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登山

 目的地である山は俺が拠点にしている洞窟から徒歩で10分もかからない場所に上ることができる道がある。山の登山道は明らかに人の手が入っていた。もしかしたら鉱山とかがあって定期的に人が来ていたのかもしれない。

 まぁ、4日程この辺りでダンゴムシ狩りをしていたのに人を見ていないので、あったとしても元鉱山で、廃坑になっている可能性が高いけど。


 人が歩きやすいように整備された山道は歩きやすくて、草木で視界が悪い森の中よりもかなり快適だ。山を登り始めると爽やかな風と太陽の日差しが気持ちいい。

 森の中は太陽の光も木々に遮られてあまり入ってこないし、風が吹いてもその度に草が顔に当たってかなりのストレスだったのだ。

 モンスターは今のところ出てきていない。森のように隠れることが出来ないのでやり過ごすことも奇襲をかけることも出来ないが、それは相手も同じだ。いざとなったらエアロックを使って足止めしているうちに逃げることにしよう。森まで逃げれば隠れるところは沢山あるし何とかなると思う。


 異世界の空をしっかりと見たのは思えば初めてだ。雲は白いし空は青い。太陽は1つだし、異世界と言っても空は変わらないみたいだ。


 遠くに黒い鳥が飛んでいるのが見える。カラスによく似た黒い鳥だった。もしかしたらこの山にも巣があるかもしれない。あれもモンスターだろうか? 空を飛ぶ相手は襲われたらかなり厄介だと思うし、あんまり相手にはしたくないな。


・・・


 山は下から見た限りではそんなに高い山ではなかったと思う。だけど、モンスターに警戒しながらの登山は何だかんだ言って時間がかかる。

 

 そろそろ昼頃だろうか。お腹がグゥと鳴いてご飯を催促してきた。


 俺は最後の食料であるバナナを食べながら山道を進む。しばらくしてオレはこの山に入って初めてのモンスターと遭遇した。見た目は岩石を背負った大きなカニと言ったところだろうか? カニはブクブクと口から泡を出しながらこちらを睨んでくる。大きさは大型犬と同じくらい。横にしか歩けないのは普通のカニと同じみたいだ。


 これが相手なら余裕かな? と思っていたらカニは背中の岩石を削ってそれを投げてきた。咄嗟のことだったのでオレは動くことができない。

 運良く投げられた岩石は俺の頬を掠っただけで済んだが、その投擲スピードは俺の顔を青くするには充分だった。


 昨日の戦闘でもう油断はしないと誓ったのに、次の日にこれじゃ先が思いやられる。俺は全身にブーストを使って鉄パイプを構えた。

 エアロックを使って見えない盾も俺の周りに作っておく。岩石相手に効果があるかどうか分らないが無いよりマシだろう。


 カニの主な攻撃方法は両手のハサミによる近接攻撃と背中の岩石を使っての遠距離攻撃だった。今のところカニの攻撃方法はそれだけだが、ゲームとかだと口から出ている泡も攻撃手段になることが多いから、そっちも気をつけた方がいいかもしれない。


 山道の道幅はそこそこ広いものの、カニを避けて上に行くことはできなさそうだ。逃げるのは簡単だと思うけど、ここで逃げたら何時までたってもクエストはクリアできない。幸い攻撃自体は短調だし、スピードもそこまで早いわけじゃない。 カニは横にしか動けないから動きも読みやすいし、勝てない相手ではないはずだ。投石攻撃は驚異だが、来るとわかっていれば避けられない程じゃないし。


―――勝てる。


 実際気を付けないといけない攻撃は投石攻撃だけだ。硬いので倒すのには時間がかかるが、本当にそれだけでしかない。

 ハサミでの攻撃は短調で遅い。念の為にカニの口元をエアロックで覆って泡攻撃をさせないようにフタもしてある。


 ここまでくれば後は単純作業だ。


 カニを鉄パイプでガンガン殴っていく。鉄パイプの耐久が心配だが、手で殴るのは痛そうだし、包丁は一発でダメになるのが分るのでここは鉄パイプに頑張ってもらうしかない。


 5分程殴り続けた所でようやくカニは動かなくなった。他のモンスターが来なくてよかった。来たら逃げるしかなかっただろう。

 その後もカニが何度か出てきたが、同じように倒すことができた。カニが3体同時に出てきたときは死ぬかと思ったけど、その時は道が狭い場所だったので勝手に崖から落ちてくれたりして意外と楽に終わった。あの時は笑うしかなかったなぁ。


 山に登り始めて2時間ぐらいが過ぎて山も半分くらい上り終わったけれど、この山に入ってからカニしか出てこない。この山にはカニしかいないのだろうか? もっとこう、ゴーレムとかそういうのを考えてたんだけど。

 いや、別にカニだけしか出ないなら出ないで良いけれど。カニだけなら危険も少ないし。


・・・


 結局山頂まで登ったが、出てきたモンスターはカニだけだった。最終的に6体のカニを倒したがまだレベルは上がらない。カニが弱いからなのか、それともレベルはそんなに簡単に上がるものじゃないのか、これはどっちなんだろうか?


 山頂から見た景色は絶景の一言だ。こうして上から見ると森が思った以上に広大だというのが分かる。遠くの方に小さく建物が見える。灯台みたいな細長い建物だ。あそこに行けば町があるのかもしれない。こっちにきて初めて人間に出会える可能性が出てきた。

 あそこまで行けばこの世界がどんな場所か分かるかも知れない。まぁ、それも日本語が通じれば、だけど。


「さて、じゃあ山を降りてさっさとクエストクリアするか。」


 あぁ、フカフカのベッドが恋しい。こんな危険な世界からはさっさと帰りたい。服もボロボロだし、この4日で体臭も酷いことになっている。頭も痒いし、帰ったら直ぐに風呂に入りたいな。

 風呂に入るなら親にばれる前に手早く済ませないといけない。俺は気持ち早足になりながら山を降りて魔法陣に飛び乗った。




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