第25話 湾岸都市スタンツァ・ガリア 2 <騎士、テュルク族達との習練>
レナトス暦 7017年
異世界召喚 344日目 342日目、王都出発 343日目、宿場町カララシ宿泊 344日目、スタンツァ・ガリアに夜中到着
城塞都市ロムニア(旧グリナ)・占領230日目
ロムニア国建国宣言より229日目
スタンツァ・ガリア占領222日目
鉄門砦陥落185日目
(鉄意騎士団と出会い185日目)
協定会議・敵討ちより163日目
(ジファ・ウフナン12歳、女。ウフス・ウフナン10歳、女と出会い163日目)
ティムリヤン国を出発し66日目
(サラ、母国を出て66日目)
アルメリア公国を出発して19日目
(アルメリア公国建国から27日目)
スタンツア・ガリアに到着1日目
(沙耶と別れて2日目)
ロムニア王都を馬車で出発し2日目、スタンツァ到着1日目…
午後9時過ぎ…湾岸都市スタンツァ・施政の館・2階食堂
カキアス、ボレアと共に遅めの夕食をとりながら、湾岸都市スタンツア・ガリアやイシュ王国との通商の話などを聞く。
食事後、カキアス、ボレアは少々残っている施政の書類仕事を終わらせるために、3階執務室へ移動し、入れ替わりに、ウルディ、ティラが入ってくる。
ウルディ、ティラも遅めの食事をとる。博影、ティアナ、チェル、テテスは、果物や果実酒を飲みながらウルディ、ティラの話を聞く。
内容としては、テュルク族の中で、魔力の強いと思われる者、魔力操作がうまいと思われる者を集めているので、特にガレー船の魔石操作の訓練をしてほしいという事だった。
博影(黒騎士)が、不在の間訓練しており、数人魔石操作出来るようになってきているが、博影に指導を受けたウルディ達ほどは出来ないらしい。
スタンツァ・ガリア到着2日目より…黒騎士(博影)、チェル、ルルス、ティアナは忙しくなる。
朝、8時頃から12時まで、元ルピア騎士であり、ティーフィが幼少の頃より仕えている、カバイ・ヤ―シュ(22歳、男性、ドゥオナイト・中級騎士)、エレン・ヤ―シュ(22歳、女性、ドゥオナイト・中級騎士)率いる350名のトーレスナイト(下級騎士)の訓練を行う。
目的としては、全員の聖力の底上げである。
施政の館内の広い練兵場に魔法陣を大きく広げ、魔法陣内で全力での打ち込み稽古を行う。
黒騎士、チェル、ルルスは、騎士達の相手をし、ティアナは怪我をした騎士達の治療を行った。
1時間の昼食休憩後…
午後13時より、ウルディ、ティラ率いるテュルク族戦士200名ほどを同じく魔法陣内で全力での打ち込み稽古を行わせ、午後15時からは、引き続き200名の戦士と魔力の強さや魔力操作に秀でていると思われた老若男女問わず50名程のテュルク族の者達も含め、全員に黒騎士が魔石で造った治癒石を使い、魔力操作の訓練を行う。
そして、徐々に夕日で港が赤く染まりだした午後17時頃、ガレー船1番艦に博影不在の間の修練で不十分ながら魔石操作が出来るようになった10名と、魔石操作習得の為に集められた50名のテュルク族の者達を乗せ、ガレー船に付与してある魔石操作の訓練を1時間ほど行う。
午後19時…
ガレー船を降りた黒騎士とルルスは、港の端にある造船所に向かう。
チェルとスコイ(狼♂)、ハティ(狼♀)、リスト(エリュトロンアルクダの子)は、湾岸都市であるスタンツァ・ガリアの見回りに行く。
「ルルス、魔力補充を頼む」
黒騎士は、港の端にある造船所に向かいながら、隣を歩くルルスに魔力の補充を頼んだ。
「主、昼も補給したぞ、まだ働くのか?」
「あぁ、昨夜ウルディから、20m級ガレー船が20隻以上完成しているから、魔石付与をしてほしいと頼まれたからな」
「はぁ~、テテス様や沙耶は効率よく魔力補充が出来るが、いくら魔力が豊富な俺と言えど、魔騎将は効率的な魔力補充など出来ないのだぞ」
ルルスは何度もため息をつきつつ…俺も疲れているのに…と小言を黒騎士に浴びせながら、黒騎士の正面に立つ。
黒騎士は、ルルスを抱き寄せ周りから見えないように黒いローブでルルスの体を覆うと、ルルスは掌に黒い魔法陣を出現させ、黒騎士に魔力を補充する。
ルルスが言うように、テテスや沙耶ならば、放出したすべての魔力を相手に注げるだろう。
しかし、魔力を他の者に注ぐという行為は、非常に難しく、ルルス達魔騎将であっても、放出した魔力の2割~3割程度しか相手に注げない。
無駄が多い魔力補充を、1日2回もさせられたルルスは…
「主…もう歩けない、抱っこして」
黒騎士を見上げながら、両手を伸ばす。
「分かった、その代わりこれ、後7日間は続くからな」
黒騎士は、ルルスを抱き上げ、両足を抱え持ち上げると肩車をする。
「あと7日間もするのか? 俺、魔導船プロセインで、明日アルメリア公国へ出立してもいいか?」
「無理、プロセインに乗船する水夫も決まっていないし、ロムニア国の文官…ダペス家の者達になるかな…アルメリア公国やティムリヤン国に連れて行く文官や商人もまだ決まっていない」
「はぁ~ため息しかでんわ~、こんな働き者の主に仕えるんじゃなかった」
小言を言うルルスだったが、篝火に照らされる桟橋に停泊しているガレー船や、商船、漁船を、日頃と異なる高い位置から見て楽しんでいる。
そして、造船所についた黒騎士は、造船所内のガレー船や、乗船所外に停泊しているガレー船に、1時間ほど時間を掛け、丁寧に魔石を付与していく。
午後21時…スタンツァ、貴族・騎士エリア中心にある施政の館2階…
遅めの夕食を、カキアス、ボレア、ウルディ、ティラ達と共にしながら、その日の報告や今後の事などを話し合う。
そして、午後23時過ぎ…博影、ティアナ、チェル(スコイ、ハティ、リストも…)、ルルスは、ゆっくりと入浴し、3階の寝室にて就寝した。
スタンツァ到着3日目(ロムニア王都を馬車で出発し4日目)…
早朝より、司祭ヘラデス・ポンティが同行する、カキアス率いるダペス家騎士20名と…
司祭クレイ・ポンティ(司祭ヘラデスの妻)が同行する、ボレア率いるダペス家騎士20名…の2つの視察部隊がスタンツアの正門を出発していく。
まずは、日帰りで行ける身近な都市や町、村を視察するとの事だった。
スタンツァ到着4日目(ロムニア王都を馬車で出発し5日目)の夕方…
司祭マリナ、護衛のセドナ・クティ(20歳、女性、ドゥオナイト・中級騎士)と鉄意騎士団・第2部隊隊長イリヤ・ネアト率いる47名が、スタンツァに到着する。
スタンツァ到着5日目(ロムニア王都を馬車で出発し6日目)の早朝…
鉄意騎士団・第2部隊47名も視察部隊として3部隊に分かれ、司祭マリナとスタンツアの助祭達をそれぞれ同伴して、カキアス指示の元、スタンツア・ガリア周辺の都市や町、村を視察する。
5部隊とも日帰りであるので、細かな施政などの確認は出来ないが、大まかな指示と、強い睨みを利かすことは出来るだろう。
……
スタンツァ到着8日目(ロムニア王都を馬車で出発し9日目)…
早朝より、カキアス達、視察5部隊を見送った後、7日目となる最終日のルーティーンをこなす。
午前8時より、カバイ、エレン率いる350名のトーレスナイト(下級騎士)の訓練を行う。
わずか7日間の訓練ではあったが、350名全員の聖力の底上げが順調に進んだ。
カバイ、エレンはウーヌスナイト(上級騎士)、他350名のほとんどは、ドゥオナイト(中級騎士)と遜色ない聖力となる。
騎士としての技術は、引き続き配置先である都市ブザエで、ブレダ達テュルク族の戦士達や、ダペス家騎士達との習練で向上してもらう予定となっている。
明日は、休養日とし明後日、都市ブザエへ向かってもらうが、騎士350名と、その家族1300名の移動である。
荷馬車での移動となるので、街道は整備されているとはいえ、おそらく2週間ほどかかるだろうと思われた。
午後13時より、ウルディ、ティラ率いるテュルク族戦士200名の修練を行い、午後17時に終了とした。
全員魔力と魔力操作向上に伴い、1.2倍から1.5倍の身体強化が出来るようになった。
元々身長2mを超える体格を持つ遊牧民族である。
魔力向上に伴い、黒騎士(博影)より、魔力に見合った魔石を武具に付与されれば、鉄意騎士団騎士には及ばなくとも、1対1でウーヌスナイト(上級騎士)に負けることはないだろう。
又、下級魔物であるが、魔力を使った外皮の硬さは中級魔物に匹敵する黒山羊を使役するテュルク族戦士は、騎馬戦であれば鉄意騎士団騎士に匹敵するのではないかと思われた。
午後19時…
戦士ではない、上は60代、下は15歳のテュルク族50名のガレー船の魔力操作の訓練を終了する。
50名全員、ガレー船に付与してある魔石の操作が出来るようになり、又、元々不十分ながら魔石操作を行っていた10名は、魔石操作だけならウルディ達に匹敵するほど向上した。
ガレー船に付与してある魔石は、ガレー船の造波抵抗の減少と、船体強化を行う。ガレー船の速度、又急激な旋回や敵船への衝角を使った突撃等で大きな効果をもたらす。
現在、ガレー船は…
50m級ガレー船5隻、20m級ガレー船4隻に加え、今回新たに、25隻の20m級ガレー船が竣工し魔石付与された。
50m級ガレー船に、それぞれ20m級ガレー船を4隻加え…
50m級ガレー船1隻と、20m級ガレー船4隻からなる、ガレー船部隊を5部隊編成する。
一番艦:ウルディ
二番艦:クーノィ
三番艦:ウーノィ
四番艦:ブレダ(現在、都市ブザエ防衛の任務に就いている為、魔石操作担当のテュルク族2名のより運用されている)
五番艦:ティラ
5隻の50m級ガレー船と20隻の20m級ガレー船の25隻が、ロムニア国海軍となる。
そして、残り5隻の20m級ガレー船と、魔石を付与した一本の帆がある10m級の川船20隻で、ドウイ川を使った内陸のイシュ王国との通商を行い、残り4隻の20m級ガレー船で、沿岸部を北上してアゼット川を上っての都市ガラン、都市ブザエとの補給や人の行き来を行う予定としている。
注:アゼット川はドウイ川に比べ、川幅等が小さいため20m級ガレー船での行き来がギリギリである。
午後21時…今日も又、施政の館2階食堂で遅めの夕食を取る。
食堂のテーブルには…
博影(黒騎士)、チェル、ルルス、イリヤ(鉄意騎士団騎士)、ウルディ、ティラ、カキアス、ボレアの8人で囲んでいる。
※司祭マリナと聖術師ティアナは、今後のロムニア国での聖イリオス教の方針や聖イリオス領での事などを話し合う為、司祭マリナがスタンツァに到着した翌日より、司祭ヘラディス夫妻の教会で寝泊まりしている。
「カキアス、ボレア、視察はどうだった?」
「思ったより、悪くはなかったですね」
とカキアスが答えるが…
「まぁ、俺達はかなり悪く思っていたからな」
ボレアが笑いながらワインを飲む。
「ん? とうことは、あまり手が掛からないという事?」
「いえ、博影様、思ったより悪くはなかったという程度で、良いという意味ではありません。
大きな不正、横領などが横行しているわけではありませんでしたが、ロムニア国・ダペス家の方針や施政のレベルには到底届いていません。
ですので、以前も文書及び口頭にて強く指示していたのですが、今回は…いずれ抜き打ちで視察に行く、その際、改善されていなければ、刑罰を与え領地を没収する…という旨を伝えました」
「カキアス、以前も伝えていたのだから、もう切り捨てて没収で良かったんじゃないのか?」
「うむ、ボレアのいう通りだな、その方が早い」
ティラは…カキアスはぬるい…と笑いながらボレアに同調し、ウルディも頷いている。
博影は笑いながら…
「まぁ、ティラの言う事もわかるけど、少しは改善されていたのなら、チャンスは与えてほしいかな」
と、博影は、ティラやカキアスへ苦笑いを向ける。
「ところで、ウルディ達テュルク族本隊は、ティミアラを拠点にせずに、このスタンツァ・ガリアを拠点にするつもり?」
博影は、空になったウルディのコップにワインを注ぐ。
ウルディは、少し赤い顔で博影のコップにワインを注ぎ返しながら…
「どこにテュルク族が展開しているのか、方針は?…などは、ティミアラに逐一報告するようにしておりますが、モスコーフ帝国との海の最前線はこのスタンツァ・ガリアですからな。
我ら遊牧民が、いつの間にかガレー船部隊を頂き、テュルク族戦士が海兵をするとは思いませんでしたが、櫂で進むガレー船も、帆で風を受けて進むガレー船もなかなか気持ちの良い物です」
「うん、それは親父に同意するな。博影様、黒山羊で草原を疾走したり、切り立った崖を落下するかの如く降ることに我ら草原の民は心地よさを感じていましたが、船で潮風を受けながら波しぶきを浴び進む心地よさもまた、格別だと最近は感じています」
「くっくっ、聞いているぞ。ウルディ殿もティラも、そしてクーノィ、ウーノイ(2人はウルディの息子、ティラやブレダの異母兄弟)も、最近では、ガレー船の操舵輪まで握っているらしいな?」
カキアスが、意地の悪そうな笑顔を向ける。
「そこは、誉めてほしいところだな。後方の操舵輪を握りながら、ガレー船の舳先に付与してある魔石に触らずとも魔石操作をしているということだからな」
ウルディは、満面の笑みで博影を見る。
「いや、それは冗談ではなく凄い。舳先と操舵輪で40mは離れているはずだけど、どうやって?」
博影の驚きにウルディは、気分良く胸を張りながら…
「先に舳先の魔石に魔力を通し造波抵抗と船体強化をしますが、その際、船体強化にかなり魔力を注ぎます。
すると、ガレー船全体に魔力がいきわたり、船のどの位置にいても…つまり、船上で剣で戦おうが操舵輪を握ろうが、魔石の操作ができます。
ただ、魔石に触りながら操作する事と比べれば、かなり疲れますがな」
「なるほど、聖石や魔石を付与している武具も直接聖石や魔石に触れなくとも、付与してある武具に触れる事で、付与してある力を発揮できる。
ガレー船の魔石付与は、あくまで舳先の魔石に触れて魔力操作するイメージで魔石付与していたけど、武具のようにガレー船に付与するイメージで行えば、効率よく魔石操作できるかもしれないね。
さっそく、明日、魔石付与している船すべてを見直そう」
「主、明日は休養日ではなかったのか?」
ルルスは、不服そうに博影を見上げる。
「みんなは休養日としているけど、元々、みんなの修練が一段落したら、前世紀の遺物であるこの湾岸都市スタンツア・ガリアの地下の魔石を調べたいと思っていたからね。
ルルスは、休む?」
「主が仕事をするというのに、俺が休むわけがないだろう? だが、この1週間本当に忙しかった。
せめて、明日の朝だけは、ゆっくり寝させてくれ」
博影は、ルルスの頭を撫でながら頷く。
「博影様の報告に合った王都ロムニアの地下のコアが、このスタンツァ・ガリアにもあると?」
「あぁ、カキアス、前世紀の遺物といわれている城塞都市や湾岸都市の地下には、必ず大きな魔石…コアがあるという話だ。
何千年という時の中で、少し壊れている事もあるようだから、みてみたいと思ってね」
「視察も今日で終わりでしたから、我々も明日、同行させてください」
博影は、カキアスの提案を了承した。
スタンツァ到着9日目(ロムニア王都を馬車で出発し10日目)…
朝、6時…
ゆっくり寝るつもりだったが、ついついいつも通りに目を覚ます。
傍らに眠るチェルとルルスを起こさないようにそっとベッドから起き出すと、木窓を押し開け、朝の柔らかな光と、少し冷たい空気を部屋に入れる。
熱い紅茶を入れ、ゆっくりと飲んでいると…扉の左右に寝そべっているスコイ(狼♂)、ハティ(狼♀)とハティのお腹のあたりで丸まっているスコイ(エリュトロンアルクダの子)の耳が、少しせわしく動き…
小さなノックの後、扉が開き鉄意騎士団・第2部隊隊長イリヤがそっと入ってきた。
博影は、イリヤへ熱い紅茶を差し出す。
イリヤは、博影の対面の椅子に腰かけ、ゆっくりと熱い紅茶を飲みながら…
「沙耶達は、都市ブザエについて2~3日たったかな?」
「そうだね、ブレダやカルデラ、ニンリルもついているし、沙耶もティーフィもジファもウフスも心配ないよ」
「そうだな…」
イリヤは、木窓の外へ視線を向ける…徐々に朝日が昇りイリヤの顔を照らしていく。
「ふふっ、ジファ、ウフスと少し長く離れる事になったから、寂しくなった?」
イリヤは、再び少し冷えた紅茶に口をつけ…
「ふふ、そうだな。王都ロムニアとスタンツア・ガリアを行き来していたからと言っても、1週間以上離れることはなかったからな」
イリヤは、素直に認めつつ博影に熱い紅茶を望む。博影が、イリヤの空になったコップに熱い紅茶を注いでいると…
「主、今日は、遅くまで寝ていたいと言ったのに…」
両眼をこすりながらルルスが起きてくる。博影の隣に座る。
博影が熱い紅茶を入れると…まだ、開いていない両目のまま少しづつ紅茶を飲みだした。
午前9時…
施政の館1階、大広間内正面にある2階に続く大きな階段の前に…
博影、ルルス、カキアス、ボレアの4人が集まった。
博影は、正面の階段の裏に回ると…後方の壁に竜のレリーフがあった。
そのレリーフに右手をかざし魔法陣を出現させ、魔力を注ぐと…壁が、扉のように開く。
その先には、下へ続く階段が見えた。
「本当に地下へ続く階段があるとは…」
驚くカキアスやボレアを手招きし、博影は地下へ続く階段へ進んだ。
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