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西の少女―2

ちょっと、順番を変えました。ご注意ください。

それから十数年、ヒルダはあの空を飛んでいた。

あの日、自分がいた丘を見下ろして懐かしい気持ちになっていた。


「いけない、大事な訓練中なのに…」


そう呟きながら頭を振り、気を引き締める。


あの日誓った通りヒルダは竜騎士になった…のではなく、竜騎士見習いとして飛竜(ワイバーン)-亜竜と呼ばれるドラゴンの下位種で前足がなく翼になっているー にまたがり訓練飛行の最中だった。


あの公開軍事演習の後、竜騎士になると両親祖父に語り、次の日から祖父から竜騎士に必要な知識や体術を習いだした…両親はあまりいい顔をしなかったが…


祖父が亡くなってからは必死で両親を説得し、騎士学校に入学した。

そこで寝る間を惜しんで訓練に明け暮れ実力をつけ、それを認められて、今こうして竜騎士見習いとなっていた。


彼女たちは5騎の逆部位Vの字型の編隊で飛んでいた。

先頭に教官である正竜騎士のコンラート=エウルドライ=フォン=シュライヒ卿が騎竜であるリンドブルムに跨っており、その後にワイバーンにまたがる4人の竜騎士見習いが続いていた。


ヒルダは、右翼の最後尾にいた。



エウルアーデ王国竜騎士団の基本戦法である、竜鱗の陣。

高高度から逆vの字の編隊で急降下し、敵のやや前方で地面すれすれの水平飛行に移行し、竜の吐息(ファイヤブレス)を吐きかけつつ、急降下による突撃力にて敵を蹂躙する陣形。


今日は、見習いたちがそれをどれだけ正しく行えるかをテストする訓練の日だった。


「ぐるぅる」

高高度から急降下に不安を覚えたのか、ヒルダの乗るワイバーンが小さく唸り声を上げる。


「まだ、まだ早い!」

そういって、膝で竜の背中を押す。

ワイバーンは不満そうに少し身をよじるが、何とか言うことを聞いて急降下を続ける。



そのとき、ヒルダたちのひとつ前を飛ぶワイバーンが水平飛行に移るのが見えた。


「え…、まだ早いのに…」


竜鱗の陣では、ファイヤブレスが、届くぎりぎりの高度で水平飛行に移らなければならない。

高度が高すぎれば射程がたらず、低すぎると反撃に会いやすくなる。


そして、さらに編隊のすべての竜が同じ高度にいることが望まれる。


編隊内の竜の高度が不ぞろいであれば、高度の高い竜の攻撃が、高度の低い竜に誤射してしまうからだ。


一瞬ヒルダは悩む、高度を合わせることを優先すべきか、所定の高度に下がることを優先すべきか


「本当なら、高度を合わせることを優先したほうがいいんだけど…、でも今日は実力テストでもあるから…」


そう自らに言い聞かせて、高度を下げることを優先する。



ぎりぎりの高度までさがり、降下の勢いを殺さないように気を付けながら、手綱を引き絞り、水平移動に移らせる。


「やった!うまくいった!」


今までで一番うまく軌道を描けた。

ヒルダが喜んだのもつかの間


「グラァァァ」


ワイバーンが警告の声を発する。


気が付くと自分の上の影が落ちており、前方には隊長の竜しか見えて居なった

あわてて上を向くと自分の真上でブレスの予備動作に入っていた。


前方の僚騎より低い高度に下がり、さらに急降下の時間が長かったため速度差が生じ、僚騎の真下に入り込んだしまったのだ。


「きゃああ」

ヒルダは思わず悲鳴を上げる。




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