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T02-02

『そうだ。『カイラギ』を倒さなければ』


 久我透哉くがとうやのBMD-T07は調査船の上で立ち上がった。背中から全身に力が送り込まれている感じがする。はじめて感じる体の軽さだった。久我透哉はゆっくりと目を開く。2体の『カイラギ』がBMD-T07を取り囲んでいる。BMD-T07は『ライキリ』をなぎはらった。

キーン。

『ライキリ』が空を切り、2体の『カイラギ』はそれぞれ船首と船尾に飛びのいた。2体の『カイラギ』は様子でもうかがうかのように突っ立っている。『カイラギ』は剣を持っているのにかまえてすらいなかった。

 BMD-T07は船首の『カイラギ』に向かって走る。『ライキリ』を上段に振りかざして飛ぶ。『ライキリ』をおおきく振り下ろしながら『カイラギ』の手前に低い姿勢で着地。振り下ろした『ライキリ』を引き寄せて下からの伸びあがるようにして振り上げる。『カイラギ』は一歩後ろに引いて体をそらしてそれをよけた。

 BMD-T07の動きは止まらない。左手の『クナイ』を射出して相手の右側の退路をふさぎ『ライキリ』を持つ右腕を伸ばしながら踏み込んだ。

ブン。

『カイラギ』は波を割る船首の上下運動を利用して、太陽を背にして高々と飛び上がった。久我透哉は目を閉じて太陽光を遮断し、空気をさいて落下する『カイラギ』の動きを耳と肌で感じとった。『カイラギ』は調査船のへさきにある見張り台に着地して距離を置いた。『カイラギ』が剣を振り上げてはじめてかまえる。BMD-T07は『クナイ』を引き戻して『ライキリ』を上段にかまえて『カイラギ』を見すえた。


『なんだ。あの動き。まるでしゅう。ん、修はどこだ。頭が痛い。なんだ。どうなっているんだ』


「やめて、透哉。どうしたの。どうしちゃったの。修だよ」


神崎彩菜かんざきあやなの叫びが響いてくる。


『神崎さんなのか。頭が、頭が割れるように痛い』


 後方からせまってくる『カイラギ』の姿が神崎彩菜のBMD-A01の姿と重なって見える。BMD-T07は左手で頭を抱えて片膝をついた。甲板にふれた『ライキリ』が音を立てて床を削っている。久我透哉は茫然ぼうぜんと『ライキリ』の刃先を見つめた。意識が遠のいていく。


 動かなくなったBMD-T07を見て神崎彩菜のBMD-A01が後ろからゆっくりと近づく。


「透哉。大丈夫。私だよ。彩菜だよ」


神崎彩菜のBMD-A01が手をのばした時だった。


「離れて。彩菜さん」


陣野真由じんのまゆがマイクをつかんで叫んだ。BMD-A01が後ろに飛びのいたタイミングで、BMD-T07の『ライキリ』が振り向くことなく後方へと空を切った。


「透哉くんはウイルスに感染したのよ。今の彼は透哉くんじゃない。『カイラギ』に心を支配されている。逃げて」


陣野真由が再び叫ぶ。BMD-T07は『ライキリ』を振り回しながら神崎彩菜のBMD-A01に襲いかかる。BMD-A01は甲板の上をバク転しながら後ろに引いた。引きながら剣とかした脚を使ってはなたれる『ライキリ』を横にはじく。そのまま船尾まで逃げた。二機の『バイオメタルドール』は距離を置いて対峙たいじした。


「透哉。戻ってきて。お願い。お願いだから」


神崎彩菜の悲痛な叫びがあたりにこだました。


「私は一つ」


BMD-T07は声を発する。


「きさまは何のために。なぜ存在するのだ。透哉君の体を返せ」


山村光一やまむらこういちが陣野真由のマイクを奪って叫ぶ。


「私は一つ。この星のみなもととして」


BMD-T07はそう言い残して海へと飛び込んだ。

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