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異世界召喚戦記 ~チートな治癒魔法陣で異世界を生きてゆく~  作者: クー
第12章 ティムリヤン国へ 東の一族とモスコーフ帝国・南東方面軍
201/301

第9話 追撃戦 3


異世界召喚 246日目


城塞都市ロムニア(旧グリナ)・占領132日目

ロムニア国建国宣言より131日目

スタンツァ・ガリア占領124日目

鉄門砦陥落87日目

協定会議・敵討ちより65日目


ティムリヤン国 14日目

湾岸都市ムナク陥落後 6日目





挿絵(By みてみん)




城塞都市アシガドから、湾岸都市バルカナへの援軍や補給を遮っていたジャマ・カリエフ率いる帝国部隊(帝国騎士2000・市民兵4000)が、帝国領・都市クラン撤退の為、街道を北上してくるとの報告を聞いた翌朝…

黒騎士達は、スマルトが停泊する海岸の野営地へ移動した。



そして、昼頃…ガレー船が一隻、入り江に入ってきた。

ガレー船から、鉄意騎士団騎士10名程が下船し、黒騎士の天幕へ急ぎ入ってくる。



「ムルガ子爵は、湾岸都市ムナクを出陣した。明日、午後、森の入口に差し掛かる帝国軍へ奇襲をかける。

そして、帝国軍が、ムルガ伯爵の部隊へ応戦し始めた時を見計らって後方から突撃し、挟み撃ちにしてほしい…という事だな」


「そうだ。黒騎士、ホラサン、シャーディへ伝えてくれとの事だった」


「帝国軍は、重装騎兵500からなる騎兵2000…そううまくいくのか? ムルガ伯爵率いる騎兵3000も、先日の追撃戦でかなり疲労しているだろう?」


「黒騎士殿。黒騎士殿は海より来られたので、森の街道入り口の地形はご存じでないと思います。

あの付近の街道は、湾岸都市ムナク方面から見ると、少々丘となっており、森の入口に掛けて下り坂になっております。

ムルガ伯爵は、帝国軍が丘を登り、下り坂を降りて森の入り口に差し掛かる際に、丘へ登り一気に下り帝国軍へ奇襲をかけるつもりでしょう」


「なるほど、それならば、ムルガ伯爵率いる騎兵の勢いは増し又、帝国軍が対応する際は、上り坂になるので対応しづらいと…」


「はい、その通りです。たしかに、我らより帝国騎兵の技量が上回りますが、下りの勢いのついた騎兵の一撃…簡単に凌げるものではないかと…」


「理解した。ただ、帝国軍は森を通る街道に斥候を多く出すだろう。草原と異なり、森の中の街道は狭い。帝国軍に気づかれずに、街道から近づくことは難しい。

帆船スマルトで移動して、森の入り口の側面から強襲出来れば…と思うのだが…

近くの海岸で人馬を降ろせそうなところはないか?」


「湾岸都市ムナクより続く海岸は、すべて切り立った崖となっており、唯一この入り江が適しているのみです。

ただ、森と草原の切れ目付近の崖の高さはかなり低くなっており、帆船スマルトの高さほどの海岸もあります。そこであれば、接舷し人馬を降ろすことも可能ですが…」


「何か問題があるのか?」


「はい、この海岸沿いは波が荒いため、大型帆船といえど人馬を降ろすほど近づけば、崖に叩きつけられ大きく損壊するかと思います」


「そこは、なんとかしよう。帝国軍の斥候に見つからないように森の中を進めば間に合わなくなる。

海からならみつからず、時間も短縮できる。それに、人馬を休ませることも出来る」



「黒騎士、帝国軍に見つからずに近づくことが出来又、我らも休める。策としては良い。だが、桟橋もないこの入り江に停泊している大型帆船に、どうやって騎馬を乗せるのだ?

1頭1頭甲板へ釣り上げていては、とても間に合わないぞ」


ドレアは、ふと湧いた疑問を口にした。


そう、港で桟橋があるところ…それも、輸送船であるなら、荷や牛馬を乗せやすいように側方の船体は低く造られているが…

大型帆船スマルトは、輸送船ではない。通常の桟橋からでも、牛馬を乗せる事は難しいだろう。


「見れば、理解できる。ドレア、ホラサン、シャーディ、配下の騎兵達をすべて砂浜へ集合させてくれ」


そう言うと黒騎士は、システィナを連れスマルトへ向かった。



………



帆船スマルトの操舵室へ入った黒騎士は、操舵輪を握ると足元へ魔法陣を出現させ魔力をスマルトへ注ぐ。

すると、スマルトの船体からは、さざ波のように小さな波が広がり船体が徐々に動いていく。

砂浜へ船尾を向けていたスマルトは、砂浜へ対し真横へ向き…船体中央側面の下部付近の一部が…まるで跳ね橋のように海面へ降りた。


「たしかに、騎馬が乗れそうだ。だが、あの船は本当に木造船か? あのような造りをしては、船体強度が弱まりとても船体が持たぬと思うが…」


女騎士、シャーディ・ルクは、騎馬を波打ち際へ進めながら傍らのドレアへ顔を向けた。


「我らも、あの船がどのようなものなのか、皆目見当もつかん。ただ、湾岸都市スタンツアの港に、はるか昔から停泊していた前世界の遺物…と言う事しか知らぬ。

何百年たっても、全く朽ちず又、貴公もスマルトへ乗船して理解したと思うが、あの速度で進み、急旋回し軋みもせぬのだ、黒騎士が魔力を注いでいるとはいえ、木造船ではないだろう」


「木でなければ、何で出来ていると? まさか、鉄やミスリルだとでも言うのか?」


「鉄やミスリル…いや、俺が今まで見た物の中で最も近いのは…魔石だな」


「魔石?」


「船体のすべてが魔石で出来ているとは思えぬが、かなり魔石が使用されているのではないかな?

半魔半人の我らは、船体のあちこちで魔力を感じる事がある又、スマルトの中で寝起きをするととても調子が良いのだ」


「団長、無駄話はいい。後ろがつかえている、早く進んでくれ」


砂浜で、騎兵に指示を出しているイオンがドレアへ声をかける。若干トゲのある口調で…


「くっくっ、イオン、野営地の留守を命じられたからと言って、そう怒るな。黒騎士からは、留守役だけでなく、他の指示もあったのだろう?」


ゲオルは、イオンをニヤニヤと見る。イオンは、自らが率いる鉄意騎士団・十字隊50名と共に、この野営地に残るように命じられていた。


「ゲオル副団長、俺は強い奴と戦いたいのだ。敵には、ジャマ・クルイーク、ガリエフ・クルイークという、ティムリヤン国の二つ牙と呼ばれる重装騎兵がいるというではないか?

なのに、留守役など…」


「イオン殿、申し訳ないが奴らは裏切者だ。ティムリヤン国の騎士ではないし、奴らの首は我らが獲る!」


女騎士:シャーディ・ルクはイオンをじろりとにらむ。周りのティムリヤン国騎士達もイオンを睨む。裏切者をティムリヤン国騎士…と言われたことが気に障ったようだ。

以前のイオンであれば、剣を抜き嘲るところであったが…



…チッ…



舌打ちし後方へ引くと、他の騎兵へ指示を出していく。


…ほう? イオンも部隊長として少しは成長しているようだな…


ドレアは、顔をほころばせながら海へ騎馬を進め、帆船スマルトへ向かった。



………



300の騎兵を乗せたスマルトは、切り立った海岸線沿いを南下していく。そして、森の切れ目付近に近づき、ホラサンの指示で海岸へ寄せていく。



「あれだな、たしかに海岸がかなり低くなっているな。スマルトのデッキと同じくらいだ」


「はい、近づき歩み板を渡し、上陸できる高さです。船が動かなければ…の話ですが…」


かなり波が荒い。この荒波の中で、切り立った崖に船を寄せる事は自殺行為だろう。


「シス、操舵輪を頼む。船首に行ってくる」


黒騎士は、システィナに操舵輪を任せると操舵室の扉を開け、船首へ向かう。後にルーナ、テテス、ホラサン、シャーディが続いた。


「ドレア、チェルは見に行かないのか?」


システィナは、海岸との距離を100m程度に保ち、ゆっくりとスマルトを進めながら壁にもたれる2人に聞く。


「あぁ、黒騎士がしようとしている事は、想像がつくからな」


ドレアは、剣の手入れをしながら答える。傍らのチェルは、その問いに興味なさそうにスコイのブラッシングをしている。



黒騎士は、船首付近に立ち、左舷100m先の切り立った海岸を見る。しばらくすると、その岸壁の高さが、スマルト程になる箇所が現れた。

アーチェリーを取り出し、魔法陣を眼前に展開し…徐々に回転させていく。

魔法陣の中心に波しぶきが吸い込まれていく。

黒騎士は、黒い矢じりの矢をつがえ…その岸壁へ次々と矢を放った。

矢は、魔法陣の中心へ吸い込まれ…わずかに黒い霧を纏いながら、岸壁を深く貫く。


まるで、脆い土の壁を貫くがごとく、深々と突き刺さり…周りを大きくえぐり…深い亀裂を周囲に刻んでいく。

システィナに、3度ほど旋回させ、同じ個所へ矢を放つ。


およそ、幅20m、奥行き50mほどが大きくえぐられた。

黒騎士は、操舵室へ戻るとシスティナと代わり、操舵輪を握る。右へ大きく転舵し回り込む、その大きな亀裂へ船首を向ける。



「全員、対ショック体勢を取れ」


黒騎士が伝声管で叫ぶと、乗船している騎士達は近くの柱や手すりにつかまる。


そして、足元に出現させている魔法陣の光をさらに強め、帆船スマルトへ魔力を注ぐと、スマルトの帆は大きく風を受け膨らんだ。

船足が、急速に速まる。若干の恐怖を覚え傍らのホラサンは黒騎士を見る。


「黒騎士殿、何もなさるおつもりですか?」


「ホラサン、何かにつかまっていてほしい」


黒騎士は、ホラサンの問いに応えず指示すると…まっすぐスマルトを岸壁の削った裂け目へ突入させた。



ガガガッッ



船首部分の船底が海中の岩をこすり嫌な音を立てる、大きな衝撃が伝わる。

だが、その衝撃は岩にぶつかり止まるような衝撃ではなく、スマルトの船首が岩を粉々に砕いていくような、衝撃であった。


帆をたたみ、船首と船尾の碇を降ろす。


「黒騎士殿、無茶をされるお方だ」


手すりにつかまり、思わず顔を伏せていたホラサンは、ゆっくり顔を上げながら黒騎士に向け苦笑いをする。


「黒騎士といれば、なかなか刺激的だろう」


ホラサンの肩を叩きながら、ドレアは自慢げに笑った。


「あまりに刺激的過ぎて、寿命が削られますな」


ホラサンは、引きつった笑顔を返しながら…では、上陸の準備にかかります…と、黒騎士へ一礼し、操舵室後方の階段から、下へ降りて行った。



2時間後…



スマルトの船首部分の両側に天幕が立てられ、船首を取り囲むように野営地が作られた。

夕食後…黒騎士達は、スマルトの操舵室へ戻った。

操舵室後方の寝台を引き出し、又床へ寝床をつくる。


スマルトの操舵室にいる事で、黒騎士、テテスは船を中心とし直径1kmの範囲の空、陸地、海面、海中の状況を把握できる(テテスは1km以上の範囲を把握できるが…)。

もし、野営地に敵の斥候が近づいたら、すぐに対処できるだろう。




挿絵(By みてみん)







翌早朝…


スマルトの野営地へ傭兵を残し、騎兵300で森に沿って街道方面へ進んでいく。

先頭は、黒騎士を中心とした鉄意騎士団50騎である。



「嬉しそうだな」


「ん、そう見えるのか? まぁ、ドレア達は湾岸都市ムナクで大いに戦ったから満足しているのだろうが、私はスマルトで留守番だったからな。

久しぶりの騎兵戦…少々、顔に出るのも仕方ないだろう」


ドレアの問いに、システィナは振り向きもせず、騎士ホラサンへ顔を向けると…


「ホラサン、騎馬を駆けさせなくてよいのか? この進軍で戦場に間に合うのか?」


「えぇ、大丈夫です。連絡では、昼過ぎに帝国軍に突撃する予定ですから、これでも1時間以上前には、戦場に着きます。

近づいたら、森へ入り待機致しましょう」


柔らかな言葉とは裏腹に、ホラサンやシャーディ、そしてティムリヤン国騎士達は、手綱を握る手に思わず力が入る。

いよいよ…裏切者を斬るチャンスが訪れるのだ。



午前11時頃…



「子爵、帝国軍の先頭は丘を下り始めたようです」


「予定より速いな…ナフル、騎兵500で先陣をきれ! 皆、急ぐぞ!」


「はっ」


騎士ナフルは、右拳を胸元へ当て子爵へ敬礼すると、500騎の部隊を連れ街道を駆けだした。ケルク・ムルガ子爵率いる本隊、騎兵2500もナフル率いる先陣部隊に大きく離されないように急ぐ。



騎士ナフル率いる先陣部隊は、騎馬を全速で駆けさせ、丘のふもとへたどり着く。ここまで、先行している斥候からの報告がないが、それは、帝国軍が先ほどの報告の動きと変わりない行軍をしているのだろうと考えた。

僅かな時間であるが、騎馬の息を整えさせる。



「よし、一気に駆け上がり、下りつつある帝国軍の最後尾を急襲する!」


騎士ナフルは、右手にランスを持ち、高々と掲げた。騎兵500も皆、高々とランスを掲げ、丘を登っていく。

そして、陸に上がった騎士ナフルと先陣部隊は……そこにいるはずのない物を見る。



「なに? なぜ帝国軍が…」


広い丘の上では、帝国軍騎兵が、ランスを構え陣を敷きこちらを向いていた。



…ばかな…


思わず騎士ナフルの思考が止まる。


……


「ナフル隊長、一旦本隊まで引きましょう」


傍らの副隊長が、ナフルへ声をかける。


「馬鹿者、我らが踵を返し退却すれば、本隊もろとも奴らの餌食になる…くそ、伝令兵、子爵へ状況を報告。我らが、殿を務めると…」


騎士ナフルは、騎兵500で殿を務め、本隊の撤退する時間を稼ごうと考えた。


「ナフル隊長…」


傍らの部下が、帝国軍を睨みながらナフルへ声をかける。

ナフルが、帝国軍へ目を向けると…


帝国軍より、両手を後ろ手に縛られた騎士数人が引き出されてきた。

それは……斥候に出ていたティムリヤン国騎士達…

そして、その騎士達を乱暴に追い立てる者達は、ティムリヤン国を裏切った、元湾岸都市ムナク守備隊長の…ジャマ・クルイーク、ガリエフ・クルイークの部下たちであった。

裏切り者の騎士達であった。



乱暴に地面にうつ伏せに引き倒される。その頭を裏切り者の騎士が左足で踏みつけ…大きく振りかぶった剣を…首目掛け、打ち下ろす。

次々に血しぶきが舞う。



「くっ、裏切り者どもめ!」


「その首、同じように刎ね、晒してくれる!」


先陣部隊の騎士達は、大声で叫びながら強くランスを握りしめた。


敵は…ジャマ・クルイークとガリエフ・クルイークは、元湾岸都市ムナク守備部隊の部下たちにわざわざ首を刎ねさせた。騎士ナフルらを挑発しているのである。



力量差もあり、多勢に無勢…



かわしながら撤退せねば、ケルク・ムルガ率いる本隊も壊滅する可能性がある。騎士ナフル以下、皆理解している事である。


だが…騎士の矜持…ティムリヤン国騎士の誇りとして、仲間が目の前で辱めを受けながら切られたのだ。



騎士ナフルは、右手に握るランスを高々と掲げる。そして、高々と掲げたランスを眼前に突き出した。



「奴らをこれ以上生かしておく事など許されない! 帝国騎士など構うな! 裏切り者達を必ずたたっ切れ――! 突撃―――!」


「おぉぉぉぉー!」


騎兵500は、真横に250騎づつ2列となり、雄叫びを上げながら全速で帝国軍へ突進した。




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