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ドリーミン・コクーン(夢みる卵)  作者: ランプライト
第二章「魂の集う街」
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006「魂の集う街」

よく晴れた正月の午後、私は実家近くの氏神様に初詣していた。


男A:「おう、久しぶり、今何やってんの?」

男B:「俺?サラリーマン、お前は?」

男A:「俺は家のガス屋継いだんだ、知らなかった?」


再会を懐かしむ人達を遠い目で見ながら苦虫を噛み潰す。 私は何かを期待していたのだろうか? 私の事に気付く人間も、声を掛けてくれる人間も、居る訳無いのは最初から分ってるのに、そんなのそれこそ奇跡の様な絵空事だって理解しているのに。 大勢の人達が賑わう境内の隅っこをトボトボと歩きながら、目の前を行き交う人達を羨ましく妬む、これじゃまるで幽霊と変わらない。


「みほの」は、一体どんな気持ちなんだろう?


彼女は自分を幽体離脱した魂だと言っていた、それって幽霊みたいな物だろう。 それで元の世界に戻れなくなって、大切な人達と会えなくなってしまうのは、寂しい?哀しい?悔しい?


「みほの」自身はそんな事実をどの様に受け止めているのだろうか? 夢の中の彼女は何時も気丈で、その佇まいには凛とした強ささえ感じる、そして彼女は「まだ諦めていない」と言っていた。 彼女が壁の外を目指すのは、現実への帰還を望んでいるからに違いなかった。


もしも私が彼女の立場だったとしたらどうだろう? 同じ様に逆境に立ち向かえるだろうか? 寂しいだろうか?哀しいだろうか?悔しいだろうか?不思議な事に全然そんな事はなくて、別に夢の中に囚われた侭でも構わないじゃないかと思えてしまう自分が憐れだ。 結局私はこの現実に何の未練も持っていないと言う事のなのかも知れない。


みほの:「信じてないんでしょ、」……「みほの」は大聖堂の入口の階段に腰掛けて、膨れっ面で脚をブラブラさせる、

宏治:「君が嘘を言ってるとは思ってないけど、もしかして僕が場所を間違えたのかも知れないし、」

宏治:「もしかして君の世界と僕の世界は異なる並行世界だって事なのかも知れない、」

みほの:「ナニそれ? SFみたい、」……それでつんと外方を向いて、それから一寸微笑む、


一匹の茶虎の猫がヒョコヒョコと近づいて来て丸まった「みほの」の背中に首を擦り付ける、此処は本当に猫が多いな、


みほの:「もしこれが本当に夢なんだとしたら、君は僕の夢の一部って事なの?」……それで眉をしかめた顔も可愛らしい。 もしもこうして彼女と友達ミタイにしていられるのなら、ずっとこの世界に囚われてしまったままでも良いかも知れないと思えてしまう自分が憐れだ、


宏治:「いや、僕は僕だよ、」

みほの:「僕も僕だよ、誰が何て言ったって僕は一人の人間だよ、」……今更だけど、女の子なのに自分の事を「僕」って言う子、本当に居るんだ。


みほの:「それに夢だとしたら可笑しくない? どうして何時も同じ夢を見るのさ? どうして夢なのに僕達はまるで現実ミタイに生活してるの? どうして夢なのに空も飛べないの?」


みほの:「どうして僕達は閉じ込められているの?」……確かに僕達が活動できるのは、城壁と天蓋に囲まれた街の中だけだった。


確かにそうかも知れないのだけれど、そもそもこれ迄夢の内容をこんなにも明晰に自覚した事なんて無いのだから、何が正しい夢なのかなんて正直わかる訳がない。


宏治:「誰か、別の人にも相談してみようか?」

みほの:「別の人って、誰?」……それでなんて聞けば良い?


「君は実在する人間?それとも僕の夢の一部?」

「これは夢だと思う?それとも幽体離脱?」

「君は生きてるの?それとも死んでるの?」

「現実の君は何処に住んでるの?今度会えないかな?」


そんなナンパみたいな事が僕にで出来る訳が無い、「みほの」に話しかけようとした時はこれは絶対に自分の夢だと思っていたから一寸その場の雰囲気に流されただけだ、もしかして現実に実在する人間かも知れないと思うと、現実のショボクレタ自分の素性を振り返ると、やっぱり軽々しく声を掛けるなんて無理、


でも「みほの」の事情を考えれば、何時迄も放置しておく訳にはいかないだろう、


宏治:「実際に僕が現実世界で会って確かめるとしたら、男の人の方が良いよね、」……みすぼらしい僕が現実世界で女の人と話する姿なんて想像出来ない、


宏治:「それで日本の出来ればそんなに遠くない処に住んでいる人が良い、それで兎に角此処と現実世界との関係をハッキリさせて、」……それから「みほの」の家に行って家族に事情を伝えるつもりだ、と言う事はもう暫く黙っておいた方が良いだろう。


みほの:「良いけど、そんなに簡単には上手く行かないと思うよ、」……何だか彼女は乗り気じゃ無さそうだが、


そうして僕達は街の外れの由緒有りそうな大きな井戸の傍で一人の青年を捕まえた。 かなりがっしりした所謂マッチョ体格の「アメコミヒーロー」っぽい雰囲気の顎の割れたイケメンだ、


宏治:「すみません、つかぬ事をお伺いしますが、」

マッチョ:「やあアミーゴ、学生さんかな?」……スペイン人?


宏治:「えっと、貴方はこの世界が現実ではなくて、夢か、死後の世界じゃないかと感じた事は無いですか?」……思い切ってかなり直接的に聞いてみた、これは第一の難関である「生きてるか」/「死んでるか」を確かめるには結構良い質問じゃないかと思う。 それで「みほの」は何故だか恥ずかしがって僕の後ろに隠れてる、もしかしてマッチョ苦手だった?


マッチョは小首を傾げながら暫し考え込んで、


マッチョ:「えと、もしかしてこれは何かのクイズか何かなのか?」

宏治:「違います違います、実は、」……僕はあっさりと自分の正体と疑問を打ち明ける。


マッチョ:「からかってる?」

宏治:「違います、本当に素朴な疑問で、自分以外の人達が本当に実在する人間なのかどうかを確かめたいんです、」


マッチョ:「君達の期待に添えなくて悪いけど、私は此の世界に実在する人間だし夢でも幻でもないよ。 もしも君達が本気で自分の事を別の世界から来た幽霊か何かだと思っているのなら、相談に乗ってくれる人を紹介してあげようか? 確かそう言うのを「中二病」とか言うんだっけ、」


宏治:「違います、僕達は病気じゃないです。」……そう言う事か、此処に居る人達は自分達を現実だと思っているんだ、夢の中の出来事を夢だと自覚するなんて事の方が普通じゃないんだった。


宏治:「すみません、質問を間違えました、…貴方はずっとこの街に住んでいるんですか?」

マッチョ:「いや、以前は此処から遠い別の街に暮らしていたんだが、今は此処で休暇も兼ねて「古い伝承」を調査しているんだ、こう見えて私は学者の端くれなんだよ、」


宏治:「何を研究しているんですか?」

マッチョ:「昔この街に有った「精霊信仰」を調べてるんだ、例えば此の井戸は「風の精霊」を祭った物なんだよ、それに此の街には猫が多いだろう、それも精霊信仰から来る古い風習の名残なんだ、」


宏治:「城壁の外は、もう調査したんですか?」

マッチョ:「いや、未だだけど、」


宏治:「処で城壁の外に出るにはどうすれば良いかご存知ですか?」

マッチョ:「……、」……マッチョは暫し黙り込んで、


宏治:「貴方は以前は何て言う街に住んでいたんですか?」

マッチョ:「……、」……首を傾げて考え込む、


マッチョ:「確かに、言われてみれば変だな、私は何処から来たんだっけ、何で思い出せないんだ?」

宏治:「僕は以前は此処とは違う世界の「かながわ」と言う所に住んでいました、心当たり無いですか?」


マッチョ:「「カナガワ」、何処かで聞いた事が有る様な気がするが、何かの文献だったかな、」


マッチョ:「処で君達の名前は何て言うんだ? 因に私の名前は蛍田リョウと言う、」

宏治:「僕は町田宏治です、」

みほの:「海老名みほのです、」


マッチョ:「君達の言っている事は何だかとても重要な事の様にも思えるんだけれど、何だか頭がこんがらがって上手く纏まらない、少し考えを整理する時間をくれるかな、私は休息日の午後には大抵 旧総督邸の前のカフェに居るから、気が向いたら訪ねて来ると良い、」

宏治:「有り難うございます、」


マッチョ:「じゃあ、君達の研究が上手く行く様に幸運を祈るってるよ、アディオ!」……そう言うとマッチョは、僕達を後にして街の方へと去って行く。


宏治:「思ってたより難しいものだね、皆「現実」の事を覚えてないんだ、」

みほの:「あの人は未だマシな方だよ、普通はもっと変な目で見られるんだから、」……そう言えば「みほの」は僕よりも前からこういう状況に陥っているのだから、随分色んな人に同じ様な質問をして回ったのだろう、


宏治:「やっぱり、他の人に話しかけるのはもう少し作戦を練ってからにしようか、」

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