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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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A02-01

「こんにちは。神崎彩菜かんざきあやなさんですね」

神崎彩菜は病院の診察室にいた。いつものカウンセリングの女医と異なる母親と同じくらいの年齢の女性が丸椅子に座ってこちらを見ている。

 両親と弟を『サースティーウイルス』で失ったショックで彼女は生きる気力を失っていた。夜になると怖くなって眠れない。何をするにも体が重かった。

 家族を失った彼女は児童施設に入れられた。同じような子供たちが何をすることもなく、ただ一日をボーっと過ごしている。そこは児童施設と言うよりも、老人ホームのようだった。突然、暴れ出す子供や壁に何度も頭をたたきつける子などもいて、大人たちははれ物にでも触れるかのように彼らと接していた。子供たちは週に一度、病院に連れてこられて、カウンセリングを受けるが改善の傾向をみせる子供はほとんどいなかった。

 反応を示さない彼女を見て丸椅子に座る女性がもう一度声をかけた。

「神崎彩菜さんね。私は陣野真由じんのまゆと言います。軍の施設で研究をしています」

 神崎彩菜は『軍』と言う言葉を聞いて体の中心で熱くドロドロしたものが膨れ上がっていくのを感じた。心臓が激しく鼓動し、体がガクガクと震える。

「なんで。なんで父さんも母さんも弟も助けてくれなかったの」

神崎彩菜は目を大きく見開き、陣野真由の両腕をつかんで声をあげた。強く握った彼女の指が陣野真由の腕に食い込んでいく。陣野真由は顔をしかめ、拳を強く握ってそれにたえた。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」

陣野真由の目から涙がこぼれ出して、神崎彩菜の腕にポタポタとたれ落ちた。ふっと神崎彩菜の力が弱まる。陣野真由は腕をあげて神崎彩菜の頭を抱き寄せて抱え込んだ。神崎彩菜は陣野真由の胸に顔をうずめて、首を左右にふりながら声をあげて泣きじゃくった。

 しばらくたって泣き疲れた頃、顔を両手でやさしくおさえられた。陣野真由の手にうながされるように神崎彩菜はゆっくりと顔をあげた。陣野真由の指が彼女の涙を拭きはらってはなれた。腕には神崎彩菜に強く握られたあとが赤く残っていた。

「ごめんなさい」

神崎彩菜の小さな口がつぶやくように言った。

「彩菜さん。あなたの髪、とてもきれいね。ずっとふれていたかったわ」

下の名前を呼んで、そう言ってから陣野真由はほほ笑んだ。何ヶ月ぶりがもう忘れてしまったやわらいだ気持ちが神崎彩菜の心を満たしていく。

「ほら。笑顔もとてもすてきよ。彩菜さん。あなたもてたでしょ。すごい美人さんになるわね」

両親と弟と暮らしていた日常の記憶がよみがえってくる。

「でしょ。父にもよく言われたもの」

彼女は乱れた髪を手で整えながら答えていた。陣野真由は友達にでも話しかけるように言った。

「さあ、元気が出てきたところで私と少しお話しません」

陣野真由の声が心の中にスッと入り込んできてここちいい。神崎彩菜は、

「はい」

と答えた。

「私は今、軍の施設で『カイラギ』を倒すための兵器をつくっています。彩菜さんに力を貸してほしくてここにきたのよ」

「『カイラギ』が倒せるのですか。なら、わたし、なんでもします」

陣野真由は、神崎彩菜のキラキラとしたまなざしを見て若さっていいなと思う半面、彼女を戦闘と言う大人でも厳しい世界へと導こうとしている自分を呪わずにはいられなかった。

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