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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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A02-02

「きれい。これが兵器なの」

ガラス張りの巨大なプールの中で膝を抱えて眠るBMD-A01を前にして神崎彩菜かんざきあやなは声をあげた。人型兵器と聞いていたので、ごつごつした金属のかたまりが関節によってつながっているロボットをイメージしていた彼女にとっては意外だった。金属的な光沢を放っているが、そのなめらかな肢体したいはウエットスーツを着たダイバーのようであった。

 彼女の横で陣野真由じんのまゆが説明をはじめた。

「この機体はあなたの細胞からつくり出した生体兵器です。『バイオメタルドール』と呼んでいるわ。操縦かんを握って操作する必要はないの。神経接続によって、あなたがあなたの体を意識せずに動かせるのと同じように自在に操ることができます。手足の長さも、体形もぴったりあなたと同じなのよ。違うのは大きさだけ。『バイオメタルドール』はあなたの体の一部みたいなものね。搭乗すればちょっとした超人になった気分が味わえると思うわ。大きさはあなたの4倍くらいだけど、運動性能は力もスピードもさらにその数倍はあるわ。そこはあなたの能力次第と言ったところね」

 兵器と言うより、巨大な人間に見えるBMD-A01の背中には天使の羽のような器官が二つついていた。渦巻き貝のようなそれは周期的に鼓動している。神崎彩菜はそれを指さす。

「あれはなに」

「『バイオメタルドール』の呼吸器官です。水中でも陸上でも呼吸できるのよ。人間の喉のように細くないから大量に酸素を取り込んで爆発的な力を発揮できるわ」

陣野真由の説明に神崎彩菜は興奮した。

「すごい。私、あれで『カイラギ』と戦えるの」

「ええ。でも『バイオメタルドール』に乗るためにはいくつかの問題があるの。『バイオメタルドール』は未完成の兵器なのよ。あれを動かすためには、あなたの脳の発する生体信号が必要なの。『バイオメタルドール』のコックピットには神経接続をおこなうための器官があって、あなたの背中から入り込んで背骨の神経に直接つながるのよ。血液を共有して酸素もそこからえます。あなたの細胞から作られているから拒絶反応はおきないけど、接続時の痛みは注射の比ではないわ」

「私、耐えて見せる。絶対に」

神崎彩菜の脳裏に失った家族の顔が浮かんだ。陣野真由はさらに続ける。

「それと末梢の活動を高めるために筋電位を補完に使っているの。人工皮膚でできた特別なスーツを着用する必要があります。このスーツには寿命があって、溶けだしたらあなたの体は『バイオメタルドール』に取り込まれてしまうわ」

「取り込まれたらどうなるの」

陣野真由は実験に志願した大人の兵士の姿を思い出した。全身の皮膚を失い、筋肉や内臓まで『バイオメタルドール』と一体化した兵士は、やがて意識までも無くしてBMDと共に『カイラギ』化してしまった。

『バイオメタルドール』は人を食うのだ。パイロットのスーツには毒が混ぜてあって侵食を防ぐ構造になっていたが、神経接続子からの侵食は今だ防ぎようがなかった。どういうわけか大人はそのスピードが速かった。陣野真由はその秘密を研究していたが、軍はそれを待ってはくれなかった。彼女は重い口を開いて一言だけ告げた。

「死ぬわ」

神崎彩菜はしばらくうつむいて考えた。

「それでもやる。『カイラギ』は許せない」

彼女は自分に言い聞かせるかのように力強く言い放った。

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