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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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92/113

T02-01

「あなた、透哉とうやは目が見えないのよ。それなのに」

久我透哉くがとうやは二階の部屋で眠ったふりをして、一階にいる母の言葉を布団にもぐりこんで聞いていた。

「うるさい。つべこべ言うな。透哉は久我くが家の一人息子だ。代々にわたる久我一門の跡取りだ。久我の血を絶やすことはできない。私と結婚すると言うことはそう言うことだとわかっていたはずだ」

父のどなり声が響いてくる。

「そうだけど。そうかもしれないけど・・・」

母は言葉につまる。

「我が久我道場の教えはたとえ目を失おうとも、耳を失おうとも、手足を失っても天下無双の剣術。息子は目が悪いから跡継ぎを他のものに託したいなんて言えるものか。それこそ世間の笑いものだ」

父の怒りはおさまらない。

「じぁあ。その教えとやらで、透哉が救われたの。毎日、毎日。道場のお友達に叩きつけられて、アザだらけになって」

母が言い返す。

「・・・。修行がたらんのだ」




「なにが久我道場だ。なんだその白い杖。それで俺をたたこうってのか」

「無理、無理。陽ちゃん。得意の空手でこいつを黙らせなよ」

「そうだよ。こいつ。生意気なんだよ」

久我透哉はクラスメイトに小学校の体育館わきに連れ出されて、囲まれていた。

「ほら。あやまれよ」

陽ちゃんと呼ばれた子が殴り掛かってくる。パンチが腹に食い込み久我透哉は膝をおって地面に崩れ落ちた。腹を押さえてむせ返る。

「ちっ。よえー」

ドス。ドス。ドス。

地面に横たわる久我透哉の体を複数の子供たちが蹴った。久我透哉は体を丸くして頭を抱えて耐えた。涙が溢れ出て顔についた土が泥にかわる。それでも、声を上げて泣くことはなかった。噛み締めた唇が切れて鉄の味が口の中に広がった。

「強くなりたい」



『なんだ。これ。夢か』



「こちらの施設に久我透哉君と言う子が入所していると思うのですが」

陣野真由じんのまゆの声が遠くで聞こえる。

「はあ。軍の方ですか。透哉がまたなにかやらかしましたか」

園長の声は不満そうだ。陣野真由の声は戸惑っている。

「いえ、そういうわけではないのですが。透哉君を軍で引き取りたいのですが」

園長の声の調子が途端に良くなる。

「そうですか。それはありがたい。両親は例のウイルスなんちゃらで行方不明。おまけに目が見えない。不気味なんですよね。人の動きや心をよむというか。私らでは手が負えませんわ」

「では。お会いさせていただけますか」

「ええ。もちろんです」

「どちらにいますか」

「ここから四つほど部屋を先に行った一番奥の部屋です」

陣野真由の足音が廊下を響いてくる。



「『バイオメタルドール』に乗った気分は、どう。目を開いてみて。何が見える」

陣野真由の声にうながされて久我透哉はゆっくりとBMD-T07の36個の目を開けた。

「見える。見えます。前も後ろも。まわりが全部見えます。前にいるのは陣野さんですよね。ずいぶん小さいですね」

久我透哉は足元にたたずむ、小柄と言うよりは小人という表現に近い女性に向かって言った。陣野真由はBMD-T07を見上げるようにして笑った。

「あなたが大きくなったのよ。でもそう感じるのは神経接続が正常に働いているという証拠ね」



『なんだ。これも夢か』



『眠い。どうしたんだろう』

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