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異世界召喚戦記 ~チートな治癒魔法陣で異世界を生きてゆく~  作者: クー
第1章 異世界召喚 城塞都市ダペス
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第10話 魔法陣出現 1

異世界召喚 3日目


意を決して、ティアナの目を強く見る。


「ティアナ、迷惑だと思うけど、良ければ 負傷兵の治療の見学をさせてくれないか?」


若干、声が裏返った。


「大丈夫ですよ。では参りましょう」


ちょっと、ほっとした表情をティアナが見せた。公爵様の許可を得に行こうともしない…

もともと、そういう流れだったという事だ。


ティアナの後に続きながら隣を歩く沙耶の顔を見ると、不安げな表情を垣間見せる。

沙耶も分かっているのだ。この世界で生きていく為には、役に立つ所を見せなければならない事を…


今では、同じ背の高さになっている沙耶が、無意識に私の手を握って来た。

柔らかく握り返し、沙耶の様子を見ながら、意を新たにした。


小さな体育館程の広さのある治療所に着いた。

どうやら、治療所はまちまちの大きさで数棟あるようだ。その一つに入っていく…


中には、40人程の兵士がベッドに寝ており、ベッドの間を忙しく動き回る人たちから、何らかの手当てを受けていた。


汗の出ないくらいの過ごしやすい気候の中…

この治療所の中は、暑く感じ、又悪いがかなり悪臭が漂っている。

あちこちで、手当てを行っている人達は、白い服装で身を固めマスクのような物をつけ忙しいそうに動いている。


その中で、ティアナと同じように白いローブを纏った女性が、ティアナに気づき声をかけた。


「ティアナ、右手前のあたりの負傷者を診て!…と、その、方達は?」


包帯を巻き直す手を休めずに、私達を見…ティアナに聞く。


「公爵様の許可を頂いてます。異国の方々です、本日は見学に来て頂きました」


「そう、わかりました。では、ティアナあちらをお願いね」


目線は、興味のある事を示していたが、すぐに、目の前の兵士に向き直し手当てを継続していた。


ティアナはこのような場所でこのような時に、軽々しく…見学者をお連れした…

などと、言ってしまったことに後悔していた。


博影は、ここにいる自分達を場違いな存在と考えながら、見学者と紹介したティアナの優しさに感謝した。


「しっかり、気をしっかり持って!」


先程の女性は、手当てをしていた兵士に強く声をかけ、胸に下げている白いペンダントを左手で握り言葉を唱え出し…


「ヒール!」


と、叫んだ瞬間、兵士を薄い白い光が包み込んだ。3秒ほど光が続き、消える。女性は兵士の首に、右手の第2第3の指を当て脈を確認した…


僅かな時が過ぎ、女性は祈りを捧げた。

近くの男性を2人呼び、今、亡くなった兵士の体を運び出すように指示した。


ティアナは、右手前にあるベッドの中の一つに近付いた。

2人も、数歩後ろをついていく。


ティアナの目の前の兵士は、左の大腿部中央付近から足がなかった。

その大腿は、包帯をグルグル巻きにされており包帯も黒ずんでいる。

ティアナが、包帯を取り、薄黒く変色したようになっている大腿の切断面を消毒していく。

消毒液のようなものをティアナがかけるたび、兵士は、苦痛の声を発する。

しかし、くぐもった声を発するだけで、かなり我慢している…疲弊している様子がわかる。


ティアナも先程の女性と同じように、胸元の白いペンダントを左手に握り、言葉を唱え…ヒール…と叫んだ。

そして、包帯を巻き直す。


「終わりました。大丈夫頑張って下さい!」


慈愛に満ちた笑顔でその兵士に声をかけ、次のベッドに移動しようとこちらを振り向いた瞬間…


潤んだ目で…絶望的な…血の気が引いた表情を晒してしまう。


心の中で、ティアナに声をかける。


ティアナ、苦しいのは相手…治療者は、患者に接している時は、静かな水面の様な心で…

もちろん、聞こえるはずはないし、これも、前世界の職業の名残か…と博影は、自らを自嘲する。


兵士は、ティアナが離れる際…ありがとう…と呟く。

もはや、誰の目にも死を待つだけに見えた。


ティアナが次に進んだベッドにはついて行かず、大腿部が切断された兵士のベッドへ静かに近づく。

沙耶に少し離れてと声かけする。


軽く深呼吸する…出来るか…


いまだ、私の腹部の奥にとどまっているものに対し…感覚を集中させる…徐々に…

その腹部の奥から、力があふれ、体のすみずみに沁み渡る感覚となっていく…


全身に行き渡った時…


博影の足元に、博影を中心にしてあの魔法陣が現れた。薄い淡い光の魔法陣が…徐々に光を強くしていく。


ティアナも、周りの人々も、その床の魔法陣の光に気づき驚き…ただ見入った…のまれた…


さらに感覚を集中し続けると、その魔法陣は、博影の膝下近くまで浮かび上がりゆっくり回り出した。

魔法陣が徐々に広がり、大腿部を切断している兵士のベッドまで広がった。


あの時の感覚と同じだ…いける!


博影は、強くイメージする。

兵士の薄黒く変色した、大腿の切断面を再度切断する。

筋肉の切断面より、中にある大きな足の骨大腿骨は、さらに短く切断する。

大腿の深部にある筋肉は、深部の筋肉同士で縫合する。

表面にある大きな筋肉は、同じく表面にある大きな筋肉同士で縫合する。


筋肉同士で縫合する時は、大腿の前にある筋肉は後ろの筋肉と、大腿の外側にある筋肉は内側にある筋肉と縫合する。

そして、薄黒く変色していた部分から全身へ、血管内から、リンパから菌が巡っていっている可能性もあるので、兵士の全身をスキャンし、菌を消滅させた。


最後に身体を一時活性化させ、自己治癒力をあげた。


…大丈夫だ。これで、この兵士は助かる…


「博影殿。こちらの兵士もお願いします」


我に返ったティアナが叫んだ。


博影は、ティアナが指示してきた兵士…また、ここの治療者では、助けられないと思われた兵士のベッドの側へ移動し、同じように魔法陣の光で包み込み治療していった。




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