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A01-02

 神崎彩菜かんざきあやなのBMD-A01はビルからビルへと飛び移りながらオリンピック記念道路へと向かった。雨は衰えることなく激しく降り注ぎ、視界の邪魔をした。一歩でも足を踏み外せばビルの谷間に落下して荒れ狂う波間にのみこまれるだろう。BMD-A01のはっ水ゴーグルは雨水を弾き、シリコンエアーシューズのソールは滑ることなく、6メートルを超える巨体が作りだす衝撃を反発に変えて跳躍を支援した。

 彼女はオリンピック記念道路の高架をとらえて跳ねた。

「いけぇー」

BMD-A01の体が空中で後ろまわりに一回転する。頭が海面をとらえた時に彼女は波間に漂うなにかを認めた。

「男の子」

着地のバランスを崩して、片手をアスファルトについてしまう。彼女はBMD-A01の体勢を立て直して、高速道路の欄干に向かい下を覗き込んだ。ビルの間で濁流にもまれながら必死にもがいている裸の男の子の姿がそこにあった。男の子は彼女と同じ中学生くらいに見えた。

「A01より本部へ。パイロットと思われる男の子が溺れています」

「本部よりA01へ。周辺10キロメートル内で別部隊の出動は確認されていません。『サースティーウイルス』の浮遊圏内です。生存者がいたとしても助かりません。『フェイクスキン』溶解ようかいまで、残り時間20分を切りました。即時、帰投してください」

オペレーターをしている園部志穂そのべしほの回答は教科書通りの模範回答だった。

神崎彩菜の目の前で男の子が腕を伸ばしながら波間に見え隠れしている。

「感染兆候みられず。救出します」

彼女は園部志穂の返答を待たずに、欄干を飛び越えて海へと飛び込んだ。落下の勢いと重みでBMD-A01は海中に沈みこんだ。彼女はBMD-A01の体をドルフィンキックで水面に向かわせる。頭部を水面に出して、男の子を確認しようとした瞬間、目の前に『カイラギ』の戦闘タイプの姿があった。

「まずい」

彼女はとっさにBMD-A01の腰の短刀を引き抜きぬいた。『カイラギ』の背後から首をとって一気に切り裂く。

「ん。反応がない。こいつ死んでいる」

彼女は安堵のため息を一つつくと、腰に短刀を戻し、溺れかけている男の子の所へと向かった。

 大量の水を飲んで意識が薄れている男の子をつぶさないように、そっと右手で包み込み、左手のアンカーを高架に向けて射出した。

「A01より本部。パイロットと思われる男の子を救出。帰投します」

 高速道路上に戻って『ウェアーバイク』を探す。『ウェアーバイク』はハンドルも座席もないBMD専用に開発された小型二輪車で、前後のタイヤのホイール部が空洞になっている。そこにBMDの足を突っ込んで、スケートボードの要領でバランスをとりながら運転する移動機器だ。スケートボードのように車輪の径が小さくないので、多少の悪路でも走行できた。足を抜くだけで簡単に離脱できるので、移動した先ですぐに戦闘態勢がとれた。

 彼女は『ウェアーバイク』を見つけると、BMD-A01の両足をタイヤの中に差し入れた。左手で男の子を抱え、右手に持ったワイヤー式のスロットルを握った。

ギュルルルル。

雨で濡れた路面にタイヤが空回りする。体重を乗せると『ウェアーバイク』は路面をとらえて勢いよく走りだした。

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