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M01-04

 久我透哉くがとうやが敗れたことで、模擬戦は神崎彩菜かんざきあやなのBMD-A01と陣野修じんのしゅうのBMD-Z13にうつった。高速ビデオ撮影用のドローンが飛び交い目障りだったが、神崎彩菜は深く深呼吸して心を落ち着かせた。彼女が呼吸すると彼女の『バイオメタルドール』の背中の呼吸器官も蝶の羽のように大きく開いた。

『バイオメタルドール』とパイロットをつなぐ背中の神経接続端子は、パイロットの血管に入り込んで酸素の供給もおこなっていた。『バイオメタルドール』は彼女に遺伝情報をベースに作られ、神経細胞も、血中細胞も、筋肉細胞も同じものだった。『バイオメタルドール』の呼吸器官は人間の肺と言うより、両生類のエラにちかく、体外に露出していた。金属組成を持った外殻がそれを覆うように保護する構造になっている。パイロットが搭乗していないとき『バイオメタルドール』は養液を満たしたプールに格納されていた。水陸両用型の生物兵器だった。

「模擬戦を開始します。始め」

園部志穂そのべしほの声がインカムから流れ込んでくる。

 神崎彩菜のBMD-A01と陣野修のBMD-Z13は15メートルほど離れて一礼をした。神崎彩菜のBMD-A01は『ウェアーバイク』のスロットルをいっぱいに引いた。モーター駆動の車輪が高速回転し、アスファルトとの摩擦で煙を上げる。ブレーキを解除すると一気に加速した。『4ウィールブレード』を装着した陣野修のBMD-Z13がそれを追う形になった。

 旧首都高の上は複数の障害物が転がっていた。放置されて朽ち果てている自動車、『カイラギ』の『サースティーウイルス』で搭乗者を失った戦車の残骸、倒れた鉄塔。崩壊したビルで破壊されて10メートル以上寸断されている場所や海中に没している場所もあった。二体は時に鉄塔を滑り、ビルに飛び移り、遮音壁にそって真横に走りぬけた。接近するたびに短刀と短刀がやいばを交え、火花を散らす。忍者映画さながらの光景が繰り広げられた。

 BMD-T07を降りた久我透哉が白い杖をつきながら回収車のオペレーションルームに入ってきた。

「くっそう。修のやつ。手加減なしで頭を蹴りやがった」

そう言って、自分の首をおさえた。

「二人の戦いはどうなっている」

「動きが不規則なうえ、速すぎてドローンが追いつきません」

園部志穂そのべしほが悲鳴交じりの甲高い声をあげた。

「俺がやる。俺のヘッドセットを貸してくれ」

目の見えない久我透哉のヘッドセットは特別仕様で、彼の『バイオメタルドール』BMD-T07の技術を応用して作られていた。フルフェイスのヘルメットの後ろから背骨に添って神経接続をするための機器が付属していた。久我透哉はそれを装着し、ドローンの操縦システムとリンクさせた。

「おう。やってる、やってる。神崎のやつ、陣野のあの動きに互角に合わせられるなんて、たいしたもんだ」

久我透哉に操られる六機のドローンの動きは格段に良くなって、先回りして映像を送ってくる。戦闘経験が作り出す感はあるとしても、どうやったら六機ものドローンを別々に動かして、最適位置に配置できるのか園部志穂にはまったくわからなかった。彼女にしてみれば、三人とも既に人間とは思えなかった。

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