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Z13-02

「Z13へ。回収部隊の護衛に回ってください」

本部の園部志穂そのべしほの指示に対して、BMD-Z13からの返答はモニターに文字で打ち込まれてくる。

『Z13より。了解』

BMD-Z13のパイロットである陣野修じんのしゅうは言葉が話せなかった。

 筑波生物研究所の陣野真由じんのまゆ教授の予告通り、軍は特殊部隊を編制した。園部志穂の意思とは関係なく彼女はなかば強制的に、この部隊のBMDオペレーターとして配置転換させられた。特殊部隊のパイロットは全員が身体的か精神的な欠損を持っている社会的弱者だった。その上、未成年で中学生だった。普通に生きることでも大変な子供達に苦行を強いる自分の仕事の意義を見失いつつあった。しかも、今回のBMD-Z13に搭乗しているのは養子とはいえ、陣野教授の息子だった。園部志穂は自分の息子を戦場に送り出す親の気持ちが知りたかった。

「陣野教授。教授は息子さんを戦場に出して平気なのですが」

後ろでデータをとる陣野真由は園部志穂の質問に質問で答えた。

「園部さん。あなたはなんのために軍にいるの」

「人のために役立つ仕事がしたいからです」

「そう、模範的な回答ね。あなた、恋人はいるの」

「学生時代はいましたが、今は・・・」

「なぜわかれたの」

「・・・・」

園部志穂は答えられなかった。自分が戦闘で命を落とした時に彼が苦しむ姿を想像してしまったためとは。陣野教授は少し間を置いてから静かに語った。

「BMDのパイロットはかわいそう。私はそうは思わない。特にこの部隊の子供たちは。ハンディキャップを逆にいかしてあなたの言う人のために役立つ仕事ができるのだから」

「でも、それは大人の都合です」

「そうよ。それでも彼らはここで『生きたい』と思っているのよ。彼らにとって自分が自分でいられる場所、他人より優れていると思える場所は『バイオメタルドール』に乗って『カイラギ』と戦っているときだから」

「はい」

「園部さん。あなたの仕事は彼らを無事に帰らせることです。だから私はここの部隊にあなたを呼んだの」

陣野教授はキッパリと断言した。

 その時、園部志穂の前にあるモニターから警告音がなった。

「Z13へ。回収部隊のドローンより敵『カイラギ』の反応8。内5体は解体型、3体は戦闘型と思われます」

『Z13より。了解』

モニターに陣野修の返答が打ち込まれる。

「Z13へ。回収部隊の人命優先です。『サースティーウイルス』放出は絶対に避けてください」

園部はインカムを押さえながら伝え、マイクのオープンスイッチを切って付け加えた。

しゅうくん。必ず帰ってくるのよ」

BMD-Z13よりの『了解』の文字が彼女のモニター画面にだけ表示された。

 陣野修の『バイオメタルドール』BMD-Z13は、新しく開発された直列に4つの車輪が並ぶブレードを靴底に装着し、旧首都高をかけ出した。

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