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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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Z02-02

 一特いちとくの調査船のデッキではバーベキューパーティが開かれていた。マグロステーキが焼けるこうばしい香りがあたりをただよっている。大トロ、中トロ、マグロにヅケ。鉄火まきにネギトロ軍艦。テーブルの上をマグロの寿司すしがところせましと並んでいる。『カイラギ』に海を奪われて以来、誰一人として口にすることのできなかった海の幸とあってクルーたちはみんな笑顔で楽しそうだった。

 神崎彩菜かんざきあやなが大トロを一かんつまんで口に運ぶ。

「おいしい。なにこれ。こんなの食べ物ははじめて」

彼女は大トロを皿に盛って陣野修じんのしゅうに差し出した。

「修も食べなよ。生の魚なんて気持ち悪いと思ったけど、ほんとにおいしいんだから。ビックリするよ」

陣野修がとまどっていると、神崎彩菜は大トロを一かんつまみ上げてしょう油を軽くつけて言った。

「はい。修。あーん」

陣野修は彼女の口元を見て、口を開けることを要求しているのを知った。彼が口を開くと、神崎彩菜はつまんだ寿司すしをほうり込んだ。

「どお、どお、どお」

神崎彩菜が目を大きく見開いて陣野修に顔を近づすて、感想を求めた。その楽しそうな笑顔が陣野修には印象的だった。一口かむとワサビのからさが鼻を抜けて、目に涙が浮かぶ。陣野修ははじめて食べるワサビにむせた。

ゴホ、ゴホ。

「ごめん、ごめん。大丈夫。ワサビ、苦手だった」

神崎彩菜は陣野修の背中をやさしくさすった。陣野修はこんな時、どうこたえるべきかを知らなかった。学校でのクラスメイトのしぐさを思い出す。右手で『OK』のマークをつくって彼女に見せた。

「ちょっと。私の修君になにしているの」

オペレーターの園部志穂そのべしほがあらわれた。彼女はかなり酔っている様子だった。陣野修も神崎彩菜も酒に酔っている園部志穂を見るのははじめてだった。園部志穂は波にゆれるデッキでバランスを失った。神崎彩菜がそれを受け止める。

「園部さん。大丈夫ですか。かなり酔っているみたいですけど」

「修君。こういう時は男の子が受け止めてくれるものよ」

園部志穂が陣野修に抱きついた。

「酔っぱらった園部さんって別人だね。リクエストもあることだし、修、後は任せたよ」

神崎彩菜は笑顔で去っていた。陣野修は困っていた。『カイラギ』の対処法ならいざ知らず、大人の女性とどう接するべきかなにも思い浮かばなかった。抱き着いてくる園部志穂の体を、密着しないようにただ茫然ぼうぜんと支えているだけだった。陣野真由じんのまゆが半分空になったワインのボトルとグラスを持って現れる。

「あらあら。志穂さんったら。困ったものね。立場が逆だわ。私は志穂さんにみんなを戦闘から無事に帰らせることを頼んだけど、志穂さんの帰る場所にしなさいとは頼んでないわ」

彼女は大きくため息をついてから陣野修に向かって言った。

「しょうがないわね。修、あなた男でしょ。こういう時はしっかり抱き止めてキスの一つでもしてあげるものよ」

いつの間にか久我透哉くがとうやもそばにきていた。

「修。そう言うことらしい。いさぎよく受け止めてやれ」

陣野修には『キス』の目的がわからなかった。唇をくっつけてお互いの雑菌を交換し合う行為になんの意味があるのだろうか。免疫力を高め合うと言うことか。

「ダメダメ。絶対にダメ。ダメだからね」

神崎彩菜が顔を赤くしてもどってくる。彼女は陣野修から園部志穂を引きはがして間に割って入った。神崎彩菜に園部志穂が抱きつく。

「あれ。園部さん。立ったまま寝ちゃってる」

園部志穂は笑顔のまま目を閉じて寝息を立てていた。みんなで園部志穂を彼女の船室まで運んだ。その後もバーベキューパーティは続いた。陣野修は仲間と過ごす楽しさをはじめて味わった。

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