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バイオメタルドール  作者: 坂井ひいろ


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K04-02

 麻宮五鈴あさみやいすずは八王子警察署の取調室に座らせられていた。六畳程度の大きさで、窓のない殺風景な部屋は平衡感覚を狂わせる。居心地の悪さは軍と大差がなかったが、銃を持った兵士がいないぶんすくわれた。

「こんなところですみませんな」

野島源三のじまげんぞうは麻宮五鈴にわびてから、名刺を一枚取り出して渡した。

「盗聴とかいろいろと面倒なことになると、結局、ここが一番安全でして。あいさつが遅れてすみません。山村と一緒に捜査を担当しています野島と申します」

野島源三がかるく頭を下げると、隣に座る山村光一やまむらこういちが頭を深く下げて言った。

「本当にすみません」

「かまいません。昨日で慣れました」

「組織と言うものはおかしなもので、同じような仕事をしていても『軍』と『警察』は横のつながりがないと言うか。今回のような両方がかかわる事件が起きると、お互いに別々に報告書を作って上にあげるような仕掛けになってます。上はともかく下は仕事が増えるばかりで、税金の無駄づかいですな」

「学校も似たようなものです。公務員はどこも同じですね」

麻宮五鈴が答えると、野島源三と山村光一が同時にため息をついた。麻宮五鈴はそれがおかしくて思わず笑ってしまった。野島源三と山村光一も苦笑いした。

「まあ、上層部は犬猿の仲ですが、ここにいる山村君と昨日お会いになった「軍」の三村美麻みむらみまさんは恋人同士なんですよ」

「なっなにを言い出すんですか。野島さん」

山村光一が顔を真っ赤にして野島源三を止めにかかった。

「ここにいる野島さんはこんな顔をしていますが、キャリアなんですよ」

「顔は関係ないとなんども言っているだろ」

野島源三も年甲がいもなく顔を赤くした。中学生のコントと変わらないような会話をする二人を見て、麻宮五鈴は彼らの仲の良さを感じ取った。

本庄卓也ほんじょうたくやくんと山下愛やましためぐさんの件は三村さんから聞いております。上への報告書は山村が二人の件を伏せてそれらしく作りますので気にしないでください」

「またぼくですか」

「デートに行く時間が欲しいならおれが作るが」

「わかりました」

山村光一は麻宮五鈴に、

「こんな人ですみません」

と言って話をきりあげた。

「『軍』の不都合な真実として、本庄卓也くんと山下愛さんは『カイラギ』に取り込まれていたと考えられます。軍の三村さんの情報では、二人が『カイラギ』と戦っている時に『サースティーウイルス』放出反応が認められたとのことです」

「どういうことですか」

 野島源三は陣野真由じんのまゆ教授から聞いた真実を麻宮五鈴に語り始めた。


 野島源三の話を聞き終えて、麻宮五鈴は深いため息をついた。

陣野修じんのしゅうくんと宮本修みやもとしゅうくんは別人なのですね」

「ええ。遺伝的にはまったく同じですが、人としては別人です。時間を隔ててはいますが、一卵性の双子と同じです。陣野修くんには宮本修くんとしての記憶も人格もありません」

「そうですか」

麻宮五鈴は流れ出る涙をおさえられなかった。宮本修に生きていてほしいと願う自分、生きていくために宮本修の記憶を消し去った自分。二つの自分がいた。

「宮本修くんは帰ってきませんが、陣野修くんはあなたの生徒ですよ。陣野修くんには仲間とともに過ごす場所が必要です。『心』をつくる場所が必要だと思います」

野島源三のじまげんぞうはうつむく麻宮五鈴の肩に手を添えた。麻宮五鈴は顔をあげた。

「そうですね。陣野修くんが帰ってくる学校を守らなければいけませんね」

山村光一がポケットからハンカチを取り出して麻宮五鈴にわたした。それを受け取った彼女は、ハンカチを顔に当てて声をあげて泣いた。

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