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第104話「親子みたい」

 さて、見目は現状維持であったバウだが、本人が言うには体の感覚が全然違うらしい。抑えられて殆ど半減していた身体能力が一気にレベル相応のものへ上昇したのだから、体感的には違うかもしれないが、能力はほぼ二倍。

 祝福への転換の際に四方へ飛んで行った残りの光球は、おそらくバウにしたのと同じように地上にいる赤狼族の呪いを書き換えていることだろう。

 尻尾を大きく振る彼は喜びの絶頂にいるようで、今まで見たことないくらい浮き足立っていた。

「すごいね!体、こんなに軽くなるのね!」

 この場は広い草原なので、走り出した彼を遮るものはいなかった。高く伸びた草花も彼の身長的に影響が少なく、たとえ何かがあっても彼は地を蹴るとあっという間に飛び越えてしまう。

 そんな彼をまるで我が子を見守るような優しい瞳で見詰めているヴァッハは、バウと同じくらいに大きく尾を振って歓喜に満ちているようだった。

 そんな和やかな空気ではあったが、秘宝が急に結界を消滅させたことによって森からこちらに向かってくる少なくない敵対反応を拾う。先手必勝とばかりに次々と風で切り裂くものの、スタンピード一歩手前くらいの大勢が押し寄せてきて、さすがにヴァッハが反応した。

 どうやら直接命令できるような便利なものではなかったらしく、この地の主がいる中でも直進してくる魔物達は、果ての姿を想像すれば哀れにも思えてくる。

 楽しそうに駆け回っていたバウも周りが見えていない状態から少し落ち着くと、周囲に蔓延した多くの獲物を目にして、わかりやすく舌を舐めずった。

 姿勢を低く保ちながら駆け出したバウは、その身の大部分を植物の海に呑み込まれ、気配遮断でもしたのであろう、草の動きと音を除けば魔物の意識から消えることとなる。

 体勢が苦しそうだがその動く速度は中々で、そのまま敵に接近すると恐るべき膂力で一体目を草海に引きずり込んだ。

 中で何が行われているのかは視認できなかったものの、そこから僅かに感じられる炎の魔力から、彼の持っている炎属性の短剣が使われているのだとわかる。

 炎は燃え移りはしないようで、草の中で静かに息絶えるのが確認できた。

 そのままその流れで敵を倒すことを延々と繰り返しているのを見ていると、私が攻撃の手を弛めたからかその代わりだとでもいうように、ヴァッハが力強く跳び上がった。

 獣の神はどのように闘うのだろう、と彼に意識が逸れ、見ると、その立派な大狼の毛並みがゆらりゆらめき、まるで黒い炎のように踊りだす。炎は瞬く間に数多の黒獣を形成し、そのままそれらは各個連携を取りながら魔物に喰らい付いていった。

 一体一体が別々の意思を持っているのがわかる。

 属性魔法でも召喚魔法でもなく、創造の類の能力……それはまさしく神の御業。

 私もそれに加勢すると、草原は断末魔の織り成す不協和音に包まれる。他の者も手慣らし程度に群れから洩れた魔物をそれぞれの手段で骸へと変えるので、魔物の津波はあっという間に終息した。

次回からいつもの文量に戻せそうです。

受験生なので、書く時間が確保できなかった場合はまた少し短くなることもあると思います。

今回も遅れてしまいましたが、完結まで更新が止まることはありませんので、安心してお読みください。

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