考えて下さい。


と、お伝えした。


最後の精神的負担…ストレスについては難しいことはわかっていた。

約、半年前のモスコーフ帝国との戦いで、イムーレ皇太子が、戦死したと聞いている。


イムーレ皇太子は、1人息子で騎士としての力も、公務を行う政治力も秀でていた方だったと、カローイが語っていた。


このような世界でも、親としての家族の思いは変わらないだろうし、国王としても、国を継ぐ後継者を亡くしたという、思い…博影には、話す言葉もなかった。


国王、王妃からお礼を言われ…明日もくる事を約束させられた後、城を出てダペス邸に向かった。




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