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第183話「エルフの拠点づくり」

 拠点の強化のために、植物魔法が得意な者が積極的に魔の森の木々に働きかけているので、出来上がっていくツリーハウスや木の洞を利用した住居は樹木にとっても負担の少ないものになっていた。

 そうでなければ魔の森は術者を害を為す者と判断して拒絶するだろうから、至って普通の対応であるのだけれど……力ある植物には精霊のような意思があるという前提を忘れてしまっている現代では、魔の森は魔の森としての面を強く見せる。

 このような生活と融合した魔の森の様子はエルフやエルヘイム家以外にとって信じ難いものだ。

 私はガロフと師弟関係であるとしているので、このような光景があることを知っていても問題はないだろうが、如何せんお忍びの低位貴族らしく装いを整えていたため、あまり()()()()をすべきではない。

 話には聞いていたが……というような反応が自然だろう。また、エルフは人間ほど出生率が高くないため、見た目が同年代かそれ以下のエルフは見かけなかった。出生率以前にセルカ擁護派の集まりにそのくらいの外見年齢のエルフが参加できるかどうかが問題か。

 続々と人数に合わせて整備されていく住居だが、食事の準備やら保存食の作成やら火を使う作業はそこまで時間を食うことなく終了し、途中からは火属性の魔法に特化気味であったトーマは、他の整備に利用しやすい属性魔法のプロフェッショナルたちに仕事を奪われて、本来の業務……つまり私の護衛に戻ってきた。

 アルステラに関しては未知数だが、まだ仕事を追われていないということはそれだけ魔法は得意なのだろう。

 当然のように私を腕に座らせるようにして抱きかかえたトーマは、私を連れて未だ半分も埋まっていない保存食料庫を訪れ、そこで品目の整理をおこなっていた女性に声をかける。

「俺たちが持っている保存食でそろそろ悪くなりそうなものは、数が多いからここで受け入れてはくれないか」

 彼はそう告げるが、私は自身の異空間収納にはそこまで期限の迫っている保存食はなかったはずだと一瞬迷う。だが、考えてもみれば(セルカ)のためにわざわざ一族から離れて活動し、そのために銀の氏族の都から食料を持ち出すこともないだろうから、セルカであれば罪悪感をおぼえただろう。

 私は正直どちらでも良いが、最も幼女守護団の連中のことを見ているであろうトーマがしようと思ったことなら、団員分として私がストックしている予備の予備、いくらか改良されて食べやすくなる前の……要するに旧タイプの保存食を放出することにした。

 そもそも私たちはあまり保存食を食べる機会がなく、それぞれが持ち運びやすく食べやすいものを異空間収納に常備しているはずなので、余程の緊急事態にでもならない限り消費されないもの。さらにその中でも味と栄養に妥協があるものを渡すのだ、相手にとっても罪悪感の少ない品々なので、問題はないだろう。

 私はとりあえずトーマにどれだけの量が必要かを訊ね、言われるがままに保存食を出していった。倉庫番の女性は「私たちは森でとれるものを主に食べているから、古いものでも珍しくてうれしいのよ」と微笑んでいた。

 私の出した量は彼女の想定よりも多かったらしく、後半は微笑みが深まっていたが、ガロフの弟子と公言されたことで誰も疑問には思わないらしい。感謝され、トーマと共にその場を後にすると、今度は彼は別の作業場に向かっていた。

 これが自然にできるようになるほど、セルカは主人公らしくお人好しな性格だったのだ。わかってはいたが、ミコトのつもりで動いてしまうとガロフ、または一応同じ領内にいるのだからセルカの父母に見咎められかねないので、トーマに従っておいた方が良いだろう。

次話からは文量を増やせる予定です。

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