表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子の世界救世記外伝  作者: 紅月ぐりん
片目編
8/19

若気の至りー3

 度重なるこうした金色の男漁りにより金色の存在はカザブの町に轟き渡るほどになっていた。曰くカザブの町に頼めばやらせてくれる美女がいると。スタイルも抜群で相手を選ばない。

 冒険者稼業などをしている連中は一部の名の知れ渡った有名所を除き最底辺の人間ばかり。なので基本女日照りを長年患わせているような者が殆どである。そんな彼等にとって相手を選ばずしかも美女でスタイルもいいという金色の存在は非常に有り難く魅力的な話だった。

 カザブの町に滞在する冒険者達はこぞって金色の元へ集まっていったのである。



 では何故冒険者稼業が最底辺職とされるのか。

 そもそも魔族と人間は必ずしも敵対関係ではないのだ。魔族はその種族事に個々の考え方を持ち多種多様である。その中には人間と交友関係を結ぶ者もいるしその数は決して少なくはない。魔族と違い知性のない魔物は人間を襲う事もあるがそれは別に人間だけを標的にしている訳ではない。従って魔族によって魔物が駆逐される例も珍しくはない。

 要するに、魔物の被害というものは基本的にはその魔物のテリトリーに侵入しなければ起こらないものなのだ。従って魔物を討伐する優先度もそれほど高くはない。それだったらより上位の存在である魔族と友好を結んで彼等に何とかして貰う方がよっぽど簡単だし楽なのだ。冒険者稼業を選ぶような者達は他に仕事が無いから嫌々やっているのが殆どなのだ。



 そういう事情があり金色の名は今やカザブ中で持ちきりの噂となっていた。

 その金色と対を成すように噂されるもう一つの存在があった。



 曰くどんな醜女でも相手をしてくれる美男子がいると。しかもこっちは金色とは違い向こうから声をかけてくるらしい。

 カザブの町には訳あって男を求める二つの人種が存在する。一つは前述した通り冒険者稼業を営んでいる者達だ。やはり最底辺職とあって例え女であっても忌み嫌う者は多く、全うな職についている者ならまず相手にしないという状況だった。


 こういった事情があって実は冒険者同士で営む者も多い。いつ命を失うか分からない職業だし何より同じ最底辺同士なら何を気がねする事もないからだ。ただこれも、ちょっと相手のランクを上げたいと思った途端に不平不満だらけになる。

 何故なら最底辺職につく者はやはり最底辺の人間が多いからだ。そこに男女の違いはない。



 そしてもう一つの存在、それは遊郭の者達である。

 カザブの町には冒険者達を相手に春を売る遊女達が居る。最底辺職だからと誤解されがちだが彼等は実は金回り自体は悪くない。何しろ命がけの仕事であるし、被害を多く出している魔物なら報償金も比例して大きくなる。当然危険も跳ね上がる訳だが。

 ただ大抵は偶然や幸運で手にいれた大金に気を良くし、自分の力量を弁えず更なる大物に手を出して返り討ちにあったり博打や賭博に手を出して使いきってしまったりして直ぐに無くなってしまうのだ。そういう事に対して慎重な人間はそもそも冒険者になどならないし、事情があってやむ無く冒険者稼業に入った者も目標の金額を稼いだらとっとと手を引いて足を洗うのが殆どだ。


 ともかくとして、冒険者相手に商売をするというのは決して検討違いという訳でもないのだ。

 ただ、金回りはいいとしても彼等の人間性や見た目などはこれは期待する方が悪いと言わざるを得ないのが実情だった。

 勿論彼女らは仕事でそれをやっているのだから相手を選り好みできる立場ではない。しかし、人間なのだからまともな相手としたいと思うのは仕方無い事であろう。



 そんな状況にやってきたのが例の美男子なのだ。彼は非常に手が早くそこらじゅうの女達に片っ端から声をかけて口説いてくる。

 そう、「口説く」のだ。言葉巧みに女の喜ぶツボを刺激し自然にその気にさせるのが非常に上手いのだ。

こういったタイプの男は女心に精通しており常に女性を持て成し丁重に扱うものだ。それが美男子で尚且つどんな相手でも喜んで寝所を共にするというのだから、飛び付かない訳がない。


 それだけではなくその美男子は遊郭の女達にも手を出しているらしい。勿論正式な手続きに乗っ取り金を支払ってである。しかも相場の何倍もの額を支払う事も多いという。彼女達にとってこれ以上の上客があろう筈もない。



 カザブの町を騒がせるこの二つの存在に対して唯一文句をつける所があるとすれば二人とも実は人間ではなかったという事だけだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ