第8話 王都到着
レナトス暦 7017年
異世界召喚 8日目
船の旅は快適だった。
チェルは、周りの景色や水面を見ることに飽きて、丸まってねていたが…
2度ほど、宿場町のような所へ寄り、大きな森をぬけると、川の両側には広大な畑が広がり、農夫がそろそろ帰ろうとしている様子が見えた。
遠くに、集落が見える。又、川の先、遠くには川縁からかなり長く続く城壁が見えて来た。
夕日が、沈む前に王都についた。
王都も、バーツ城と同じく川縁に立っている。
バーツ城は、運河を含め城壁の周りをぐるっと川と水路が覆っている水上都市だったが、王都は、裏門側がドウイ川に面しており、城壁外に、船の発着場が作ってあるが、裏門側しか、川に面していない。
王都の正門から見える周りの景色は、裏門側と異なり、はるか遠くに見える森まで果てしなく、畑が続いている。
手続きが終わると、急ぎ裏の城門を通り宿屋に向かう。バーツ城以上に人が多く、かなりの活気を見せていた。
しかし、あちこちに、剣を持つ者達がおり、賑わいの中にも、戦時下であることを伺わせた。
食事、風呂を終わらせ部屋に戻る。カローイと、ベレッタは又、仲介者との打ち合わせに出掛けていった。
博影と沙耶は、慣れない方法での旅で疲れが溜まったのか、早々に眠りにつき、ルーナと、ティアナも仕方がなく眠りについた、
翌朝、いつものように皆、起こされた、
今日は、いよいよ午後から王妃との面会である、まだまだ、時間に余裕があるが、顔を洗い、身支度をし、朝食は部屋に持って来てもらった。
パン、チーズなどを、皆んなで食べていると…
トントン
「はい、どうぞ」
ベレッタの返事に扉が開き、宿屋の女中が頭を覗かせた。
「一階に、お客さんが来てます」
こちらの返事も聞かずに、次の仕事に向かっていく。
「私が行ってくる」
カローイと、ベレッタが一階へ降りて行った。数分後、急いでカローイが戻って来た。
「予定が変わった、今から王妃がお会いになるそうだ。急ごう」
扉から、中に入らずカローイが急がせる。ベレッタは、早くも宿を引き払う手続きをしている。
朝食を途中で、諦め急ぎ宿を後にする。案内人の後に続き、王都中央に向かう。
城にたどり着いたのではないにもかかわらず、城壁がある。城壁の高さは、人の2倍くらいと低いが、塀の外には、しっかりと幅の広い深い堀が掘ってある。
「ここから中は、貴族、上級騎士の暮らす所です、王都は、中心の城以外にも、二重の城壁で囲まれているのよ」
博影と沙耶に、ベレッタがそっと耳打ちする。
「ここから先は、我々は巡礼者ではなくダペス家の者を治療に来た治癒師です」
前を向いたまま、ベレッタが再度小声で呟いた。
門を守る衛士に、案内人とカローラが説明し、難なく通ることができた。
そのまま、ダペス邸に向かう。
王都の中のダペス邸は、公爵邸である。しかし、周りの家と同様、建物は大きくないが
庭には、馬屋や、騎士の宿泊所まで用意してある。
ここを預かっている、ダペス公爵の姉、キリアへの挨拶もそこそこに、2階の部屋へ移動し、カローイ、ベレッタが正装に着替える。
「沙耶、ここで待っていてくれ」
不安そうな目で見つめてくる沙耶の頭を撫でる。
「嫌だけど、わかった。危ないことしないでね、お父さん」
沙耶が、博影にしがみつく。
「あぁ、大丈夫だ。チェル、沙耶を宜しく頼む」
沙耶を抱きしめながら、傍に座るチェルに声をかける。チェルは、博影の足元に頭をなすりつけると、まるで
…気をぬくな…
とでも、語るように強く博影を見上げた。
「ルーナ、沙耶を頼みましたよ」
ベレッタも、ルーナに声をかけ、カローイ、ベレッタ、博影、ティアナは公爵邸を後にし城へ向かった。




