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G02-05

 山下愛やましためぐは怒っていた。その怒りがなんに対してなのかははっきりと自覚できたが、それを認めることはできなかった。つい少し前まで、おびえていた彼女に同調して震えていた『バイオメタルドール』BMD-G08の呼吸器官は、ゆっくりと息をはくように鼓動しながら、体内の熱を放出するため熱い空気を吹き出していた。

 8体の『カイラギ』が鉤爪かぎづめを向けながらジリジリと距離をせばめてくる。

「やらせるもんか」

彼女のBMD-G08は正面の『カイラギ』に向けて走った。日本刀を大きく振り上げてはねる。両手に渾身こんしんの力を込めて『カイラギ』の頭に向けて日本刀を振り下ろす。『カイラギ』は鉤爪でそれを受け止めようと両手を上げた。

ズザ。

BMD-G08の日本刀は『カイラギ』の両腕を切り落としてなおも進み、頭部を二つに割って止まった。『カイラギ』は脳しょうをまき散らしながら後ろに倒れた。

 左右から襲いかかってきた別の2体が彼女のBMD-G08に飛びかかり、鉤爪で左手と右足をえぐる。BMD-G08の外殻が砕け、浅く肉がそぎ取られる。焼きごてをあてられたかのような強烈な痛みが背中の『神経接続子』から彼女の脳へと伝わる。彼女は目を見開いてその痛みにたえた。

「かすり傷くらいで」

BMD-G08は右に振り向きながら日本刀をふる。右側の『カイラギ』は腰を引いてそれをかわすが、バランスを失ってしりもちをついた。左側の『カイラギ』がもう一撃を加えるために後ろから背中の呼吸器に向けて鉤爪を振り下ろす。10本の爪が呼吸器の外殻を砕き、内部が露出する。背中に痛みを感じたが、彼女はかまわず、しりもちをついて動けない『カイラギ』ののど元に向けて日本刀を突き刺した。

 振り向いて背中を襲った『カイラギ』に向き直った時『カイラギ』の頭部が彼女のBMD-G08の方に向かって転がり落ちた。本庄卓也ほんじょうたくやののるBMD-G05が『カイラギ』の後ろに立っていた。

「大丈夫か」

「平気平気。今日の私は無敵なんだから」

2機の『バイオメタルドール』は再び背中合わせに立った。5体の『カイラギ』が間合いを取りながら彼女らを取り囲んだ。ゆっくりと回りながら攻撃のタイミングを見計らっている。

「あのね」

山下愛は背中合わせの本庄卓也に話しかけた。

「あのね。もしも、この戦闘で二人とも生き残れたら」

彼女は一呼吸おいて気持ちを整えた。

「もし生き残れたら、ご褒美にキスして」

「えっ。なに」

本庄卓也の驚く様子が『バイオメタルドール』の背中越しに伝わってくる。

「もう。女の子に何度も言わせないで」

山下愛は心臓がバクバクと鼓動し、全身の血が頭に駆け上ってくるのを感じた。

卓也たくやしおりが好きなのは知ってた」

「だけど」

「だけど」

「私の初めてのキスは」

「卓也じゃなければダメなの」

彼女はそう言い残すと『カイラギ』に向かっていった。

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