第14話 ダペス公爵家族との食事 1
レナトス暦 7017年
異世界召喚3日目
一時間後、ティアナが迎えに来てくれた。
城内、左側に建つ公爵邸内に入る。入り口右側の広間にテーブル、椅子が用意してあった。
給仕役であろうか、2人の女性に促されテーブル左側に…
奥より
博影、沙耶、ベレッタ、ティアナと座る。
飲み物が出され、勧められる。果実酒だろうか…飲みやすいがお酒類は、冷たい物を飲んでいたのでぬるい飲み物が出された事に驚く。
「遅れてすまない」
公爵と数名が広間に入って来た。椅子から立ち、頭を下げる。
と…いうかベレッタやティアナの通りに真似をする。
公爵は、テーブル奥に立ち、右側に家族が並んで立つ。
「みんな座ってくれ」
果実酒を一息に飲み干すと…
「今日は、お互い無礼講でいこう。こちらから、挨拶させてくれ」
こちらは、かなり緊張していたが、それを見越してか、公爵はルーズな雰囲気に持っていく。
公爵自ら
フェレンツ・ダペスと名乗り
妻、アンジェ
長男、カローイ 22歳
次男、フェルディ 18歳
長女、マリア 12歳
と、家族を紹介し、
ベレッタ、ティアナの紹介までした。
ベレッタとティアナの強張った表情をみると、かなり意外な展開なのだろう。
おそらく…
異世界の自分達の緊張をほぐす為であろうし、又、なかなかこういった時間は取れないだろうから、多くの情報を引き出そうと考えているのだろう。
こちらも、公爵が座ったままで良いと言うので、着座したまま…
熊谷 博影 15歳
沙耶 17歳
ついでに…前世界での職業…医療職の話や、沙耶は、学生…修道者のような立場と説明しておく。
特に沙耶の立場を説明しておかないと…沙耶を巻き込みたくはない。
まぁ、弟役の自分が先に働いて、姉が学生というか、修行中というのもおかしな話ではあるが…
テーブル手前に大きな皿にいくつかの食材が盛られており、給仕役の女性2人が、小皿に盛りそれぞれの前に持って来てくれた。
パンや、ソーセージ、豚肉と野菜を炒めた物や、鶏肉のシチュー、野菜のスープ等が並んだ。
飲み物として、大きな木のコップに注がれたビールと思われる物も出てくる。
農業主体と思われる、このような世界でビールに出会えるとは…
でも、ぬるそうだ…
「では、頂こう。神の祝福に感謝し……、乾杯」
軽く、木のコップを掲げ一口飲み、ベレッタやティアナを横目で見ながら食事をする。
ナイフ、フォーク、スプーンの3つが、テーブルに置かれていたのだが、使い方は共通らしい。
公爵の話中心に会話が進む。息子達の話や、娘の話…お酒の話など
公爵の、本音であろう家族のたわいも無いありふれた話から、家族を大切にしている事が、端々から伺える。
ふと、前世界の知沙の事…まだ、祖母と家族4人で過ごしていた普通の、毎日が代わり映えのしない生活が思い出される。
…なんでも同じだな。失ってから、そのありがたみに気づくものだ…
「沙耶、どうしたの?」
ふいに、公爵の妻、アンジェが沙耶に声を掛けた。
沙耶をみると、うっすらと目に涙を浮かべている。私と同じように、思い出したのだろう。
「あっ…いえ、大丈夫です。公爵様のお話を聞いていたら、羨ましくなってしまいました」
舌をペロッと出し、自分で自分の頭を小突いている。
アンジェは、優しい笑顔の中にも目に寂しさを浮かばせ、まるで沙耶の事を…この境遇を、一瞬申し訳なさそうに一瞬目を伏せた。
沙耶の頭を撫でる。
「お父さんまで、もう〜」
沙耶がおどける。
「お父さん??」
ベレッタが、何気に聞き返す。
「博影、弟ではなく、お父さんなの?」
場を和ませるように、ちょっとからかい口調で絡む。
しかし、沙耶にはこの些細な絡みを返す余裕がなかった。
「いゃ、えっと……本当は、お父さんです…」
よっぽど、家族を思い出し…うっすらと、涙した事を指摘され場の雰囲気を固めた、と考え焦ったのだろう。
沙耶にしては、珍しく焦っていた。
いや、これもついでだ。全員が注目している中で、ごまかして良い事は何もない。
「すいません、公爵様。実は、沙耶は私の亡くなった姉夫婦の子供で、5歳の頃より、私の娘となっています。私は、前世界では40歳です。
なぜかわかりませんが、こちらに来た際に、かなり若返ってしまっていました。そこで、周りの方々に、変な疑念を持たれないように、兄弟という事にしていました」
「若返りですか?」
ベレッタが、信じられないという表情で聞く。
「私達にも、わかりません。前世界でも、若返りの方法などは、ありませんでしたから…」
「そうか……いや、異世界からの召喚などという理解できない事もあるのだから、理解しようとする方が、間違っているだろう」
淡々と現実を認める公爵に対しさすがに、こころの中では…
…あなたのお陰なのですが…
と、少し悪態をついた。




