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第162話「みずとかげ」

曜日感覚が狂って、更新を忘れていました。

遅れてしまい申し訳ありません。

 私とトカゲの視線が交錯すると、トカゲは僅かに目を細める。知性を感じさせる瞳から、それがただのトカゲではなく魔物の一種であることを察した。

 そのトカゲが私の足元をうろついていたのは、どうやら私の魔力……神力に惹き寄せられたからだったようで、肌の表面からほんの僅かだけ漏れ出すような微かな神力を一生懸命に喰らっていた。

 水色トカゲは私と目が合って以降も食事を続け、半透明になったり完全に水に溶けたりと不思議な様子を見せながら、段々とその動作から焦りが消えていく。腹が満たされたことで落ち着きを取り戻したトカゲは、水を取り込んでいくらか大きくなってから、私の目の前に浮上した。

 従魔にできる。

 再び交わされた視線から、感じ取る。私は特にこの魔物に魅力を感じたわけではないが、相性が良いということはわかる。神力に惹かれるなんて美食家にも程がある。

 すぐさま魔法を構築して、従魔契約の用意をする。トカゲは私とその神力の動きをじっと見つめ、待っていた。

「……できた」

 呟くと、トカゲは瞳を輝かせて水中で円を描くように横向きに一回転。

「あなたの名前はスイ」

 私がそのまんま水からとった個体名を与えると、契約魔法が完成し、スイは私と確かな繋がりを得る。同時にアルトや黒助の存在を感じ取ったのだろう、後ろを振り返ったスイは黒助の突進を受けてもふもふの毛に埋まる。

 水中なので大分感触は違うだろうが、それでも黒助の毛並みは上等、心地良かったようで、スイは水に溶けて逃げ出そうともせずにふわふわの毛に包まれる。そうやってじゃれついているうちに、アルトとステラが戻ってきた。

 人型アルトはスイが神力を腹一杯喰らったことを一目見て察すると、スイではなく私に非難するような目を向ける。セルカにかなり甘やかされていたのだろうなぁと思いつつ

「別にスイを特別扱いしているわけじゃないから、アルトは気になるなら言葉ちょーだい」

 と半目で伝える。基本的にゆったりとした性格なのに食い意地が張っていて、特に(ミコト)には敬意が足りないような気がしていた。これでもセルカが無反応なのは、彼が本当に悪意を持って私に接しているわけではないからというよりは、やはりセルカに異常があるように思えてならなかった。

 セルカがやっていたように神力を凝縮して飴玉のようなイメージで成形すると、アルトは大人しく「おれもたべたい」と望んだので、素直に渡した。彼は飴玉を口に放ると瞳を閉じて頬を染めた。

 私の手に残っていた飴玉たちは黒助とスイが突撃してきてワイパーでゴミを集めるように絡め取っていった。

「……スイも喋らないか」

 従魔契約によってある程度の意思疎通が可能だといっても、言葉がなければ限界もある。結局通訳はアルト頼みになりそうなので、私は彼に向けた追加報酬を検討するのだった。




 そんなことをしていると、周辺に未だ留まっていた魔物や人魚たちがこちらに興味を持つ。

 ステラが隣にいてくれるおかげで露骨な態度で示す個体はいないが、あまりに美味そうに神力を堪能する従魔たちを見て、腹が満たされたとはいえまだ魔力や体力が完全に回復しきったわけではない彼らは意識を引っ張られていた。

 特に、スイはそこまで強力な魔物でもなく幼き水竜や珍しい種族は自分なら私の恩恵に与れるのではないかと考えているのか、移動せずに解放されたままの場所に待機していた。

 セルカだったらここで皆に神力を少しずつでも分け与えるか固有技能を用いて回復と支援をするだろう……が、私は面倒なのでそういうことはしたくない。

 また、神力の影響が現れないとも限らないため、なるべく直接的な接触は避けるべきだろう。代わりに大量に買い込んであった市販魔法薬をひとつ引っ張り出して海底に置き、瓶が浮かないことを確認してから手を離す。あとは異空間収納を大きく開いてざっと一人一本行き渡るように用意した。

 アルトに拡声魔法をかけると彼は「ひとり、一匹に一本、魔法薬を支給する。あるじの力は毒にもなる。トカゲ……スイは運が良かっただけ。皆には代償も求めない。ただこれを使って身体を癒してほしい」というような内容を伝える。

 仕事を果たした私は、アルステラの顔に視線を向けた。彼は結果に満足したのか口元に笑みを浮かべ、演技がかった所作で私の手を取り、帰り道を示す。

 神がエスコートする相手の言葉であれば素直に受け取るのだろう、一部の何かしら不満気な空気を醸し出していた魔物たちはそっぽを向いて、ヒトに区分される人魚や水生動物の獣人たちはほっと胸を撫で下ろしていた。

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