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ドリーミン・コクーン(夢みる卵)  作者: ランプライト
第三章「電脳世界よりの使者」
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012「電脳世界からの刺客」

肌に触れる空気がひんやりと心地良くてもう少し此の侭布団に包まっていたい気分なのに、無慈悲にも誰かがカーテンを全開にして明るい光を部屋の中に招き入れた。


重い目蓋を開けると其処はふかふかのダブルベッドの上で、剥き出しの梁がまるで魚の骨の様に覆う高い天井からはとても高価そうなシャンデリアがぶら下がっている。


鶴巻:「町田様、何時まで寝ているつもりですか? もう直ぐお昼になってしまいますよ、」……メイド長はそう言いながら暖かな掛け布団の繭を剥ぎ取ってしまった、

鶴巻:「夜更かしは推奨しかねます、きちんと朝食も食べるようにしてください、」


どうやら僕は「明晰夢」の中に戻ってきたらしい、


宏治:「おはようございます、」……僕は寝ぼけ眼でベッドから這い降りて、大欠伸しながらバスルームへと向かう、

鶴巻:「お客様がロビーでお待ちです、」……彼女はクローゼットから新しい着替えを取り出して、代わりに僕の寝巻きを剥ぎ取って手際よく洗濯物を回収して行く、


僕は急いで身支度を整えてフロントの隣のロビーへと降りて行く、壁に掛かった大きな振り子時計は既に10時過ぎを指していた。


みほの:「おはよう、」……其処で待っていたのは「みほの」と、

蛍田:「おはようございます、」……「蛍田さん」? 夢の中の彼女は相変わらず顎の割れたマッチョだが、


宏治:「蛍田さん、結局この街に戻ってきちゃったんだ、」

蛍田:「そうなんですよ、「黒い箱」が無くても自然と此処に来るようになっちゃいました、これってやっぱり脳が破壊されてるって事なんでしょうか?」……ガタイのでかいイケメンが半泣きになって僕の顔を覗き込むのは何だか妙な感覚だ、


僕達はホテルのレストランのテラス席に移動して、「鶴巻さん」が遅い朝食を用意してくれる。


蛍田:「今、海老名さんに現実世界でのこれ迄の状況を説明していた所なんです、」……説明って「蛍田さん」何処まで何を説明したのだろうか?

みほの:「何だか、大変な事になってるみたいだね、」……それで何故だか「みほの」は僕から目を逸らす?


宏治:「うん、僕の家にまで例の「黒い箱」が仕掛けられているとは思わなかったよ、」……そして何だか声が上ずってしまうのは何故だろう?

蛍田:「それってやっぱり誰かが私達を「罠」に陥れようとしてるって事ですよね?」


みほの:「ふーん、だから二人でホテルに避難したんだ、」……それで「みほの」がさっきから僕の事を見てくれないのはつまりそう言う事か?


宏治:「今後の対応も相談したかったしね、」……いや、僕は何一つ疚しい事なんてしていない、筈だ、

蛍田:「本当の所は私が一人で寝るのが怖くって「町田さん」に一緒に居て欲しいって頼んだんですけどね、」


みほの:「へー、「町田さん」って現実世界でも誰にでも優しいんですね、」……心なしかありか「みほの」の言葉の端々に、棘が……


もしかしてこれは、「リョウ」が実は女の子だって事まで既にばれてるっぽい、、、?


鶴巻:「紅茶のお変わりは如何ですか?」

蛍田:「ありがとうございます、ブラックティーをお願いします、」

宏治:「……、」

みほの:「……、」


「鶴巻さん」が白地に青の模様が施された高価そうなポットで皆のカップに紅茶を注いでくれる、


宏治:「兎に角今はっきりしている事は、此処にいる3人が3人とも例の怪しい「黒い箱」に関係しているって事だね、」……僕は話題を未知なる脅威の方へと軌道修正しようとして、


みほの:「3人って?」……墓穴を掘った、


「みほの」が「黒い箱」に繋がれている事は未だ伝えていなかったのだ、それを伝えるという事は、僕が現実の「みほの」に会った事を説明しなければならないし、そうすると必然的に、「みほの」が眠り続けている状況と、下手をすると後一ヶ月足らずで「みほの」の生命維持装置が止められてしまう事まで、伝えなければならなくなってしまうという事なのに、


みほの:「僕も、その「変な機械」を持ってるの?」……でも何れは、伝えなければならない事だった、


僕は、「みほの」の家を訪ねて家族に会った事、「みほの」の身体は未だちゃんと家に残っている事、とある大学が「みほの」の病気の原因を解明すると言う目的で例の「黒い箱」を「みほの」に装着している事、其処までを伝えた。


みほの:「お母さんに会ったの?」

宏治:「うん、後、弟さんにも会ったよ、」


みほの:「そう、二人とも元気だった?」……二人とも、疲れきっていた、

宏治:「うん、君が帰ってくるのを、待ってるよ、」……これは嘘だ、でも他になんて言えば良い?


みほの:「そう、」……だから彼女が流す涙を僕は直視できない、

蛍田:「良かったですね、早く現実に戻れるように皆でがんばりましょう、」


今推測できる事は、例の「黒い箱」を装着もしくは箱から発する電波か音かに影響を受けた者がこの世界に来てしまうのではないかという事だった。 そして僕と「リョウ」が夢と現実の両方で情報交換しているという事実に照らして見れば、この世界は誰か一人の人間の夢ではないと言う事は恐らく確定だろう。 だとすると此処は一体どういう世界なのだろう? 「みほの」の言う通り「魂」が集まる場所だとして、この街に居る全ての人達は皆例の「黒い箱」によって此処に飛ばされて来たのだろうか? だとすると「黒い箱」を作った人間は一体どういう連中なんだ?


蛍田:「「黒い箱」が悪意ある者によって仕掛けられたとすると、そいつらは何の目的で私達を此処へ連れてこようとしたんでしょう?」

宏治:「さあ、黙って盗聴器みたいに仕掛けるのだから、きっと碌でもない事に違いないな、」


蛍田:「私達をこの街におびき寄せて何か得になる事があるんですかね?」

宏治:「例えば集めた「魂」を何者かに売り渡すとか?」


蛍田:「怖い事言わないで下さいよ! 一体誰が「魂」なんか欲しがるって言うんですか?」

宏治:「悪魔?とか?」


蛍田:「悪魔とか本当に居るんですか?」

宏治:「判らないけど、一番確かなのは「黒い箱」を仕掛けた人間を探し出して真実を聞き出す事だろうな、」……そしてそいつらがこの街の事を何か知っているのなら、「みほの」の目を覚まさせる方法も知っているのではないだろうか、兎に角一刻も早く事件を明るみに出して、警察の力も借りて解決に当たるべきだ、そうすれば「みほの」の生命維持装置を外す件も、先延ばしに出来るかも知れない。


蛍田:「そう言えば、どうして奴らは「黒い箱」を新しいのに交換したのかな?」

宏治:「壊れたのか、電池が切れたとか、或いは新しい機能を追加したとか?」


ふと見ると、さっきから「みほの」は詰まらなさそうにじっと黙ったまま僕達の事を見つめている。 現実世界の事は「みほの」には分らないのだから仕方が無いのだけれど、僕は何か「みほの」も参加できる話題を振ってあげたいのだけれど、情けない事にその手のスキルはカラッキシで、誤魔化すみたいにわざとらしく微笑んで見せると、「みほの」は拗ねたみたいに目を逸らす。


宏治:「そうだ、僕「海老名さん」の家に行って「黒い箱」を仕掛けた人間についてもっと詳しく聞いてみるよ、そこから何か手掛りを見つけられるかも知れないしね、」

みほの:「別に無理に行かなくても良い、眠ってる身体を見られるのは、なんか恥ずかしいし、」


宏治:「別に無理にじゃ無いよ、君を現実に戻す為には必要な事だと思うし、」

みほの:「僕の寝てるところ、見たの?」……「みほの」は恥ずかしそうに頬を真っ赤にして、上目遣いに僕を睨む、


宏治:「…うん、一寸だけ、」

みほの:「えっち……、」


カップの割れる音:「「カチャン!」」……突然、紅茶のカップの割れる音がして、振り向くと「蛍田さん」がテーブルにうつ伏せている、気を失っている?


宏治:「蛍田さん!」……僕は急いで駆け寄って肩を揺すってみるが、反応が無い、


椅子の倒れる音:「「ガタン!!」」……そして今度は「みほの」が椅子から転げ落ちた。 一体何が起こっているんだ?


ちくり、……と温い痛みが首筋に走って、


途端にぐあんぐあんと意識がおぼつかなくなってくる、目蓋がひっくり返るみたいに重くなって、同時に、息をするのが面倒くさくなって、…指で首筋を探ると、小さな鳥の羽? 指先サイズの矢、


宏治:「うぅ、」……これってもしかして吹き矢?眠り薬? なんでこんなものが、そもそも「魂」に眠り薬なんて、……利くのか?


それで其の侭、僕は意識を失って、……

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