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M02-05

 つぎは陣野修じんのしゅうのBMD-Z13の番だった。園部志穂そのべしほはインカムに向かって指示を出した。

「Z13。海中に飛び込んでください」

『了解』

陣野修の返事が園部志穂のモニターに打ち込まてくる。BMD-Z13は学校の屋上を走り、さびついた鉄柵を飛び越えて海へと飛び込んだ。BMD-Z13は腕をピッタリと体につけて脚を伸ばして閉じた姿勢で、水の抵抗を最小限にした。背中の呼吸器官を使って潜水艦のように潜航した。

「指揮車よりZ13へ。呼吸器官を停止し、手足で泳いでみて」

陣野真由じんのまゆがマイクを使って指示を出した。

 陣野修じんのしゅうのBMD-Z13が海中で止まったまま動かなくなった。しばらくそのままだったが、急に手足をバタつかせてもがき苦しみはじめた。

「ねぇ。あれ。もしかしておぼれていない」

神崎彩菜かんざきあやなのBMD-A01が彼のもとに向かった。

「A01より指揮車へ。Z13がおぼれています。指示の撤回をお願いします」

神崎彩菜の連絡を受けて園部志穂はあわててインカムに向かって指示を出した。

「Z13。呼吸器官を使ってください」

BMD-Z13は背中の呼吸器官を大きく膨らませて海水を取り込むとゆっくりと吐き出した。

「やはり」

陣野真由は園部志穂のインカムが音をひろわないように小さく声をあげた。BMD-Z13は呼吸をもどして、呼吸器官を器用に使って泡一つたてずに水中をすべるように滑らかに泳ぎ回りはじめた。

 神崎彩菜のBMD-A01も久我透哉くがとうやのBMD-T07も決して泳ぎがヘタとは言えなかった。むしろ初めてとは思えないくらいの熟練度に見えた。しかし、陣野修の泳ぎ方はまるで次元が異なっていた。人間が泳ぐときは手足で水をかくため、どうしてもスピードが安定しない。呼吸器官の使い方も地上で呼吸するときと同じように吸うタイミングと吐き出すタイミングでリズムを持っている。陣野修のBMD-Z13の泳ぎ方はスピードの変化がまったくなかった。呼吸器官は給水と排水を同時におこなって、途切れることがなかった。手足を合わせて使う方が効率的に思えるが長時間動かし続けると疲労がたまってしまう。また、水をかく時に水流を乱すためエネルギーのロスも多い。その点、呼吸器官は常に動き続けるための筋肉の構造を持っているので、水中で活動するならBMD-Z13の泳ぎ方が理想的だった。

「陣野教授。教授は修くんが泳げないのを知っていて、わざと呼吸器官を止めるように指示したのですか」

園部志穂はインカムのスイッチを切って尋ねた。

「ええ」

園部志穂は怒りを目にためて言った。

「息子さんがおぼれるのを知りながらですか。親としてそれが許されるのですか」

陣野真由は表情一つ変えずに静かに答えた。

「ええ。園部さん。BMD-Z13の泳ぎ方が人間のものではないことはあなたも気づいてますよね。あの動きは『カイラギ』の泳ぎ方そのもの。修は『カイラギ』の中で生まれたのよ」

園部志穂は陣野真由の告白にどうようした。

「そんな。『カイラギ』っていったいなんなのですか」

久我透哉のBMD-T07から送られる音波通信を受けてAIがオペレーションルームのモニターに海中の映像を映し出していた。3体の『バイオメタルドール』が泳ぎ回る姿を横目で見ながら、陣野真由は野島源三のじまげんぞう山村光一やまむらこういちに語った秘密を園部志穂に話しはじめた。

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