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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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K05-02

「それが、軍のデータベースにはありきたりの経歴があるだけで、特に気になるものはありませんでした。もともと民間の出身ですし」

三村美麻みむらみまは申し訳なさそうに答えた。野島源三のじまげんぞうは彼女の答えに落胆した。

「そうか。二週間ばかりはりついてみたが、表ではそれらしき行動は見当たらない。こちらも手掛かりなしと言ったところだ」

野島源三は三村美麻に告げてタバコに手をのばした。ケースから一本引き抜いて火をつける。深く吸い込んでゆっくりと煙を吹き出した。

桐生雅史きりゅうまさしは軍の資源の横流しに関与していないのか」

思わず声をはりあげてしまった。三村美麻は困り顔で答えた。

「残念ながらそういうデータは出てきませんでした」

野島源三は、神崎彩菜かんざきあやなを訪ねて病院ではじめて彼女とあった時のことを思い出した。あの時は感情をおさえて、きびしい表情をしていたが。これも山村光一やまむらこういちの影響だろうか。困った顔がかわいくも感じる。

「軍内部での評判はどうかな」

野島源三はやさしく質問した。

「真面目すぎて付き合いが悪いと言う人が幹部の中にはいるようですが、悪いうわさはありません」

三村美麻はさらにすまなそうな顔でうつむいた。

「そうだな」

野島源三は小さな声で答えてからタバコをもう一度ふかすと、警察手帳に目を落とした。

「ところで、桐生はクリスチャンなのか。毎週、かかさず教会に顔を出しているようだが」

「厚生労働省の研究員として、アメリカに渡った際に改宗したと記録にはありました。秘書官をしている女性兵士にそれとなく聞いた時、どんなに忙しくても教会でのお祈りは欠かさないからスケジュールを調整するのが大変だって笑ってました」

三村美麻に笑顔が少し戻る。

「そうか。真面目で仕事熱心。頭が良くて、道徳心もある。なおかつ二枚目。女性票が集まるのは無理がないか。今の政治家としては理想的だな」

野島源三はタバコを指にはさんだまま、無精ひげをなでた。伸びた灰がポトリと床に落ちた。それを見つめながらしばらく考える。

「教会だ。間違いない。桐生雅史の通う八王子キリスト教会。黒幕がいるとしたら定期的に連絡をとる必要がある。桐生はそこで、なにものかとコンタクトをとっているんだ」

野島源三は立ち上がって火の消えたタバコを灰皿に押し付けると、椅子に掛けた上着を取った。

三村みむらさん。教会に行ってきます。あなたはここでお昼でも食べていってください」

「えっ。ここでですか」

三村美麻は驚いて机しかない取調室の中を見回した。

「ああ。石塚亭のかつ丼はうまいぞ。実はもう二人分、出前を頼んでしまった。よろしく頼む」

「取調室でかつ丼ですか。都市伝説ですね」

三村美麻はちょっと困り顔になるが、表情は明るい。

「そう言うな。山村やまむらが『一特いちとく』から戻ったら埋め合わせはする」

野島源三は笑顔で答えると、取調室を飛び出した。

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