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K03-01

「いやー。しかし、あの映画の主人公って神崎彩菜かんざきあやなそのものですね」

山村光一やまむらこういち三村美麻みむらみまは二人で映画を見終えて街のこじゃれたレストランに入って座ったところだった。

「自分の属する軍のことを悪くは言いたくないけど。中学生を使って戦意高揚せんいこうようをするなんて」

三村美麻はうつむいて口惜しそうに語った。

「警察だって似たようなものです。役に立つものならなんでも利用する。上層部の考えることはどこも同じゃないですか」

山村光一なりに彼女をはげました。

「少年を守り戦闘で負傷して脚を失いながらも、仲間を守るために『カイラギ』と戦い続けるヒロイン。軍の目的はともかく僕はけっこう感動しました」

三村美麻は神崎彩菜の病室での姿を思いおこした。

「そうですね。神崎さんはとても強い子でした」

「野島さんにこっぴどく怒られたんですけど、いつか大人が『バイオメタルドール』にのれるようになったら、正義のために本気で戦いたいと思っているんです。だって、かっこいいじゃないですか」

山村光一が興奮して話すのを聞いて、三村美麻は噴き出してしまいそうになった。

「正義のためにですか」

「はい」

山村光一は三村美麻の顔を真っすぐ見つめて言った。

「大人になると自分の都合ばかり口にしてしまいます。偉くなって知恵のある人はもっとたちが悪い。そうやって自分の立場を守って裕福な人生を送ることになんの価値があると言うのですか。だれかのために戦えるなんてすてきだと思います」

レストランで恥ずかしくもなく正義を口にし、人生を語る山村光一を見て、三村美麻はこの人は本当に純真なんだと思った。彼が結婚できない理由もわかった。

 お店の女の子が注文を取りにきたが、山村光一の熱弁に驚いて声をかけられずにいた。三村美麻はそれを察して、メニューを彼に手渡した。山村光一はつい興奮してしまった自分を恥じでおどおどしている。

「注文はどうされますか」

山村光一はメニューをながめてから三村美麻につげた。

「こういうところは初めてでして、三村さんにおまかせします」

「お互い非番できたのですから、美麻でいいですよ」

三村美麻に言われて、山村光一は中学生のように顔を赤くしてうつむいた。

「あっ。あのお金は僕が払いますので。み、美麻さんのお好きなものを選んでください」

「それじゃあ。遠慮なく。私、これでも大食いなんですよ」

「えっ」

山村光一は三村美麻の少し痩せすぎともいえる体を上から下までじっくりと見てしまった。

「あんまり見つめないでくださいね」

三村美麻は恥ずかしそうに笑ってから、お店の女の子を呼んで注文を伝えた。

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