表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/212

第92話「神と神」

区切りを良くした結果、他の話より圧倒的に短くなりました。

 それからというものの、基本的にアルフレッドの周辺で行動することが増えた。何故かというと、やはり「使徒」が気になるということが大きい。使徒のことを知るのは彼のみで、そのうえマジムはちょくちょく()()に行っているようで、不安だった。

 攫われた後だからと異様にくっついていたマジムが偶にフラっと姿を消すと、また別の神に……神の御使いやら使徒やらに誘拐されるのではないかと不安になる。

 また、ウィーゼルは初めから敵対するつもりではなく様子見する予定だったとのことでとても友好的だったが、全ての神がそうとは限らない。

 最初に接触を図った神族が彼女で良かったと心から思う。

「アルフレッド、今日も仕事が終わったら手合わせをお願い」

 そして、もう一つここに留まる理由がある。もちろん、私の元来の目的である「強くなること」を果たすために、アルフレッドに戦い方を教わっているのだ。武器のアドバンテージを無くすために同じ質のものを装備し、指導してもらう日々を過ごしていた。

 彼は私に負い目があるという以上に自身で苦笑するくらいの高給取りらしく、報酬はお金ではない。見返りには仕事の手を貸すこととしている。

 これはある意味「した仕事ぶんの給料が報酬」ともいえるが、何をしても給料が変わらないらしいので、結局私たちばかり得しているように思えて、逆にこちらが申し訳ない思いでいっぱいだった。

 この国に留まっている間には、ジンの協力のもとそれぞれの家族や師匠とも偶に会い、冒険者ギルドカードが失効にならない程度には依頼をこなしつつ、平和に過ごした。

 そんな、ある日。




「セルカ様、一緒に来てください」

 苦々しい表情のマジムが、珍しく私に話しかけた。いつもはわりと受け身で、話しかけられるまで黙っているような彼が……と驚き固まっていると、彼は「今日だけ、いて欲しい場所があるんです」とつけ足す。

 時刻はだいたい夜の二十二時、アルフレッドでさえ仕事を終えて就寝しており彼に与えられたこの建物の一角は完全に静寂の内であった。

 今日だけ、という言葉をそのまま受け取ると、あと二時間程度彼のいう場に留まれば、彼の用事は終わりだろう。私はさっさとついて行くことにした。


 そしてたどり着いた先は、ウィーゼルの空間。海の底ではない。そこは神一人一人が所持する独自に創造した異空間……他の神にとって不可侵である場所だ。マジムが進入できたのは予め招待されていたからだという。

 そこまで説明されて理解できないほど、私の頭は硬くなかった。つまり、本日、ある神に私が襲撃される可能性があったのだ。

 あまり考えたくはないが、天や海と揃って主要神族であるマジムが一人で街中で対処するのが憚られるような相手らしく、私は背筋に氷を落とされたような感覚に身震いした。

 ウィーゼルの空間から見えるのは、水面に映る街。眠る仲間。まだ眠らないその街は数多の軍人の警備に見守られ、眠り人を起こさぬ程度に明るく人が行き交う。そこに()()()()()()()()が侵入した。

 アルフレッドの部屋を音もなく練り歩き、気配も無いのかバウでさえ反応しない。私がかけたままにしておいた魔法の障壁も全く意に返さない様子。

 部屋の隅の暗闇に潜むアルステラだけ、警戒心を剥き出しにそこから観察しているようだが、それには気が付かない侵入者は、真っ白い翼をはためかせた。

「……天の」

 ウィーゼルの声が鼓膜を揺らし、私の意識は現実世界に引き戻された。視線を向ければ、彼女は僅かに眉を顰めながらも敵意にまでは昇華しないような感情の乗った視線を、侵入者におくる。

 天の。それはおそらく彼女と同じ頃に代替わりした天空の支配者(あまのかみ)であろう。彼が訪れたのは偵察か、はたまた抹消か。ぞわりと背の産毛が逆立った。

「見たでしょ。これからも危ないときはここに呼ぶから安心して」

 ウィーゼルは、自分の立場をハッキリと示していた。私の味方だと。それはつまり、対抗する神たちとの対立も覚悟してのこと。

 私は少し苦しくなって、複雑な表情で天の神を見つめるウィーゼルから目を逸らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ