第11話 ロムニア王都 8 <ロムニア城4階、寝室にて指輪を送る>
レナトス暦 7017年
異世界召喚 333日目
城塞都市ロムニア(旧グリナ)・占領219日目
ロムニア国建国宣言より218日目
スタンツァ・ガリア占領211日目
鉄門砦陥落174日目
(鉄意騎士団と出会い174日目)
協定会議・敵討ちより152日目
(ジファ・ウフナン12歳、女。ウフス・ウフナン10歳、女と出会い152日目)
ティムリヤン国を出発し55日目
(サラ、母国を出て55日目)
アルメリア公国を出発して8日目
(アルメリア公国建国から16日目)
スタンツア・ガリアを王都へ向け出発して3日目
(沙耶と再会して3日目)
スタンツア・ガリアを王都へ向け出発して3日目の夜…
午前0時、ロムニア城4階・寝室(大部屋ベッド6つあり)
勢いよくドアを開け入ってきた司祭マリナは、ベッドに腰掛ける博影に駆け寄り右手に沙耶、左手にサラが抱き着いているにも関わらず…
正面から博影に抱き着いてきた。
苦笑いしながら後に続く司祭マリナの護衛・女騎士セドナ・クティ(20歳)は、咳払いをする。
「コホン、司祭マリナ。博影様に会えた嬉しさは理解いたしますが、ここは二人っきりの部屋ではありません。
自重されるようお願い致します」
「そうだぞ、マリナ。淑女たるもの人前で男に抱き着くものではない」
扉から同じく護衛として司祭マリナへ同行していたテュルク族女戦士ブレダが入ってきた。そして、司祭マリナの肩に柔らかく手を置く。
「すっ、すいません博影様。4ヶ月ぶりだったので…」
司祭マリナは顔を真っ赤にして、博影を抱きしめていた腕を解き、数歩後ろに下がり恥ずかしそうにブレダの背中へ隠れた。
ブレダは、その様子に満足し頷きながら博影に近づくと…
「博影様…お元気そうで何よりです」
優しい言葉とは裏腹に、力いっぱい博影に抱き着き抱え上げた。
「いたたたたっ、ブレダ強すぎ痛いよ」
「ブレダ! 淑女は抱き着いちゃいけないって言ったくせに!」
「マリナ、俺は淑女ではないから問題ない」
ブレダは、司祭マリナへにっこり微笑む。
しかし、そこへ慌ててサラが入る。
「おい女! 博影が痛がっておるではないか! 離れろ!」
「ん? お前は誰だ?」
一旦、ブレダにベッドに降ろし離れて貰った後、博影は、司祭マリナ、女戦士ブレダに、ティムリヤン国・東の一族の姫、サラ・アナトリーとシャーディ・ルクを紹介する。
「ふむ、遠いところからよくぞこのロムニアの地へ、歓迎するぞ。だが、もう11時過ぎだ、部屋に戻るがいい」
ブレダは、サラへにっこりと微笑みながら、出口を指差す。
すると、ここぞとばかりにシャーディも言葉を被せる。
「サラ様、淑女たるもの殿方の部屋にこのように遅い時間にお邪魔しては、はしたないと考えます」
「うっ、うむ、もう少しだけ博影と話したら部屋に戻る」
「サラ、すぐに話したい良い話があった?」
「うん」
博影が、親しみを込めた口調に変えると、サラも素直に家族団欒で話す時の口調になる。
「ロムニア国、イシュ王国や周りの国では、良い宝石の原料となる原石が少ないとイムーレ王子達より聞いた。
良い原石や天然石が多く取れるティムリヤン国では、宝石や装飾品は国の重要な貿易品だから、こちらの国でも多く買ってくれそうだなって思って!
そう言えば、博影は、グレーテのお店でお土産の装飾品をかなり購入したのではなかった?」
「博影様、明日から又、忙しくなりそうですし、この場でお渡しになっては?」
シャーディは、話題を変えようと博影にグレーテ商会で購入したお土産を渡すように勧めた。
「夜遅いから、明日にでも…と思ったけど、そうだね…」
そういうと博影は、黒い術袋からまるで宝箱の様な宝石箱を取りだすと、その中より小さな小箱を取りだし…
「沙耶、ティムリヤン国のお土産…」
と言いながら、小箱を開け中身を見せる。
「お父さん、これは…本気なの? 私、一応娘なんだよ…」
博影から差し出された沙耶の目の前の小箱の中には、指輪が入っていた。
少し涙目になりつつある沙耶は、ゆっくり指輪を手に取ると…
「イエロー・ダイヤモンド?」
「あぁ、お日様のように明るい沙耶に似合うかなって思ってね。なんか、黄色いダイヤモンドで良い物らしいよ」
沙耶が手に持つ指輪を、シャーディは少し近寄って見せてもらう。
「カナリ―・イエローですね。イエロー・ダイヤモンドの中でも、かなり良い物ですよ。石言葉は、神々しさ。
どんな世界、どのような場所に行っても、沙耶の神々しさは損なわれない。
自信を持って、豊かな人生を私と歩んでほしい…って、とこでしょうか?」
シャーディが貰ったわけではないのだが、嬉しそうに説明する。
沙耶は、少し涙を溢れさせながら聞き、博影に抱き着くと…
「お父さん、大好き、一緒に歩いていく! 一生…」
…と、沙耶が重要な言葉を言いかけるが…、博影は、宝石箱よりもう一つ小さな小箱を取りだすと…
「で、これは、ブレダに…」
「えっ、私に?」 「えっ?」
ブレダは、驚きおそるおそる博影に近寄る。
沙耶は博影に抱き着いたまま、博影が手に持つ小さな小箱を見る。
ブレダは、小箱の中の指輪をゆっくりと取りだした。
「…緑色の指輪?」
「遊牧民族であるテュルク族のブレダには、深い草原の様な緑が似合うかと思って」
「エメラルドですね」
シャーディは、ブレダが持つ指輪を見せてもらう。
「エメラルドは、恋愛に関する願いを叶えてくれる「愛の石」とも呼ばれています。
石言葉は、幸運や幸せ、愛の成就ですね。お守りの意味もありますから、たとえ遠く離れることになっても、あなたの幸せを祈ります…とか、あなたを幸せにします…って、とこでしょうか?」
「博影様…」
ブレダが、思わず泣きだす。
「…まぁ、浮気防止のお守りとも言われますが、博影様に対しては、効果が薄そうですね…」
シャーディは、小さな声でつぶやいた。
「で、これはマリナに…」
「えっ? 私にも!」
「もちろん、お土産だからね」
「ん?」 「ん?」
沙耶、ブレダは、指輪をお土産と言う博影の言葉に敏感に反応するが、マリナは、感極まってそれどころではない。
「聖イリオスの青い神官服を着るマリナには、青いサファイアが似合うかなと」
マリナは、サファイアの指輪を手に取ると…
「博影様、この指輪。博影様のように大切にします」
「これは、きれいなサファイアですね」
シャーディは、司祭マリナが持つ指輪を見せてもらう。
「石言葉は、誠実や慈愛。聖職者にはふさわしい宝石ですね。そして、硬い宝石であるサファイアは、堅固な愛の証…つまり、恋人との絆を深めてくれる宝石とも言われています」
「シャーディ、意外……騎士のあなたが宝石に詳しいなんて」
サラは、シャーディを驚きの目で見る。
「それは、サラ様。私も、いつ男性から宝石を贈られてもいい様に、勉強していますから!」
「今まで、役に立ったことは?」
「まだありませんが、それがなにか?」
シャーディは、ジロッとサラを睨む。
「いや…その…このロムニア国で、シャーディのその知識が頼りになりそうだなぁ~、なんて思って!」
「で、セドナには…」
「えっ? 私にも…わっ、私は、剣に生きると決めていて…結婚など…」
セドナは、耳まで真っ赤になり、博影を見れなくなる。
「セドナの為に買って来たんだから受け取ってほしいな。
どうぞ、アクアマリンのペンダント。宝石商のグレーテから、女性騎士のお土産はこれがいいと薦められて…」
そう言いながら、博影はセドナに近づき、アクアマリンのペンダントを首にかける。
「セドナが、以前、俺にしてくれたキス(第9章・第3話)のお礼も含めてね」
博影は、いたずらっぽく笑いながら、セドナの耳元でつぶやいた。
さらにセドナは、真っ赤になる。
「美しく、優しい水色…よいアクアマリンですね。石言葉は、勇敢、幸せ。騎士に相応しいと思います。
他には、出産のときに送るといい…とも言われます」
「しゅっ、しゅっ、出産!」
常日頃…男に興味はない、一生結婚しない…と言っているセドナ・クティ、女騎士、20歳。
目の前に立つ博影から逃げるように壁際まで後ずさり、両手で真っ赤になった顔を覆った。
博影は、宝箱の様な宝石箱の蓋を閉める。
「えっ?」
サラが小さく声をあげる。
「ん? サラ?」
博影がサラを見ると…サラが博影におずおずと近づき、小さな声で…
「博影、私には?」
「ごめん、サラと出会う前にグレーテ商会で購入した物なんだ」
「そうか…」
サラは、残念そうにシャーディの元へ下がろうとする。シャーディは慌てて博影に頼みごとをする。
「博影様、その…明日、姫様の買い物に付き合ってほしい!」
「あぁ、いいけど?」
「お父さん、買い物に付き合うのは午後からにして、午前中はティーフィ達の治癒術の訓練に協力してもらいます」
「えぇ~ずるい、私も博影様と買い物に行きたい!」
「マリナ、帰ってきたそうそう買い物に行く時間あるの? 留守にしている間に、教会の仕事溜まってるよ」
司祭マリナは、沙耶からたしなめられる。
「じゃぁ、私が買い物に…」
と、ブレダが博影にお願いしようとするが…
「はい、はい、は~い。夜遅いですから、というか午前2時ですから、いい加減に皆さん解散です。お部屋にお戻りください!
これから、私はお父さんと重要な家族会議をしますから!」
私は残る…と駄々をこねるサラに対し、シャーディは…
「東の一族の姫なのですから、絶対に寝室は別です! 言うことを聞いていただかないと、ティムリヤン国のご両親に手紙で知らせ、帰国命令を出してもらいますよ!」
と、サラに告げる。
「ベッドいっぱいあるからいいじゃない!…鬼! 悪魔!」
と、シャーディに最後の抵抗を試みながらサラは、シャーディと自分の寝室へ帰る。
司祭マリナは、セドナから…
「入浴もしていないのに、博影様の寝室で休むつもりですか!」
と、強引に連れ出され、ブレダも遅い時間であるが…入浴してきます…と、部屋を出る。
部屋が静かになったところで…
「疲れたね、沙耶、そろそろ寝ようか?」
と、博影は笑顔を沙耶に向けるが…
「お父さん、ベッドの上に正座! 家族会議をします」
博影は、大人しくベッドの上で正座となった。
………
博影と沙耶…2人は、ベッドの上で正座し向かい合った。
その2人の傍らでは、チェルとルルスが耳を動かしながらも、小さな寝息を立てている。
「で、お父さん、私が貰ったこの指輪は、婚約指輪って事でいいのよね!」
「いや、婚約指輪と言うより、沙耶がつけていてくれたら、男除けになるかな~なんて思って…」
「男除け……ふ~ん、私に男が寄ってくるのは嫌なわけね」
沙耶は嬉しそうに少し口元を緩めながら、コホンと一つ咳払いをすると…
「では、ブレダと司祭マリナに送った指輪も、男除け?」
「いや、まぁ、一応、2人は俺の事を好きだと言ってくれているし、特にブレダはお父さんのウルディが、俺の嫁に…って薦めてくるから、お土産を兼ねた婚約指輪のつもり…」
「へぇ~~、指輪を送ったら、もうウルディの事をお父さん呼ばわりするんだ~」
「いや、それは意地悪な揚げ足取りだろ」
博影は、沙耶に抗議する。
沙耶は、取り合わず次の議題に進む。
「で、シスとルーナにも指輪を渡したんだよね。それは?」
「シスとルーナは、特に俺に愛情表現してくれるから、婚約指輪のつもりかな?」
「送った男が、なんで疑問形で答えるのよ!」
沙耶は、ジロッと博影を睨みながら…
「お父さん、まさかと思うけど、ティムリヤン国のお姫さまにも手を出してるんじゃないよね?」
「手を出してるんじゃない?…って、沙耶、いつから俺の事そんな軽い男だと思っているの?」
「こちらの世界に来てからです、お父さんの自業自得です。で、答えて!」
「相手は一人娘のお姫様だよ。もちろんお姫様でなくても、そう言う仲じゃないよ」
「本当に?」
「本当に!」
「キスは?」
「したことありません!」
「ふ~ん…」
沙耶が疑わしい目を向ける。
「男女の仲ではないとしても、やけにお姫様と距離が近いんだよね。まぁ、いいけど!
で、お父さん明日の予定です。
朝9時には、貴族・騎士エリアの聖イリオス大聖堂でティーフィ達の治癒術の指導の手伝いをします。
午後は、お姫様達と買い物に行きます」
「ん? 沙耶もついて来るの?」
「私がついて行っちゃ悪いの?」
沙耶が、博影の顔に触れそうなほど顔を近づける。博影は、沙耶に軽くお休みのキスをする。
「ふん、そんなんじゃ、誤魔化されないんだからね!」
その後、嬉しそうな沙耶の小言を聞きながら眠りについた。
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