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第18話 闘技祭後 サラの誘拐 3

異世界召喚 296日目


城塞都市ロムニア(旧グリナ)・占領182日目

ロムニア国建国宣言より181日目

スタンツァ・ガリア占領174日目

鉄門砦陥落137日目

協定会議・敵討ちより115日目


スタンツア・ガリアを出発し、98日目


ティムリヤン国を出発し18日目


港町スフーレを出発し…9日目



辺りを異臭が満たしていく。


大きな鉄の箱から這い出てきた3体の奇妙な生き物は、ゆっくりとあたりを見回してから正面の黒騎士とチェルをじっくりと見る。

その歪んだ大きな口から、涎がボタボタと落ちていく。


黒騎士は、両腕の中でガタガタと震えているサラへ少し微笑み、耳元へ口を寄せると…もう大丈夫だから…と呟いた。


そして、その奇妙な魔物の様子を、鉄の大きな箱の上にいる男たちは、身をすくめ息を殺し見ていた。


…やばい、こいつはやばいぞ…


その奇妙な魔物は…3mほどの大きさではあるが、人間の様な手足がある。

そして、頭は体に比してさらに大きい。

1体は…まるで猿のような体毛で覆われ、あらぬ方向へ曲がっているが両腕が他の2頭に比べはるかに太い。

1体は…まるでトラのような頭と牙を持っている。

そして…もう1体の魔物は、まるで蛇の様な鱗を持ち、その細長い牙の先からは、赤い液体が地面に滴り落ちていた。


大きな箱の屋根の上の男たちは、お互い目を合わせ、わずかに頷くと…数人の男たちが懐より拳ほどの布袋を取り出す。

そして、ゆっくり立ち上がると…黒騎士達へ目掛けその布袋を投げつけた。


しかし、チェルが素早く飛び上がり、空中でその布袋を黒い大剣で叩き切る。布は破れ大量の血や臓物が飛び散った。

それを確認したチェルは、最後の一つを左手でつかみ、男達へ投げ返した。

その一つは、鉄の檻の屋根へ叩きつけられ血と臓物が飛び散る。


しかし、まだ男たちは身を伏せたまま動かない。


…動けばやられる、魔物とやつらが戦い始めた時が、逃げる時だ…


15人は、屋根へ伏せ息をひそめ続けた。しかし、戦いが始まる様子がない。


…まだか…まだか…



ポタ…ポタッ…


男の頭に水滴が落ちてきた。


…ん? 雨など降りそうになかったが…


一人の男が、そろりそろりと顔を上げていくと…目の前に真っ赤な大きな目があった。

そして、その大きな口からは涎が垂れている。


ひっ…男は声も出せず、腰が抜けうまく後ずさりも出来ない。


そのトラの様な頭と牙を持つ魔物の口がゆっくりと開いていく。口の中は、大きな牙が不揃いに生えている。


「あ……あっ……ああぁ…」


男は、かぷっとその大きな口に挟まれ、持ち上げられた。

動けない男は、牙の隙間から見える眼下の男達へ助けを求めるように右手を伸ばすが…


グジュッッ…


男の体は、その牙で血を溢れさせながら潰される。

魔物は、口の中一杯にいきわたる新鮮な血に満足しているかのように、その大きな目を細める。


「あぁっ」 「うわぁぁぁ」


一瞬の間の後…男たちは悲鳴を上げながら、鉄の箱の屋根から8m下の地面に次々と飛び降りる。

数人の者は着地に失敗し、足を痛め苦痛に転げまわる。そして、次々に魔物に喰われていく。

足を痛めずに着地出来た者達は、魔物に背を向け、黒騎士達と逆の方へ我先にと駆けだした。

しかし、手足があらぬ方向へ曲がっている魔物たちは、そう思えぬほど俊敏な動きで男達を捕え、引き裂き、丸呑みしていく。



「チェル、今のうちに逃げるぞ。200m程後方へ走れば、うまくいけば乗ってきた馬がつかまるかもしれない…」


黒騎士は、サラを守りながらでは戦えないと判断し、抱きかかえたまま少しづつ後ずさる。


「ムリダ…オイツカレル」


そう言うとチェルは、少し後ずさった黒騎士へわずかに振り返り…


「ワレガトメル…サキニイケ…」


そう言いながら、チェルはまるで邪魔だとでもいうように左手で、シッシッと黒騎士を追い立てた。


「チェル、魔力が尽きかけている状態で、一人では無理だ」


「レイセイニナレ…コノモリサエヌケレバ…ヤツラハオッテコナイハズ…ソレクライモタセラレル…」


チェルは、黒騎士から視線を外し数歩前に進み、黒い大剣を構えた。眼前の大きな鉄の箱の向こうでは、絶叫や助けを乞う叫び声が響き渡っている。

どうやら、奇妙な魔物たちは、人間を狩ることを楽しんでいるようだ。


チェルは、絶叫が響き渡る方向を見つめ、いつでも駆けだせるように剣を右斜め下へ構えた。

左横へ、サラを抱きかかえたまま黒騎士が立つ。


「ナニヲカンガエテイル…フタリイキノコルカ…サンニントモシヌカ…カンタンナモンダイダ…ソレニ」


チェルは、大きく息を吐き…


「カンタンニ…シヌツモリハナイゾ…」


「チェルに死なれちゃ困るな。それに、3人とも生き残れるさ」


そう言うと黒騎士は、20m先の大きな鉄の箱へ向かう。その50人程入れそうな鉄の箱の中は、異様な匂いが充満していたが、中の壁は魔物が暴れた様子や、引っ搔いた傷さえも見当たらなかった。


「扉は飛ばされたが、あれほどの力を持つ魔物が、この鉄の箱の中ではおとなしくしていた…この箱には攻撃できないと考えると…」


黒騎士は、箱の中央部まで進みサラを降ろした。


「サラ、ここで待っていてくれ」


サラは、嫌々というように大きく頭を振った。まだショックで、うまく声が出ないようだ。


「サラ、大丈夫、絶対にサラを守る」


そう言うと黒騎士は、サラを強く抱きしめ頭を撫でると…箱の入口へ立った。


「コノハコガ…コウゲキサレナイ…ゼンテイダナ」


「あぁ、そうだな。だが、乗ってきた馬を見つけるより、はるかに確率は高い」


黒騎士は、そう言うとチェルの頭を撫でた。


バシッ


チェルに素早く払われる。


「ソレハ…カエッテカラニシロ…」


少し照れているように見えたが、間違いだろう。黒騎士はそう考えながらチェルに大きな黒い盾を出させる。

そして、入り口の左端を指差しチェルに黒い盾を突き刺させた。

黒騎士は、入り口左側に立つ。黒騎士の左側は黒い盾が守るだろう。そして、黒騎士の右側にチェルが立つ。

いつもなら、剣技が拙い黒騎士の左側を守るようにチェルが立つが…魔物に致命傷を与えるためには、チェルを右側へ立たせチェルの黒い剣を活かさなければ、難しい…黒騎士はそう判断した。



ザザッ…



一瞬強い風が吹き、木の葉が揺れた。

そして、いつの間にか人の悲鳴も絶叫も聞こえなくなっていた。


「クルゾ…」


チェルと黒騎士は、左右へ注意を配り、黒騎士はチェルと自らと黒い大盾を覆う程度の間包囲陣を出現させる。

そして、いつ魔物が左右からと飛び込んできても対応できるように、黒い剣を更に握りしめた。



あいさつ)


お立ち寄り頂き、本当にありがとうございます。

&ちょっと話の展開上と話の書きやすさで、話が短くなっていますm(_ _)m。


よろしくお願いしますm(_ _)m


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