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忌み子の世界救世記外伝  作者: 紅月ぐりん
片目編
14/19

血の繋がりー4

 悲壮な決意を称えて冒険者達は金色へと向かい合った。

 オンスは斧を、メリヤは弓を得物にして戦う戦士だった。だが単純な力押しだけではなく、オンスは得物に魔力を載せて放ついわゆる魔法剣、メリヤは後方から仲間を援護する防御魔法や回復魔法に長けていた。彼等の決死の攻勢をなんという事もなくかわしながら金色は淡々と二人を観察していた。


(なるほど。サンドワーム相手に喰らいついていけた訳だ)


 彼等を直に相手に戦い観察する事によって金色は正確に彼等の実力を見定めていた。突出したものがあるとは言えないが、攻防共に高いレベルで纏まっており隙がない。長年の戦いの中で積み上げてきた彼等のコンビネーションは熟練者のそれと言えた。



 だが……



 次の瞬間金色の一閃が彼等を凪ぎ払った。

 勢い良くテントの壁にに彼等が打ち付けられそのまま勢いのままに外に放り出される音と、その音に反応して泣き叫ぶ赤子の泣き声が夜の帳に響いた。

 後に残るのは静寂。泣き叫んでいた赤子ですら、近寄っていった金色の一睨みで黙りこんだ。

(ここらが潮時か……)

 金色の手加減により冒険者達はまだ生き永らえられている筈だが動けるような状態ではない。赤子もほんの一睨みしただけで射竦められ黙りこんでしまった。金色は満足していた。もう十分楽しんだ。十分に観察できた。サンドワーム相手に善戦した彼等は自分相手にどこまで喰らいつけるか試してみた。そして結果は出た。彼等の実力は十分に分かった。ここらで終わりにしよう。


 そこまで考えて金色がテントの外へ出ようとしたその時、


 トスッ という微かな音が辺りに響いた。

 見ると、右前足の一部に矢が突きたっていた。とはいっても矢が刺さっていたのは表面上の薄皮一枚程度の程度でしかなく、すぐに重力に負けて地面に落下した。落下した矢を挟んでこちらを強く睨み付けていたのは口から大量の血を流しながらも壮絶な表情で弓を持ち構えているメリヤだった。


「バカな……!」


 思わず金色の口から驚愕の声が漏れた。少し遅れてオンスもふらつく体を何とか立ち上げて、斧を肩に担ぎ上げた。

(あの状態から立ち上がるとは……! いやそれより私の表皮をごくわずかとはいえ貫くとは……)

 どうもオンスだけではなくメリヤも魔法剣を扱えるらしい。だがいかに魔法剣を上手く使おうと人間の攻撃力で銀狼の皮を貫くなどまず不可能なのだ。それなのに……


 ゴフッ とメリヤが新たに口から血を吐いた。

 それを見た瞬間金色は事の仕組みに気付いた。

(生命を削って攻撃力に転化しているのか……!)

 メリヤが口から流している血は金色の攻撃を受けたダメージだけのものではない。生命を削る代償として血を吐いているのだ。


 ハッと金色が気がついた時にはオンスが音もなく忍び寄っており、背後から一撃を加えてきた。金色はすんでの所でかわすが、オンスの振るった斧は金色の毛先をほんの僅かに切り裂いた。

「………………!」

 オンスもまた口から血を流しながら凄まじい笑みを浮かべて襲いかかってくる。いかに攻撃力が上がっていようと動きそのものは何も変わっていないので金色には簡単に交わせるし反撃も容易……の筈だった。だが実際は金色は動揺からオンスの攻撃を交わすのが精一杯で、とてもやり返す余裕などなかった。オンスの攻撃を援護するようにメリヤの放った矢が鋭く金色を狙い打つ。金色は後ろに跳んでそれらを全てかわす。

 実際は避けなくても金色には殆どダメージは通らないのだが、金色には自らの命を削りながら笑みを浮かべ襲いかかってくる彼等の攻撃を受ける気にはとてもなれなかった。



 己の心のうちに浮かび上がった恐怖を払うように、金色は再び一撃を彼等に加える。ただし、今度は手加減なしで。

(しまった!)

 攻撃した瞬間金色は自分が手加減を忘れ本気で一撃を加えてしまった事を悟った。攻撃を受けた二人は凄まじい勢いで吹き飛び、ぴくりとも動かない。

(()ってしまった……!)

 元より金色は冒険者達を殺す気などなかった。ただ己の好奇心を満たす為にほんちょっとからかってみただけなのだ。それが……

(人間ごときに手加減を忘れ、本気を出してしまうとは……)

 後悔に苛まれる金色を更なる衝撃が襲った。



「な………………!」



 今度こそ金色は絶句した。全身を血に染めながら、二人の冒険者は再び立ち上がったのだ。

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