A02-03
廃棄された高速道路の上に神崎彩菜ののったBMD-A01が立っている。道路の側には朽ちかけたオフィスビルや商業ビルが立ち並んでいる。ここは軍が保有する模擬戦闘用の施設だった。数基のドローンが飛び交い戦闘の開始を待っていた。商業ビルの屋上の一つにテントがはられ、パイプ椅子の上には軍のお偉方が列席していた。
BMD-A01の横には昔のアニメさながらのメカチックな人型ロボットがたたずんでいた。三友重工業社製重機動歩兵WZ01。それがそいつの名前だった。エンジニアやメカニックが走り回り、WZ01の整備をおこなっていた。膨大なリストのチェック項目をひとつずつこなしていく彼らの姿は自信に満ちていた。
「よくもまあ、あんなにチェックする場所があるものだ。あれじゃあ出動するのに何時間かかるか」
軍のお偉方の横に座った陣野真由はあきれ顔でつぶやいた。
「ふん。素人が。君、失礼だがWZ01がどれだけの兵器か知らんのだろう。260個のサーボモーターと88個の各種センサー、最新の量子コンピューター二基を搭載している。正に産軍一体の最先端技術が集結してできた傑作といえる」
一つとなりに座った軍服に身を包んだ男が、メガネの鼻当てを人差し指で直しながら言った。50歳代の前後に見える男の胸には勲章がつけてあった。陣野真由は遠慮せずに言った。
「部品が多いと言うことは故障する確率が高いと言うこと。それに無駄にコストがかかるわね。一機いくらするのかしら」
バカにされて男の顔がみるみる赤くなっていく。
「一機、たったの100億だ。アメリカの戦闘機を買わされていた時代を考えれば半値にも満たない。しかも純国産。燃料はバイオエタノールで環境にやさしい」
ギュイーン。
タイミングを合わせたかのように、チェックを終えた重機動歩兵WZ01のエンジンが始動した。列席している軍のお偉方達からどよめきがわき起こる。
「一機100億なんて、何機も持てないわね。それに、この食糧難の時代に穀物から作るバイオエタノールなんてナンセンスだわ」
男は重機動歩兵WZ01の姿に見とれている。
「いちいちうるさい女だ。一機で十分なんだよ。それが今、証明される。静かにしたまえ」
ウーウーン。
『これより三友重工業の重機動歩兵WZ01と筑波生物研究所の『バイオメタルドール』A01との公開模擬戦闘試験を開始します。各機スタンバイしてください』
サイレンの後にアナウンスが流れた。重機動歩兵WZ01とBMD-A01は距離を置いて向かい合った。
『はじめてください』
先に動いたのは重機動歩兵WZ01だった。右腕に取り付けられたチェーンソーを振り上げてBMD-A01に向かって走る。チェーンソーがうなりをあげる。
ギュイーイイイー。
重機動歩兵と呼ばれるだけのことはる。WZ01が足を踏み出すたびに振動が空気を震わせた。
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン。
対するBMD-A01はなめらかな動作で背中の日本刀を引き抜いてかまえた。




