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第187話「ターニングポイント」

「っ……磯臭い……?」

 転移の間を経由して教会本部に移動した私たちは、真っ先に嗅覚から異常を察知した。意識してみれば、僅かに湿った空気の生温さや、普段よりも色濃い神の気配、それも天空神ではなく大海神の神力を感じ取った私は、ウィーゼルに助けられたのだろうとすぐに理解する。

 逃げ遅れたなどということはないだろうから……おそらくウィーゼルは一度きり発動する術を私たちの拠点に仕掛けていたのだろう。転移の間からの転移先として大海神の神殿は選択できなかったため、彼女も未だ忙しいのかもしれない。

 私はすれ違う神官たちに何があったかと訊ねてみるが、何かしらの術で忘れさせられているのか、潮の香り以外に挙げられる以上は特になかった。

 これ以上無関係な者に触れさせるべき話題ではないだろうと、教会本部の敷地を風魔法で換気し始めた私は、そのまま皆が集まる幼女守護団専用になりかけているホールを訪れた。

 案の定、来ることができた仲間はそこに集っていたようで、無事な面々を見た私は安堵の息を漏らす。ジンだけが姿を見せていないが、残った者から周囲への影響を確認しに行ったと聞いて、これもまたひと安心。

 大きな丸いテーブルを囲むようにして、それぞれ自前の椅子に腰かけているのを確認した私も、自分の席を用意した。

「とりあえず、ここであったことを教えてくれる?」

 座るやいなや口を開いた私に、視線が集まる。回答するのはアルフレッドだった。

「どこかで天空神の神力の圧力が爆発的に増加した。それはおそらく術式を用いたものだと思われる。即座に感知できたのは神位を持つ者と現人神で、逃げるための転移は教会の位置関係をよく把握しているジン様が。天空神の魔法が届いた一瞬だけ教会内が海水に満たされたようで、力を相殺したものかと。このことはジンが神官から封じられた記憶を一部読み取り知った」

 どこか、というのは私とトーマ、ステラの三人の直近だということがわかっているので、私は疑問もなく話を理解した。他の者と話をまとめていたようで、補足等もない。

 説明を聞き届けた私はひとつ頷くと、今度はこちら側の状況説明をおこなった。それから、目を細め、告げる。

「多分今回のは、私がバレた」

 それは素直な感想。

 無数の魔道具と魔法とで身を隠し正体を曖昧にさせて外出していた私だったが、エルフの道具を用いた転移、監視されている可能性がある集落を訪れたこと、そしてセルカとの血縁関係がはっきりしているガロフと、魔法で守られた環境だったとはいえ親密さを隠さずに過ごしたことは、危機管理がなっていないと指摘されれば反論しようもない。

 名を呼ばれることを防いだり、ぎりぎりのところでとどまっていたつもりではあったが、それ以外のところで気を抜いてしまっていたのかもしれない。

 他の仲間は教会にいたり、蟲皇庭園……迷宮の深部にいたし、冷静に考えてみればわかることだが魔法の爆心地は私たちが居た場所。集落への転移時に痕跡が残ったか、転移後に察知れて帰還時を狙った罠を仕掛けられていた可能性がある。

「まぁ後悔も程々にして……そろそろ潮時だと思うんだよね」

 ここで「何が」と聞くような者は、ここにはいない。何せ、私の一番大きな目的はセルカの目的、仲間の奪還である。大地神であるマジムを取り返し、使い魔としての関わりはどうなるか不明だが、神としての役割も果たしてもらわなければならない。

 ……神の位を得た仲間もいるし、関わりが切れることはないと思うけれど。

「あとはウィーゼルを待つだけだよ。でも」

 流石に、異常を感じ取った彼女が、来ないわけがない。ただでさえセルカへの罪悪感があるのだ。


「要望通り、終わらせたよ」

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