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ドリーミン・コクーン(夢みる卵)  作者: ランプライト
第三章「電脳世界よりの使者」
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011「電脳世界の誘惑」

私と「秦野萌」、本名「蛍田リョウ」はカラオケボックスで2時間程話し合った後、結局これといった解決策も見つからなくてそれから2時間余り女子大生アイドルの愚痴を聞き、それで「リョウ」は明日も朝早くから仕事なので引き上げる事になって、一週間後にもう一度会う約束をして、それでその時に例のIT会社の社長に会いに行こうという事になった。


帰り道は何だか信じられない位浮かれた気持ちでいっぱいだった。 嬉しそうにデートする街のカップルを見ると心から祝福したくなるし、ぼやきながら新年会に繰り出す若いサラリーマン達には独り言の様な小さな声で労いの言葉を掛けたくなるし、コンビニでお弁当とお茶を買ってレジに並ぶ時にいつもの可愛い女の子がプライスレスのスマイルをくれた時には本当に自然な感じで微笑を返す事が出来た。 だって僕は、あ、間違った、私は、あの女子大生アイドル「秦野萌」の知り合いなんだ。 私の携帯には「秦野萌」の電話番号もE-mailアドレスもLINEのIDも登録されている、私の手には「秦野萌」の掌のぬくもりがメモリーされている。 これまで何一つ他人に自慢出来る事なんてなかった私だから、たとえそれが誰にも言えない秘密の関係だったとしても、こんなにも気分が軽やかになってまるで世界がひっくり返ってしまったかのような錯覚に陥ってしまったとしても仕方の無い事だと言えるだろう。


これってもしかして「夢」なのか?


私は鼻歌交じりに夕暮れの住宅街を歩いて、ところどころ腐りかけたドアの鍵を開けて、昭和な蛍光灯の電気の紐を引っ張って、卓袱台の上を片付けて、それで何だかいつもと違う雰囲気に気がついた。


いや、それは芸能人の知り合いができたと言う小市民的に浮かれた感覚ではなくて、なんだか微妙に部屋の感じが違う?


私は辺りをざっと見回して、雑誌の間違い探しのように違和感に目を光らせる。 最初に気がついたのは卓袱台の位置と角度だった。 私は基本的に万年床の煎餅布団を座布団代わりにして卓袱台を中心にして生活している。 従って卓袱台の位置と角度はTVと布団と流しと玄関からの導線に対してとても重要な意味を持つ。 だからほんの数cmのずれがあるだけで「なんか違う」と気持ち悪い感じになってしまうのだ。 もしかしたら出勤するときに急いでいて蹴っ飛ばしてしまったか? 次に気になったのはカーテンだ、私は基本的にカーテンを開けたりしないと言うか一年以上締めた切りで触っていもいない、だから数cmの隙間がとても気になってしまう。


そしてゴミ箱の中の見覚えの無いティッシュの塊、買い物が億劫な私は基本的に極力ティッシュを使わない様にして生活している。 こんな風に2枚も3枚も重ねて使ったりしない。 それで私は恐る恐るゴミ箱からティッシュを取り出して、中身を開いてみる。 その中で潰れていたのは「中学生くらいの大きさのゴキブリ」だった。 決定的だ、私は基本的にゴキブリを殺さない、見つけても放置するか部屋の外に逃がすだけだ。 つまり誰かがこの部屋に入った?事は略間違いなかった。 合鍵を持っているのは大家さん位だ、部屋の中を見渡しても特に荒らされた形跡はないし、パソコンも箪笥の中のお金も其の侭だ、物取りの仕業でないとすると、もしかして大家さんが何かを調べに来たのだろうか?


大家さんの電話番号を探して部屋の契約の時の書類を引っ張り出そうと本棚をひっくり返して、今度は其処にも違和感を発見する。 蛸足な電源コードの傍の光ファイバーのLANケーブル、ネット用のWiFiルータに通じるケーブルの上にだけ何故だか埃が被っていなくて妙に綺麗だ。 私はケーブルの繋がったソケットからケーブルを抜いてみる。 すると、ソケットの嵌っているプラスチックの蓋がほんの少しずれた。 何故ずれる? 指先でソケットのケースを触ってみると、壁との隙間から何だか固まりきらない接着剤の様なものがはみ出してきた。 私は思い切ってソケットケースを爪で引っ掛けて、壁から外してみる。 驚いた事にそれはいとも簡単に外れて、壁の内側があらわになる。 LANケーブルに繋がる光ファイバー用の回線が壁の中に続いていて、その暗闇の中で幾つかの青いランプが点滅を繰り返している。 私はコードを手繰って、ずるずるとその見覚えの無い四角い塊を引きずり出してみる。


それは、例の「黒い箱」だった。


何故?こんな処に、私の部屋に「黒い箱」が? それは「みほの」が耳に取り付けていたものとよく似ているが、少し違っていて、何か音がする? 「ざーーー」と、一昔前のアナログTVの番組終了後の砂嵐の様な微かな音だ、一体これは何なんだ?


携帯:「ピリリリリリリ!!」……と、その瞬間! 私の携帯が鳴動した!


宏治:「…痛っ!!!」……吃驚して頭を棚にぶつけた、…一瞬心臓が止まるかと思った。


電話をかけてきたのは、「蛍田リョウ」だった、


宏治:「はい、もしもし、」

蛍田:「町田さん、すみません、一寸いいですか?」


宏治:「はい、」……丁度良い、私の部屋に有った「黒い箱」についても相談した方が良いだろう、

蛍田:「私、誰かに狙われてるみたいなんです。」


宏治:「え?」

蛍田:「誰かが、私が留守の間に私の部屋に忍び込んだ形跡があるんです!」


どうやら「リョウ」の部屋にも同じ様に何者かが侵入したらしい、私の場合と同じで金品や私物の窃盗ではなくて、例の「黒い箱」が新しいものにすり替えられていたというのだ。


宏治:「よく気がついたね、」

蛍田:「前の機械には、間違ってマニキュアを付けちゃって、除光液で擦ったときに一寸端っこの色が剥げちゃってたんです、それが無いの、」


宏治:「実は私の部屋にも誰かが侵入したみたいなんだ、それで部屋を調べてたら、壁の中から例の「黒い箱」が出てきた、」

蛍田:「何なんですかそれ、怖い、」


宏治:「誰かが、私達に何かを仕掛けようとしているのは確かミタイだ、もしかしたら、」……この会話も盗聴されているかもしれない、

蛍田:「私、怖くて部屋に居られなくて、これからどこかホテルに泊まろうと思ってるんですけど、もし良かったら町田さんも来てくれませんか、」


宏治:「わかった、ごめん一旦切るね、それで後10分したらまた連絡する、」

蛍田:「きっとですよ、絶対ですよ!」


私は小振りの手提げ鞄にありったけの現金をつめて家を出る。 アパートから離れて駅の近くまで来てから、それから「リョウ」に電話を掛けて集合場所を確認する。


都内にある四つ星ホテル、勿論こんな処に来るのは初めてだ。 私はフロントをビクビクしながらスルーして、「リョウ」からメールで連絡の有った13階の部屋に行って、ドアをノックする。


ノック:「コンコン」……返事が無い、もしかして部屋を間違えた? もう一度メールで部屋番号を確認してから


ノック:「コンコン」……返事が無い、もしかして、全部ひっくるめて哀れな中年男をからかう為のドッキリ?だったりするのか?


携帯着信音:「ピリリリリリ、」……「リョウ」からだ、


蛍田:「町田さんですか?御免なさい、今一寸髪を乾かしている所なの、少しだけ待ってもらえますか?」

宏治:「わかった、フロントで待ってる、」


それで20分ほど待ってLINEが届く、


トーク:「お待たせしました、」


それで先ほどの部屋に行くと、中からガウン姿の「リョウ」が出迎える。 風呂から上がったばかりらしいが、これって本当に「夢」じゃないのか?


蛍田:「急いで飛び出して来ちゃったから、着替えも何も持ってなくて、」……「リョウ」は恥ずかしそうに頬を染めて上目遣いする、


私達は結構大きなツインルームの書斎?リビング?の様なベッドルームとは独立した部屋のソファーに腰掛けて、「リョウ」はミニバーから取り出した白ワインの小瓶を開けて二人分グラスに移し変える。


宏治:「まあ、早めに気付いたのが不幸中の幸いかな、お互い。」

蛍田:「私、実はトラウマが有って、聞いた事有りませんか? 一人暮らしの女の子の部屋のベッドの下に潜んでいる殺人鬼の都市伝説、東京ってそう言う所だとばかり思っていたから、部屋の彼方此方にスマホで監視できるカメラを仕掛けていて、後誰かが勝手に入ったら直ぐに分る様にドアの蝶番の所にシャーペンの針を仕掛けたりしてるんです、」……なんだか007みたいだな、


宏治:「用心深いのに越した事は無いよ、それで誰か映ってたの?」

蛍田:「いえ、残念ながら録画機能はなくて、でも黒い機械をすり替えたって事は、それで町田さんのところにも黒い機械が有ったって事は、やっぱりあの「夢」が関係してるんですよね、もしかしてこれって何かの陰謀なんじゃないでしょうか?」


宏治:「わからない、例のIT会社の社長さんには連絡してみたの?」

蛍田:「出来る訳無いじゃないですか、一番の容疑者ですよ、あの機械の事を知ってるのはその社長と町田さんだけなんですから、」


宏治:「じゃあ、私も容疑者?」

蛍田:「町田さんは、昼間ずっと私と一緒に居たから違うと思ってるんですけど、信じて良いんですよね、」


宏治:「ああ、私じゃない、」

蛍田:「お願いしますよ、町田さんしか頼れる人いないんですから、」……何だか私に救いを求める様な「秦野萌」の眼差しが、堪らなく可愛い、、


宏治:「どうしようか、警察に連絡する?」

蛍田:「お仕事があるんで、出来れば警察沙汰は避けたいんですが、」……こういう所はしっかりしてる、


蛍田:「もう少し良く考えてから警察に届ける様にします、現場はその侭保存してありますし、部屋に行く時は一緒に来てもらえますか?」

宏治:「わかった、じゃあ、私は一旦帰って、うちのアパートの不法侵入の件で警察に連絡してみるよ、」


蛍田:「えぇ? 一緒に泊まって行ってくれないんですか?」……行成り「秦野萌」が私の袖をぎゅっと握りしめる、


宏治:「だって、それは不味いでしょう?」

蛍田:「一人じゃ怖くて眠れから来てもらったのに、」……いや、何を言ってるのこの子??


宏治:「ホテルなら大丈夫でしょう、それに私だって一応男だし、君はアイドルなんだから変な噂立つとイケナイよね、」

蛍田:「別に平気ですよ、男性と付き合ってる知り合いのアイドルも居ますけど、上手くやってるみたいです、」


宏治:「私達は付き合ってる訳じゃないよ、」

蛍田:「それはそうですけど、付き合わないと一緒に寝ちゃ駄目ですか? 私じゃ駄目?やっぱり、海老名さんみたいな人がタイプなの?」……それで何でそんな物欲しそうな上目遣いで私の事を見つめるの??


宏治:「ちがう、そう言う意味じゃなくて、寧ろ私の方がこんな冴えないおじさんだし、全然君とつり合わないよ、」……って、私も自分で何を言ってるのかだんだん判らなくなってくる、

蛍田:「町田さん、自分で言う程格好悪く無いですよ、普通です。 それに女の子は言う程外見で男の人を判断しないですよ、寧ろ同じ危機を共有する親近感みたいなのに萌えるっていうか、私は町田さんとなら別にそういう事になっちゃっても良いかなって、」


宏治:「何言ってんの!!!」


蛍田:「だってお願いしてるのはコッチだし、男の人はこう言う状況だと、その、やらずにはいられないんでしょ?」……妙に色っぽく頬を染めるアイドルを前にして、私の理性は最早崩壊寸前!

宏治:「……分った、其処迄覚悟してるなら今日は一緒に泊まるよ、……でも「そういう事」はしないから、君ももっと自分を大事にした方が良いよ。」


蛍田:「あ、もしかして町田さんって、童貞ですか?」……だからそんな優しい目で見ないで!!!

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