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Z13-01

 山村光一やまむらこういちは郊外にあるスポーツ公園にきていた。公園の片隅にスケートボードやインラインスケートの上級者たちが遊ぶハーフパイプという器具があった。山村光一はその前にあるベンチに腰をかけて一人でインラインスケートの練習をする少年を見つめていた。

 少年は3メートルほどの高さのUの字の形をした木製の器具の上をなんども繰り返して行き来していた。Uの字の頂点から滑りおり、その勢いを使って反対側の頂点へと滑りあがって空中にジャンプする。ジャンプの過程で体をひねって回転したり、足を高くも持ち上げて逆立ちしたりしている。

「うまいものだ」

山村光一はサーカスでもみるかのようにそれを眺めていた。少年がジャンプするのを見上げていると時折、視界に太陽が入り込んでまぶしい。それくらい少年は高く飛んでいた。

 山村光一が調べた情報では、少年がインラインスケートを始めたのはわずか3日前だった。今では地方の大会くらいならかるく優勝できるくらいの技量を持っていた。山村光一は警察手帳を開いて目をおとした。


陣野修じんのしゅう法定年齢14歳。

知的障害有:言葉を話さない。自閉症患の可能性あり。

バイオメタルドール BMD-Z13パイロット。

養母:陣野真由じんのまゆ42歳。筑波生物研究所名誉教授。

   バイオメタルドールの開発者。


 神崎彩菜かんざきあやなによって救出された少年は、彼の未成年後見人に申し出た陣野真由に引き取られた。今では養子縁組をへて『陣野修』を名のっていた。


 山村光一はもう一度、陣野修の動きに目を向けて気づいた。ハーフパイプを行き来するときにインラインスケートのウィールが削れて車輪のあとを木版に残していた。そのあとがきっちり二本しかないのだ。空中であれだけいろいろな技を繰り出していながら、着地はすべて同じ場所だった。あんなことが人間にできるのか。それもたった三日で。

 よく見ると陣野修が空中で蹴りだす足の動きも、左右にふる手の動きも見おぼえがあった。山村光一は八王子警察署の刑事だったので毎週格闘技の訓練を受けていた。陣野修の両手に短刀を握らせれば。彼は見えない敵と戦っているのだ。

『カイラギ』の出現で海での交易を失い、ガソリンなどの燃料が不足していた。民間車両は既に不格好な木炭車が主流となっており、山村光一が少年時代に憧れたスポーツカーは存在しなかった。バイオメタルドールは人型を模してつくられている。先日の報道で、BMDの移動手段として燃料を必要としないスケートボードやインラインスケートなどの開発が進んでいると言っていた。陣野修はそれを攻撃に応用しようとしているのだった。

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