東の龍-1
よろしくお願いします。
ちょっと思うところあって、話の順番を変えました。
気が付くと、彼は湖畔の洞くつで寝ていた。
「…?」
体を起こし周囲を見回してから、洞穴から這い出す。
すぐそばには大きな湖。
その湖のそばの小さな丘の斜面に、彼がぎりぎり寝ころべるほどの大きさの洞穴があり彼はそこで寝ていた。
さらに周囲を見回す、湖と丘の周りは広大な草原が広がっており、その先は周囲をぐるり切り立った山々が囲んでいた。
「ここどこだっけ?」
そう独りごちる。
美しい景色だと思った、対岸がぎりぎり見える大きな湖と広大な草原、その先の山々も青々と茂った木々が美しい。
しかし、言いようのない不安がよぎる。
全く人工物が見当たらなのだ。
そのおかげでとても美しいのだが...。全く実行物がないことにとても不安を感じた。
「...なんでこんなところにいるんだっけ?」
そうつぶやくが、周囲にはその疑問に答えるような人は誰もいなかった。
目の前の湖をぼんやりと見ながら思い出そうとして…、何も思い出せないことに気付く。
「えっ…、全く思い出せない、え…」
軽くパニックになりそうになりながら必死に考える。
まず、ここがどこなのかが全く思い出せない…というか分からない。
そしてさらに、ここに来た経緯も全く心あたりがない。
極めつけに…
「自分の名前が…思い出せない…」
そう、彼は自分の名前が思い出せなくなっていた。
それだけではない、自分の両親、姉弟、友人、同僚… 果ては、故郷である国の名前、出身地域の名前など固有名詞が全く思い出
せないのだ。
情景は浮かぶ、両親・姉弟の顔、故郷の風景、勤めていた会社の建屋 などなど浮かんでくるが、固有名詞が出てこない。
そのことに軽い恐怖を感じた。
そして、目をつぶり無意識の動作で右手で両目を覆い…違和感に気付いた。
まず、手のひらに感じる瞼の感触が異常にごつごつとしてる。
さらに、手の甲の部分に何かが当たる感触があり、鼻先にその手の甲が触れるのを感じる。
さらに、口の端に手首が当たっていることも感じた。
彼の鼻はそんなに高くなかったはずだ、手のひらで両目を覆うと、小指の付け根に鼻が当たることがあっても、手の甲に当たるこ
とはなかったはずだ。
さらに、脇を開いた状態で目を覆っているのに手首に口元が上がるのがおかしい。
両目と鼻、そして口の位置が記憶にあるその位置からかなりずれている。
そして、彼は目を開けて自分の手を改めて見てみた。
それは、枯れ枝のように節くれだち、黒いー光の加減では群青色にも見えるー鱗に覆われ、さらに短剣の様にするどい鉤爪が生え
ていた。
「なっ!!」
彼は、大いに慌てた。
そして、目の前の湖にまで駆け出し、そこに自らの姿を映し出してみる。
そこに映りこんでいたものは…。
大蛇ように長く、黒い鱗に覆われた体。
短剣のような鋭い鉤爪が生え、枯れ枝のように節くれだった指の両手足。
体と同じく鱗に覆われ、狐のようにとがった鼻ずらを持ち、鼻先から触手を思わせる長い2本のひげ(?)をはやし、
鬣じみた髭と髪に縁どられ、鹿に似た角の生えた頭部。
そこには、まぎれもない龍がいた。
「な、なななな、なんじゃこりゃー!」
誰もいない、湖畔に龍の叫びがこだました。
テンポよくお話を書くのって難しい・・・