第二話 残念系魔術師
畜生…俺はこんなわけのわからない所で死ぬのかよ…
避けようがない一撃を前に死を覚悟した。
突然ーー大蜘蛛の巨体が俺を押しつぶさんと迫る中、不思議な声が響いた。
「ーー天の鎖よ、光を纏いて、悪しき魂を束縛せよ、天光鎖縛!」
直後、空に現れた魔法陣から伸びた大量の鎖が大蜘蛛を縛り上げ、動きを封じる。
「 助かったのか…?」
立ち上がり大蜘蛛と距離を取る。
動きを封じられていても、流石にこいつは怖いよね、うん。
「大丈夫ですかっ⁉︎」
そこへ先ほどの声の主であろう少女が駆けてくる。
「ああ、助かったよ、ありがとう。ところで君は?」
「私はルシエラ、見習いの魔術師です!」
ルシエラと名乗った少女は銀色の長く美しい髪と瞳を持っていて、まるで二次元からそのまま出てきたかのような少女だった。
…だが、今はそれよりも気になるワードがあった。
「見習いの魔術師?」
「ええ、ですが話すと長くなりそうなのでひとまずここから離れましょう」
そういえば大蜘蛛を完全に忘れていたな…でもさっきみたいに魔法をぶっ放せば簡単に倒せるのではないだろうか…?
そんなことを思っていると
「私は見習い故、さっきの魔法と転移魔法しか使えないのです」
嫌な予感がする。
「……もしかして離れる理由って…?」
「私が敵を止めていられる時間は2分が限界ですので」
少女は笑顔でそう言った。
「使えない子だ…!」
とりあえず見習いの意味だけはよく分かった気がした。