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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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K06-02

 一特いちとくの調査船は太平洋を旧アメリカ軍基地のあったグアム島に向かって進んでいた。どこまでも続く青い水平線。ぬけるような青い空に白い雲が風に運ばれていく。往来する船も飛行機もなにもなく、大海原の上で調査船は孤独だった。ときおりトビウオやイルカがはねることはあったが、人間の痕跡は漂流物の一つでさえ見当たらなかった。

『カイラギ』に追われるように出向して以来、敵と遭遇したのは久我透哉くがとうやを失った時の一度きりだった。園部志穂そのべしほはモニターを監視しながら考えていた。『カイラギ』はなぜ襲ってこないのか。調査船の存在は既に『カイラギ』の知るところであり、前回の戦闘でこちらの戦力も知られてしまった。周辺に援軍もなく、『サースティーウイルス』を使って調査船のクルーを取り込んでしまうことはたやすいはずだった。

 久我透哉くがとうやの意識を取り込んだとするなら『バイオメタルドール』を『カイラギ』の姿に偽装して侵入するという作戦は、もはや通用しないだろう。戦力的にも劣り、これといった作戦もないことが彼女を不安にさせた。彼女が軍の学校で習った知識では白旗をあげて敵に投降することくらいしか考えられなかった。

山村やまむら刑事さん。無事にグアム島についたとして私たちはどうやって『カイラギ』の目的を探ればいいのでしょうか。『カイラギ』が地球の生物をすべてを滅ぼすつもりだとしたらどうやって止めるのでしょうか」

「さあね。白旗でもあげて『カイラギ』にたずねるしかないかな」

山村光一やまむらこういちは窓辺にたたずみ、海を眺めながら答えた。

「えっ。降参するのですか」

園部志穂は山村光一の答えにあきれた。

「園部さん。アニメとかマンガとかみたことありますか」

園部志穂は困った顔で答える。

「そう言うのはあまり」

山村光一は園部志穂の方に向き直った。

「いやあ。実はこういう話。アニメとかマンガの世界ではよくあるんですよ。悩んだり、悲しんだり、恨んだり、ねたんだりするのは結局は相手あってのことだって。だから、いっそ一つにくっつけてしまえばいいって。それが人類の究極の進化です。みたいな。まあ、人類が兵器だったというオチは、さすがに僕も驚きましたが」

「はい」

園部志穂は真剣なまなざしで山村光一を見つめた。

「『カイラギ』は久我透哉君の体を使って言いましたよね。『私は一つ』って。これはまさにそう言うことじゃないでしょうか。『サースティーウイルス』に冒された人々が海に消え『カイラギ』となつて現れた。『カイラギ』はいろいろなタイプがいるけっど、その実、意識は一つと言うことです。つまり、究極の幸せを手に入れたことになります。末端の『カイラギ』がいくら死のうが髪の毛が抜け落ちるようなものです」

「そうですね。軍隊としても最強です」

園部志穂は、自分の死をなげく彼氏をイメージして自分から別れを告げた過去を思い出した。

「園部さん」

山村光一は急に真顔になって彼女を見つめる。

「はい」

園部志穂は次に山村光一がなにを語るか身がまえた。

「園部さんは僕と一つになりたいですか」

「・・・。嫌です。絶対に」

園部志穂の緊張は一気に崩れ去った。山村光一は笑顔をつくる。

「ですよね。それが答えなんじゃないですかね」

「えっ」

「だってほら。野島刑事が言ってたでしょ。『いつくしむ』能力って。相手がいなかったら『いつくしむ』ことはできません」

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