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忌み子の世界救世記外伝  作者: 紅月ぐりん
片目編
4/19

金色の瞳ー4

 三匹の銀狼族の子供達は、金色の恐ろしさを直ぐに思い知る事になる。

「イヤァァァッ!!」

 掛け声と共に三匹のうちの最後の一匹が金色に向かい突進していく。彼女は雌であり雌でありながらも領域への入場を許された実力者である。しかし、三匹の中では一番劣っていた。駆け出していった彼女の牙と爪の連撃を金色は完璧に見切り容易く交わす。しかしそれでも彼女は動揺はしない。


 始めから彼女は捨て駒であり、本命は後ろの二匹の攻撃だったからだ。最初の彼女の大降りの攻撃を目眩ましに後ろから同時に残りの二匹が別方向から襲いかかる作戦だった。だが……

 金色はここでも何ら慌てる事なく、一歩後ろに下がる。直後に追撃しようと飛び出してきた二匹の攻撃が虚しく空を切る。

「!!」

「なっ!?」

 攻撃を交わされると思っていなかった二匹は動揺し容易く体勢を崩してしまう。金色からしてみれば残りの二匹が同じタイミングで体勢を崩した状態で目の前に現れた事になり、正に『死に体』状態だった。二匹は手痛い金色の反撃を予想し身体を強ばらせるが予想に反して金色の挙動は優しく触れるのみだった。痛みも何もないのだが勝負は決しているとしか言いようがない。金色がこの戦闘でやった事は左右に身体を振り後ろに下がって前足を軽く突きだしたのみだった。



 呆気に取られて動けない三匹に金色は言った。

「準備運動はこれで終わりか?」

 三匹は唖然として黙る他はない。準備運動どころか全身全霊をかけたのにも関わらず全く足元に及ばなかったのだから。

 金色は『準備運動』などと口にしながらも恐らくそんな事はないのだろうと無意識に感じ取っていた。この三匹は弱い。三匹がかりでも自分には及ばない。金色は彼等と対峙したその瞬間から既にそれを見切っていた。だから、最少の動きと力で相手をした。本気で攻撃していたら殺しかねなかったからだ。


 皮肉な事にその生まれて始めての手加減が金色の戦闘力を倍増させていた。

 今までの金色は、とにかく外に出たいその為に強くなりたいという焦りからくる単調で力任せの攻撃しかしてこれなかった。老獪な大人達はその攻撃の隙を逃さず反撃する事で金色を倒してきたのだ。たが、生まれて始めて同年代の子供達と出会い自分よりも明らかに弱い存在を目にした事によって焦りが消え、冷静に相手の動きと力を観察する『見切り』の力を発揮できるようになったのだった。


 そもそも金色は20歳のこの時点で体長が3メートルありそれは成人した銀狼族と変わらない大きさだった。つまり肉体的な性能は大人と何ら変わりないのだ。そして心の未熟さから来る戦闘技術の拙さも彼等三匹を相手取る事により解消された。

 肩を落として消沈する三匹とは対照的に金色からは今までなかった冷静さと自信が芽生え始めていた。それは長い事停滞していた金色の殻を破らせ、隠されていた才能を萌芽させるには十分だった。



 同じ日に金色は領域内の大人に挑み、初の勝利を納める事に成功した。

 黒達の思惑を大きく飛び越え、金色は飛躍的な成長を遂げたのだった。

 そしてここから、あの三匹だけではなく領域内の銀狼族全てが金色の恐ろしさに驚愕していく事になる。

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