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プロローグ
ビロードのような艶のある暗闇に、琥珀糖を散りばめたものが宇宙であると、昔の偉人は言っていた。
ざわざわとした声があちこちで賑わう、駅。
列車のそれと似てはいるが、線路に張られているのが鉄の道ではなく、金色の光であり、入って来るのは列車ではなく宇宙船である。
ここは宇宙船の為の駅であった。
数十分毎に暗闇から宇宙船が、線路に張られた光の線を伝って降りてくる。
薄暗い中で煌々と光るそれは、美しく幻想的なものだった。
そんな駅の端の方で、イヤホンでラジオを聴きながら、女がぼんやりと空を見上げていた。
丸眼鏡越しの橙色の目はどこか生気がなく、疲れ果てたように天窓の映像を映していた。
駅の天窓は、上空を越えてずっと高い位置にある、宇宙の様子を映し出している。
時折、天窓の映像に宇宙船の光が横切るのが見えた。
そうしていると、出発の準備を整えた宇宙船のアナウンスが響いた。
それを聞くと女は立ち上がり、ポケットから長方形をした小さな紙切れを取り出した。
いわゆる切符である。
不思議な事に、宇宙船の切符は列車の切符とは変わらない。違うのは金額だけだ。
女の切符に書かれた行き先は、ヴァイツェン。
世界の政治機関の中枢であるこの中央の星から、遠く遠く離れた、辺境の小さな星である。




