第9話 異世界召喚 9
異世界召喚 3日目
トントン
「入って良いですか?」
「どうぞ」
窓際からはなれ、2人はドアへ進む。扉を開け、ティアナが入ってくる。
「公爵様の許可を得ました。さあ、行きましょう」
扉を開けたまま、私達が進むのを待ってくれている。ティアナも着替えてきていた。
白いローブに身を包み、先ほどと少し雰囲気が違う。
ありがとう
軽く会釈して、2人とも扉から廊下へ出る。扉を閉めティアナが先に進み、途中、廊下に立っている女性騎士に…
「軍のお迎えに行ってきます、公爵様の許可が出ています」
と、報告し廊下の奥に進んだ。
少し薄暗い中、建物の端まで進み、階段を降りる。どうやら三階の部屋にいたようだ。
廊下や階段の途中には、壁に直接彫り物がしてあったり、花が活けてあったりしていたが、どちらかというと質素な感じの、飾り付けに見えた。
一階まで降り建物中央に進み、衛士の立つ大きな扉から広い中庭に出る。
…これは広い…
数棟の建物に囲まれ、小学校の運動場程ある。
建物付近は花壇で飾られているが、中庭自体は…まるで人が集まる事を想定しているのか、何もなく、石畳で埋め尽くされているだけだ。
この公爵様の屋敷と思われる建物を囲っている、人の背丈の倍はある城門から出て、ゆったりとした丘を下る。
この丘と、町との間は50mほど離れており、まるで…
屋敷を取り囲む壁の外を50mの帯で一周取り囲むように見える。
雰囲気は、ノスタルジックで優雅に見えるが戦を考えて、工夫が凝らされている所に生々しさを感じた。
人々の歓声が立ち上がる。歓声が途切れなく響き渡る。
かなり先に見える外側の城塞から続く大通りを、先頭を馬に乗った騎士団が進んでくる。
ティアナと私達は、ようやく大通りの両側に続いている人混みの隙間を見つけ、人混みの前列に進んだ。
遠目からみていると…太陽?の光に照らされ騎士の鎧が所々光って見え、弱冠威圧される。
馬も、鎧が着せてあり威風堂々として見えた。
目の前を騎士団がすぎ、市民の勤めとして招集されているという、市民の歩兵部隊が続く…
ここまでは、良きも悪きもその姿に圧倒され、また格好良さも感じていた。
続く隊列は、負傷者の隊列だった。
ほとんどの負傷兵が、荷馬車に乗っているが…荷馬車の様子から、長く進んで来た様子には見えない。
おそらく、城塞都市の近くまで歩いて来て、やっと荷馬車に乗れたのではないかと思う。
…生々しい光景だった…
あちこち巻かれた包帯は、血で汚れ
大きな歓声の中…
身じろぎも出来ずに、荷馬車に横たわる兵士達…
1500人の軍だと聞いていたが、かなり減っているように思えた。
最後の荷馬車まで見送り、町の市民が解散していく中…
「博影殿、私はこれから負傷兵の治療に行ってまいりますので、そろそろお屋敷に戻って良いですか?」
何か言いたげに、博影の目を少し覗きながらティアナが戻る事を促す。
分かっている…
この世界で生きていく為には、自分の役割を見いださなければ、
やれる自信はない
ただ、あの時の感覚…腹部の奥に、ある感覚…部屋を出た時から数回試しているが、そこに感覚を少し集中させると、体全体に力が行き渡っていくような…あの時の感覚が残っていた。




