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忌み子の世界救世記外伝  作者: 紅月ぐりん
片目編
7/19

若気の至りー2

 金色は人里に降りていた。

 刃の森の近く、それなりに大きく栄えた町。大陸の南東に位置する国エルトンの領内、カザブの町。この町には冒険者ギルドが存在し、各地から集まった腕に覚えのある荒くれ者達が集まる場所でもあった。冒険者達はギルドから斡旋された仕事を請け負いこなす。当然それには魔物退治も含まれており、死神の使いと言われ恐れられる銀狼族が町中に侵入すればただ事では済まない。



 しかし、町中に侵入した金色を注視する者はいない。いや、ある意味では注目を浴びているとも言えたがどちらにせよそれは魔物に対するものではない。

「よお、姉ちゃん。なかなかマブいじゃねえか」

 金色に荒くれ者が声をかける。普通の娘なら当然拒否するなり逃げるなりする流れなのだが生憎金色は人間の娘ではないので、男の誘いに乗り暗がりに姿を消していく。

 数時間後に出てきた金色は心身共に非常に満ち足りた顔をして出てきた。先程金色と声をかけた男は精根尽き果てた顔をして今にも倒れそうだ。


「か、可愛い顔してとんでもねえビッチだな……」

「何を言う。この程度で根をあげるとは、人間とは脆弱な生き物なのだな」

「あん?」

怪訝な顔をする男に金色は慌てて「何でもない」と断るとその場を去った。

路地を進み角で曲がると足を止めて休憩する。

(危ない危ない……せっかく人里に紛れ込んだというのに正体がバレては元も子もない)



 今現在の金色の姿は、人間の若い娘の姿をしていた。銀色の髪に金色の瞳、豊満な胸に細い腰。客観的に見て十分美人と呼べる外見をしていた。尤も銀色の髪をしているという事は忌み子を意味しており、それを忌み嫌う者も少なくない。だが少なくとも魔物そのものの姿で歩き回るよりは全然マシであろう。

 何故金色がこのような姿をしているかというと、魔法で姿を変えているからだ。人化の魔法と言い、魔物や魔族が人里に紛れ込むためによく使われる魔法である。金色は例のくだけた口調の個体にこの魔法を教わり人間に化けてこの町に侵入したのだ。



 何故こんな事をしているのかというと、要するに欲求不満の解消である。同族に全く相手にされない金色にはフラストレーションが溜まるばかり。この際相手が同族でなかろうと問題なかった。それに例の個体からの情報によれば人間は常時発情期であり交われる可能性は高いという事だった。その情報を信じ試してみた訳だが見事成功したと言う訳だ。


 金色は今までの鬱憤を晴らすが如く片っ端から男を漁り女の欲求を満たし続けた。何回か行為を重ねた後にどうやら噂が町中に広まったらしくこちらから動かなくても向こうの方から寄ってくる有り様だった。おかげで金色は労せず目的を達成できた。


 金色は例の個体から教わるまで人間という種の存在を知らなかった。刃の森など人間にとっては危険極まりない場所であり近寄る筈はなく金色が人間の存在を知らないのも無理はなかった。全く知らない人間という種に交じる事に抵抗が全くなかった分けではないが、我慢の限界だった。

 それに実際こうして交わってみると案外人間という種は金色にとっては居心地のいい相手だった。(正体を隠しているせいなのだが)誰も金色を恐れたりしないし実に気軽に声をかけてくる。例外も勿論いたのだが、この町ではそういう連中は少数派であるらしく大多数の人間からは忌み嫌われているようだった。



 人間の中には魔族の存在を受け入れて良き隣人として付き合って行こうと考える者も多かった。魔族を忌み嫌う女神信仰者達とは違いこうした魔族信仰者達の存在は金色には好ましく写った。勿論正体を明かせば大混乱に陥るのだろうが、いつの日か本来の姿で彼等と親交を深められたら……と思わずにはいられなかった。



 こうして金色の人里での活動は思いの外上手くいっていたのである。この時点までは……

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