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M01-01

 久我透哉くがとうやの乗るBMD-T07と陣野修じんのしゅうが乗るBMD-Z13が旧首都高の上で15メートルほどの距離をとって対じしている。

「BMD-T07、準備はいいですか」

「いつでもどうぞ」

園部志穂そのべしほの問いかけに久我透哉は即座に答える。

「BMD-Z13、OKですか」

園部志穂のモニターに短く「OK」の文字が送られてくる。

「では、模擬戦を開始します。始め!」

園部志穂の掛け声とともに、BMD-T07とBMD-Z13は、お互いにかるく会釈をしてかまえる。久我透哉の乗るBMD-T07は直立のまま、陣野修が乗るBMD-Z13はBMD用に開発されたインラインスケート『4ウィールブレード』をブーツにセットして低く身がまえた。

 先に動いたのは陣野修のBMD-Z13だった。BMD-Z13は久我透哉のBMD-T07に向かって一直線に加速しながら距離を詰める。

 久我透哉のBMD-T07は左右の手首のスナップを使って『クナイ』を二個同時に放った。一つはBMD-Z13の頭部へ、もう一つは脚部へと飛ぶ。久我透哉のBMD-T07に向かってくる陣野修のBMD-Z13の直線的な動きを邪魔し、上下を押さえることで左右にふる狙いがあった。

『クナイ』に接続されていたワイヤーは戦闘用の武器のとしてさらに改良を加えられていた。人工の蜘蛛くもの糸をよって作られたワイヤーケーブルは細く透明で、高速で動かすと肉眼ではとらえられなかった。

 陣野修のBMD-Z13は左右には逃げずに重心を保ったまま腰の高さに小さくジャンプした。頭を狙ってくる一つの『クナイ』を右手の短刀で弾き、脚に向かってくるもう一つの『クナイ』を左脚の『4ウィールブレード』の側面に当てて横にそらした。そのまま着地し、スピードを落とすことなく久我透哉のBMD-T07に迫る。

 久我透哉のBMD-T07は両手をクロスして『クナイ』を引き戻す。左右に弾かれた『クナイ』はV字形の刃を出して、陣野修のBMD-Z13を挟み込むように後方から襲いかかる。陣野修のBMD-Z13は肩をひねって反転し、後ろ向きですべりながら向かってくる『クナイ』を両手に持ったそれぞれの短刀で弾き飛ばす。そのまま後ろ向きですべりながら宙返りして久我透哉のBMD-T07に向けて足をけり出した。

 久我透哉のBMD-T07は左腰をひねってそれをよけながら、日本刀を引き抜き、宙を舞う陣野修のBMD-Z13の横腹に向けて振り払った。陣野修のBMD-Z13は両手の短刀でそれを受け流す。短刀が火花を散らしながらBMD-T07の日本刀の上をすべる。陣野修のBMD-Z13は久我透哉のBMD-T07に背を向けて着地。体をひねって回転し、逆手に持った短刀を久我透哉のBMD-T07の背中に刺し込もうとした。しかし、久我透哉のBMD-T07は既にそこにはいなかった。二人は6メートルほど距離を置いて向き合う。

「ふー。やるねー。二人とも」

インカムから神崎彩菜かんざきあやなの声が聞こえてきた。

 今度は、久我透哉のBMD-T07が先に動いた。上段のかまえからアスファルトをけって一気に陣野修のBMD-Z13の間合いまで詰め寄った。日本刀が風を切って振り下ろされる。陣野修のBMD-Z13はそれを左手の短刀で受けながら、右手の短刀を久我透哉のBMD-T07の腹部に向けて突き刺す。久我透哉のBMD-T07は体を横にしてそれをかわし、陣野修のBMD-Z13の右手をとって引きながら足払いにかかる。陣野修のBMD-Z13は反転しながらすべってそれを逃れた。

 二人の戦いは遠くから見ているとまるでダンスを踊っているようだった。

「園部さん。データはとれてる」

「はい。陣野教授。AIの解析はまるで追いつきませんが。ドローンの三次元高速カメラに記録しまいます」

「AIが役に立たないから。園部さん。あなたの感に聞くわ。彼らは先日、はじめてBMD-T07と戦った戦士タイプの『カイラギ』を倒せるかしら」

「AIのデータ分析は必要ですが、重厚な戦闘タイプと違って、スピードと技を重視する戦士タイプでも問題ないと思います」

「そう。そうね」

陣野真由じんのまゆは感情を消した抑揚よくようのない声で告げた。

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