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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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K05-03

 野島源三のじまげんぞうは八王子キリスト教会の建物を見上げていた。白い木造の洋風建築。とがった三角屋根の上には十字架が一本立っている。建物は古いが、よく整備されている。なんの変哲もないどこにでもある教会だった。桐生雅史きりゅうまさしを尾行して何度もおとずれていたので、場所をすっかり記憶してしまっていた。自分には縁のない場所に思えて一度も中に入ったことがなかった。

 建物をじっくり観察してみると不自然なものが屋根にのっていた。全体は屋根に隠れてよく見えないが、廃棄せずに取り残されたBSアンテナにしては巨大なパラボラの一部がのぞいていた。

「あんなものがまだ動いていたか」

野島源三は青く晴れ渡った空を見上げた。

 八王子キリスト教会は市民に開放されており、ドアにはカギがかかっていなかった。ドアノブに手をかけて引き、中に入る。正面の壁に十字架が一つと小さな木製の祭壇。左右には木製の長椅子が連なっていた。同僚の結婚式に招待された教会とほとんど変わらないシンプルな内装だった。最前列の長椅子に高級そうな背広に身を包んだ男が一人座っていた。

「ん」

背中に固いものが押し当てられた。野島源三は前を向いたまま両手を左右にあげて三歩ほど中に入った。

パタン。

ドアが閉じる音が後ろから聞こえた瞬間、左脚を軸にして振り向きながら体を落として屈みこむ。拳銃を向けた男の腕をとってすくい上げ、反転しながら腰を入れて投げた。男はクルリと中を舞って床にたたきつけられた。背中を強打してむせかえる男の手をひねって拳銃を奪い取り、男の心臓に向けた。

一羽いちば。やめとけ」

最前列の椅子に座った背広の男が立ち上がって振り返る。胸には国会議員バッチが光っていた。一羽と呼ばれた男は向けられた拳銃から目を離さず、一歩引いてからゆっくりと立ち上がった。大柄で発達した胸筋。黒スーツにイヤホン。一目で軍のボディガードとわかった。野島源三はボディガードを無視して、前方の男に向かって質問した。

「国防副大臣の桐生雅史さんですね」

「ええ。八王子警察署の野島刑事さんですね」

桐生雅史は政治家らしい笑みを浮かべて野島源三に軽く一礼してから、彼に向かって歩き出した。

「一羽の失礼をお許しください」

「桐生さん。こんなものを振り回されては困るのですが。日本はアメリカと違って、まだ、法治国家なのですから」

野島源三はわざと『アメリカ』と言う言葉を強調して加えながら、奪い取った拳銃を桐生雅史に見せた。彼も桐生雅史に向かって歩き出した。

 二人は部屋の中央で向かい合う。桐生雅史は笑顔を崩さなかった。

「よくお調べで」

「仕事ですので」

野島源三も笑顔で答えた。

「その日本の法律で私を裁けますか」

「いやいや。困った。こちらでおさえた情報は、すでにお見通しですか」

野島源三は薄くなった頭をかいてから、拳銃の安全スイッチをセットして桐生雅史に手渡した。

「『カイラギ』の出現は桐生さんが考えたシナリオではないですよね。今日は黒幕に話をうかがいにまいりました」

野島源三は真顔に戻って桐生雅史の目を見すえた。

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